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アヤの人生譚 その2
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数日後、ここ数日で私は証拠集めに集中していた。
その間もきちんと仕事をしていたので、他者から後ろ指を指され白い目を向けられた。
それでも尚仕事に勤しむ私を見る、嫌がらせをして来る人達の目は面白い物を見つけた人の目だった。
そして、そろそろ商業ギルドの方も痺れを切らして私を確定犯人にしようとして来た。
ギルド長が見る中、副長を中心に話は進んで行く。
私は自分を無実だと頑固として譲らない。そもそも私は犯人では無い。
その証拠として私はとある写真を副長にだけ見える様にする。
「⋯⋯ッ!」
驚く副長。
私が見せた証拠の写真⋯⋯それは副長が脅されてやっていると言う証拠。
正確には、奥さんと子供が居ながら風俗店から出て来て女性と仲良く話している写真だ。
中身はどうあれ、不貞行為と思われてしまう写真である。
職場では副長は愛妻家等と家族愛が高い事で知られている。
その写真を裏返し、文字が見える様にする。
「⋯⋯ッ!」
再び驚いた副長。私は口パクで副長だけに何かを伝えている風を装う。
それが開始の合図と成り、副長がとある三名⋯⋯私を追い詰めようとした人物達を名指しした。
「ニヤコ、ナナメ、フナミ、来なさい」
そして何を勘違いしているのか嘲笑った顔をした三人が出て来る。
「君達が横領したんだね。それを擦り付けようとした」
「「「ッ!」」」
三人が同じ様に驚き、周囲もざわめく。
「ちょっと待ってくださいよ。なんで私達なんですか! 金を私的利用したのはアヤですよ!」
ニヤコが話を出す。
そこで私は反論する。少しでも間を開けてはダメだ。
私は何もしてないと言う意志を強く貫く必要がある。
「それはおかしな事です。私は経理担当ではありません。ギルドのお金を使う事は不可能だと断言出来ます」
「そ、そんなの! あんたが最近経理にも手を伸ばしているから、それで、出来るでしょ!」
「私はあくまで、サポート出来る範囲でサポートしているだけです。直接手も掛けて無いモノをどの様にすれば私的利用出来ると言うのですか?」
「そ、それは」
「私は投資も何も、お金を使う事は一切しておりません」
それを裏付ける、私が手を貸した男女問わずの職員達が名乗りをあげてくれる。
人は群れる生き物。
少しでも私に味方が居て、相手が不利な状況だと思ったら中立の人達は掌を返す。
これで私の方が圧倒的に有利な立場に成った。
「ちょ、私達がやったって証拠があるの!」
「あります。まずはこれを」
私はマジックアイテムの録音機を再生させる。
マジックアイテムと魔道具は似ている様で別物。細かい人しか分ける事はしないが。
マジックアイテムはドワーフ等が手掛けた、ある程度の魔力を溜めておけば魔力無しでも扱える魔道具の事だ。
ルーン文字と言うのが刻まれているらしい。
『あいつの顔見た?』
『見て見た! あの、「なんで?」って顔!』
『良かったよねー調子乗り過ぎだったんだよ』
『ほんとそれ。にしても、案外ちょろまかすのも簡単ね』
『ほんとそれ。贅沢し放題』
それからも楽しげで馬鹿にした様な会話は続いた。そして、私以外の職員、副長、ギルド長等の悪口まで進む。
「ちょ、何それ、止めろよ!」
「そんな物作ってたの!」
「そんな。私は魔力も無ければルーンを使ったアイテム製作なんて持っての他。どの様に作ったと言うのですか?」
「そ、それは⋯⋯」
「か、関係無い!」
ナナメが関係無いと叫び、それに続くようにフナミも叫ぶ。
あくまでも自分達は関係ない。やったのはニヤコだと宣言する。
「お前達!」
ニヤコは当然そんな事を許す筈も無く、後はニヤコが勝手に喋った。
「皆同罪でしょ! そもそも最初はナナメが言い出したんだろ! 納品される金をちょろまかすって!」
ナナメは受付嬢、商人は商業ギルドに税を売上の一割を納品する義務がある。他にも納めるモノがあったりする。
それをナナメ経由で経理のニヤコが書類を改変。
フナミも一枚噛んで寄り強固に隠蔽工作をしていたらしい。
「そ、それに副長も同罪だろ! 知ってて黙ってたんだから!」
「そ、それは⋯⋯」
私はアイコンタクトでそれを制する。
「副長は関係無いのでは?」
「関係あるね! これを見ろ!」
出された写真は私のとは写っている女性が違う写真。
「このジジイは愛妻家と言いながら、風俗通いしてんだ!」
人が極限まで追い込まれたら何をしでかすか分からない。
それが色濃く出た結界だろうか。
「違いますよ」
「んだとアヤ!」
「それは投資の話ですよ。つまり取引。交渉していたのです」
