物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
110 / 179

物理系魔法少女、魔力封じても意味は無し

しおりを挟む
 俺達が向かった先で待ち受けていた光景は、一瞬で反吐が出るモノだった。

 大きな檻に入れられた子供達、バラバラに散らばった刃と⋯⋯倒れている魔法少女の格好をしたミドリさんだ。

 アオイさんが何も言わずにただ、突っ立っている。

 「な、なんだお前ら!」

 「二人とも上物じゃないか」

 下卑た笑いを浮かべながら武器を構える男達。

 どうやって子供達をダンジョンに入れたのか、方法が分からない。

 分からないけど、こんな事して良い訳が無い。

 「アオイさん、協力⋯⋯」

 俺が協力して拘束しようと提案しようとするが、アオイさんは魔法を男達に放った。

 骨まで燃やしそうなその炎は男達に届く事はなかった。

 「うそっ!」

 「なんで!」

 アオイさんが絶句するが、俺も驚く。

 男達が何かをしている風には見えなかった⋯⋯だけどアオイさんの魔法は確かに目の前で消えた。

 何が起こっている? それとも他に何かあるのか?

 俺達の警戒心が上がったところで、アオイさんが再び魔法を使おうとしたが、できなかった。

 「魔法が、使えない」

 「なるほどそう言う事ね」

 俺以外の魔法少女は魔法を主に扱う。アオイさんなんて魔法オンリーだ。

 最悪の場面⋯⋯ミドリさんも守らないといけない。

 「まずは魔法の使えないお前からだ!」

 アオイさんに襲いかかろうとする男を俺は軽く蹴った。軽くだ。

 しかし、俺の力は想像以上に上昇しており、骨が折れる音と共に蹴飛ばしてしまった。

 「⋯⋯死んでないよね?」

 やめてよ? 俺は人殺しになりたくないんだ。

 俺の攻撃力に平伏したのか、男達が膝を着いた⋯⋯と思ったが甘かった。

 奴らの一人が転がっていたミドリさんの髪の毛を引っ張って、首に剣を突き立てる。

 「少しでも動いてみろ、コイツの首が飛ぶぞ」

 それだったら、剣を動かされる前に無力化すれば問題ないな。

 そう思って動ことうしたが、檻の方から叫び声がする。

 最悪だな。

 「子供を助けてくれる、善人か? その緑女みたいにな」

 ミドリさんを助けたら子供が殺される⋯⋯それをミドリさんは許さないだろう。

 子供を助ければミドリさんが殺される⋯⋯そしたらアオイさんは許さないだろう。いや、アオイさんはどうなるかは分からんな。

 どっちみち、二人を助ける事は俺には無理だ。

 「両手を上げろ」

 俺達は両手を上げる。男達の目が俺に集まる。

 ビジュアル的にはアオイさんよりも男ウケが良いらしい。さすがは男が形成した身体だ。

 さて、どうしたもんかな。

 「これを飲め」

 怖いのか、何かを転がして来る。

 俺達に拒否できる選択肢はなく、アオイさんと俺はそれを飲んだ。

 「うっ」

 なんだコレ⋯⋯すげぇ眠気が襲って来る。

 アオイさんがばたりと倒れた。息はしているが起きる様子はない。

 即効性の睡眠薬か。

 俺がばたりと倒れた。

 「もう大丈夫だろ」

 「ほんとか?」

 「ああ。念の為さっさと入れろ」

 子供を放り投げ、ミドリさんをその場所に入れようと運ぶ。

 アオイさんや俺を運ぼうと動こうとする男もいる。

 「今っ」

 俺は気力を振り絞ってアオイさんを抱えて回収、ミドリさんを引きずっていた男を蹴飛ばしてミドリさんを回収。

 二人の女子高生を持ち運ぶなんて、魔法少女なら簡単だ。

 子供に急いで手を伸ばそうとした男を鉄格子ごと蹴飛ばして阻止しする。

 二人をそっと置く。

 「これで守りも完璧だな。良くもあんなもん飲ましやがって」

 「どうして起きているんだ!」

 「簡単だ。耐えた!」

 こちとら眠くても仕事しないといけない環境だったんだ。

 多少の眠気なんて気力で耐えられるし、それでミスしてはならないから集中力を必死に上げる。

 結果として深夜テンション、ハイになれるのだ。

 今回の眠気もアオイさんが倒れるまでは耐えられたけど、その後は無理そうだった。

 「だから自分の唇を噛み切った」

 めっちゃ痛い。血も少し出ている。

 「それでも眠気が取れなかったから、自分の足や腕をぶん殴った」

 おかげで痣だらけだ。それでも骨は折れてないし再生するだろう。

 「そんな。能夢のうむの薬を無理やり突破するなんて⋯⋯」

 「バカげてる」

 「バカで結構! 犯罪者共、ぜってぇに逃がせねぇからな」

 男達は目線で合図して俺を囲む。色んな方向から来ようとするのだろう。

 「魔力を封じれば身体強化もできまい」

 「お前に勝ち目なんて、ないんだよ」

 身体強化?

 封じるなら【魔法少女】の方だよなぁ。そうじゃなきゃ俺は普通に戦える。

 アオイさんやミドリさんのような魔法をメインに扱う人を相手にするなら有利かもしれない。

 だけどなぁ、こちとら魔法も使えない魔法少女なんだよ。

 俺は半壊した檻の上にジャンプした。

 「本気の力マジカルパワーを舐めるな」

 俺はステッキを取り出して、ブーメランのような形にする。

 「必殺マジカルシリーズ、本気飛去来器マジカルブーメラン

 右手の甲に何かの紋章が浮かび上がり、ステッキが光を帯びる。

 「なにこれ?」

 「なぜ魔法を使える!」

 「なんで魔力を封じれてないんだ!」

 これ魔力なの?

 えーなにこれ。

 まぁ、良いか。

 超回転をかけたブーメランを本気で使って、男達を容赦なく殴った。

 数本の骨が折れても、死ななければ問題ない。さすがに死なないと思う。

 レベルもあるしね。

 そう信じた俺のブーメランは男に当たれが一撃で気絶するレベルの衝撃とダメージを与え、木に当たればへし折った。

 ワオ。

 ぐるぐる周りを回って広がっていく。全員気絶したら手元に戻せば良いだろう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

処理中です...