「は、はぁ? ここは既に大手。今更金を借りる必要が何処にある」
「そんなのは知りませんよ」
「だいたい表の取引なら書類がある筈だろ! 出してみろよ、あぁ?」
勝ちを確信した笑みを浮かべている相手。私は副長に目を合わせる。副長は自分の机の引き出しから書類の束を取り出し、ニヤコに渡す。
それを受け取りパラパラと眺めるニヤコの顔は驚く程に青ざめて行く。
「そんな訳」
他の書類が一斉に管理されている部屋に向かい、ガサガサと漁る。
適当に漁られると後片付けが大変だから止めて貰いたい。
「な、なんで! なんでよ!」
この反応でこの場の全員が確信した。
先程ニヤコが示した写真は『不貞行為現場』では無く『商談帰り』だと。
確かに、既にあそこは納める事しかしておらず、数年後は商業ギルドから離れて独立している程に大きく成るだろう。
それ程までに成長しており、今更商業ギルドからお金を借りる必要は皆無。
だからこそ、正式な取引の書類なんて本来は存在したい。
だが、私はここ数日でそれを実現させた。
まぁただ、母上の力を借りたのが悔しかったが。
立派な事務員として働いていたつもりが、親の手を煩わせる事態に成るなんてね。
以外に簡単だった。その店のオーナーと副長は知り合いらしく、快く協力してくれた。
ま、断られたら断らない状況を作ろうと思っていたのたが。
「成程。アヤさんがするとは思っていなかった。その通りだったな。お前達、儂の部屋に来い」
「ギルド長」
ギルド長がそう言って、三人を連れて行った。
私達の事を知っている数少ない人物の一人。
そして帰り、副長から頭を下げられた。
「助かった」
「いえ」
あの店で何かやましい事をしたとは思ってない。
何か大切な人が働いていて様子を見に行ったのだろう。
例えば息子が社会勉強の一環で働いていたり。
あそこは接待と娼婦の二つがある。
そこでは男も働いている。主に注文された品を運んだり料理をしたり⋯⋯所謂裏方。
家族には問題ないだろうが、職場では先に言いふらしたモン勝ち。怖いモノですね。
家に到着する。
最後のあの三人の顔を見て、私は何も感じなかった。『ざまぁみろ』や『自業自得』等と言う感情すら無かった。無関心だ。
もしもあの人達が自国の民と言うのなら、私は迷わず手を差し伸べただろう。
でも、既に私は王族であり王族ではない。
「アヤ聞いた?」
「何をですか?」
「アクアの方でとんでもない魔法を使った新米冒険者が居たんだって。今はミンクの方に行ってるらしいよ」
「そうなんですね」
「興味なさげ? もしかしたらユウキ君達かもよ」
「それは無いと思いますよ。我々の様な特殊な場合ならともかく、一般の兵士ではまず、国に入れません。滅んだ国の人間の行ける場所は限られている。ユウキ君達が生きているのなら、まずは近くの村に行きますよ。そこで必死に働いて、お金を稼いで、国に行くと思います。滅んでから、その情報は流石に早すぎる」
「ドライだね~」
「確かに、ユウキ君達なら嬉しいです。ですけど、高望みの希望は良くないです。でも、そうですね。もしも、その冒険者がユウキ君達なら、こちらに向かっている可能性がありますね。ま、とても低い確率ですけどね」
「まあ、確かに。身分証も無く国に入るには入国手数料がいるし、そんな金は無い」
「そうですよ。なので、違います」
だけど、やっぱり心のどこかで信じたい私が居るようです。
「頬が緩んでるよ~」
「緩んでません!」
その間もきちんと仕事をしていたので、他者から後ろ指を指され白い目を向けられた。
それでも尚仕事に勤しむ私を見る、嫌がらせをして来る人達の目は面白い物を見つけた人の目だった。
そして、そろそろ商業ギルドの方も痺れを切らして私を確定犯人にしようとして来た。
ギルド長が見る中、副長を中心に話は進んで行く。
私は自分を無実だと頑固として譲らない。そもそも私は犯人では無い。
その証拠として私はとある写真を副長にだけ見える様にする。
「⋯⋯ッ!」
驚く副長。
私が見せた証拠の写真⋯⋯それは副長が脅されてやっていると言う証拠。
正確には、奥さんと子供が居ながら風俗店から出て来て女性と仲良く話している写真だ。
中身はどうあれ、不貞行為と思われてしまう写真である。
職場では副長は愛妻家等と家族愛が高い事で知られている。
その写真を裏返し、文字が見える様にする。
「⋯⋯ッ!」
再び驚いた副長。私は口パクで副長だけに何かを伝えている風を装う。
それが開始の合図と成り、副長がとある三名⋯⋯私を追い詰めようとした人物達を名指しした。
「ニヤコ、ナナメ、フナミ、来なさい」
そして何を勘違いしているのか嘲笑った顔をした三人が出て来る。
「君達が横領したんだね。それを擦り付けようとした」
「「「ッ!」」」
三人が同じ様に驚き、周囲もざわめく。
「ちょっと待ってくださいよ。なんで私達なんですか! 金を私的利用したのはアヤですよ!」
ニヤコが話を出す。
そこで私は反論する。少しでも間を開けてはダメだ。
私は何もしてないと言う意志を強く貫く必要がある。
「それはおかしな事です。私は経理担当ではありません。ギルドのお金を使う事は不可能だと断言出来ます」
「そ、そんなの! あんたが最近経理にも手を伸ばしているから、それで、出来るでしょ!」
「私はあくまで、サポート出来る範囲でサポートしているだけです。直接手も掛けて無いモノをどの様にすれば私的利用出来ると言うのですか?」
「そ、それは」
「私は投資も何も、お金を使う事は一切しておりません」
それを裏付ける、私が手を貸した男女問わずの職員達が名乗りをあげてくれる。
人は群れる生き物。
少しでも私に味方が居て、相手が不利な状況だと思ったら中立の人達は掌を返す。
これで私の方が圧倒的に有利な立場に成った。
「ちょ、私達がやったって証拠があるの!」
「あります。まずはこれを」
私はマジックアイテムの録音機を再生させる。
マジックアイテムと魔道具は似ている様で別物。細かい人しか分ける事はしないが。
マジックアイテムはドワーフ等が手掛けた、ある程度の魔力を溜めておけば魔力無しでも扱える魔道具の事だ。
ルーン文字と言うのが刻まれているらしい。
『あいつの顔見た?』
『見て見た! あの、「なんで?」って顔!』
『良かったよねー調子乗り過ぎだったんだよ』
『ほんとそれ。にしても、案外ちょろまかすのも簡単ね』
『ほんとそれ。贅沢し放題』
それからも楽しげで馬鹿にした様な会話は続いた。そして、私以外の職員、副長、ギルド長等の悪口まで進む。
「ちょ、何それ、止めろよ!」
「そんな物作ってたの!」
「そんな。私は魔力も無ければルーンを使ったアイテム製作なんて持っての他。どの様に作ったと言うのですか?」
「そ、それは⋯⋯」
「か、関係無い!」
ナナメが関係無いと叫び、それに続くようにフナミも叫ぶ。
あくまでも自分達は関係ない。やったのはニヤコだと宣言する。
「お前達!」
ニヤコは当然そんな事を許す筈も無く、後はニヤコが勝手に喋った。
「皆同罪でしょ! そもそも最初はナナメが言い出したんだろ! 納品される金をちょろまかすって!」
ナナメは受付嬢、商人は商業ギルドに税を売上の一割を納品する義務がある。他にも納めるモノがあったりする。
それをナナメ経由で経理のニヤコが書類を改変。
フナミも一枚噛んで寄り強固に隠蔽工作をしていたらしい。
「そ、それに副長も同罪だろ! 知ってて黙ってたんだから!」
「そ、それは⋯⋯」
私はアイコンタクトでそれを制する。
「副長は関係無いのでは?」
「関係あるね! これを見ろ!」
出された写真は私のとは写っている女性が違う写真。
「このジジイは愛妻家と言いながら、風俗通いしてんだ!」
人が極限まで追い込まれたら何をしでかすか分からない。
それが色濃く出た結界だろうか。
「違いますよ」
「んだとアヤ!」
「それは投資の話ですよ。つまり取引。交渉していたのです」
「は、はぁ? ここは既に大手。今更金を借りる必要が何処にある」
「そんなのは知りませんよ」
「だいたい表の取引なら書類がある筈だろ! 出してみろよ、あぁ?」
勝ちを確信した笑みを浮かべている相手。私は副長に目を合わせる。副長は自分の机の引き出しから書類の束を取り出し、ニヤコに渡す。
それを受け取りパラパラと眺めるニヤコの顔は驚く程に青ざめて行く。
「そんな訳」
他の書類が一斉に管理されている部屋に向かい、ガサガサと漁る。
適当に漁られると後片付けが大変だから止めて貰いたい。
「な、なんで! なんでよ!」
この反応でこの場の全員が確信した。
先程ニヤコが示した写真は『不貞行為現場』では無く『商談帰り』だと。
確かに、既にあそこは納める事しかしておらず、数年後は商業ギルドから離れて独立している程に大きく成るだろう。
それ程までに成長しており、今更商業ギルドからお金を借りる必要は皆無。
だからこそ、正式な取引の書類なんて本来は存在したい。
だが、私はここ数日でそれを実現させた。
まぁただ、母上の力を借りたのが悔しかったが。
立派な事務員として働いていたつもりが、親の手を煩わせる事態に成るなんてね。
以外に簡単だった。その店のオーナーと副長は知り合いらしく、快く協力してくれた。
ま、断られたら断らない状況を作ろうと思っていたのたが。
「成程。アヤさんがするとは思っていなかった。その通りだったな。お前達、儂の部屋に来い」
「ギルド長」
ギルド長がそう言って、三人を連れて行った。
私達の事を知っている数少ない人物の一人。
そして帰り、副長から頭を下げられた。
「助かった」
「いえ」
あの店で何かやましい事をしたとは思ってない。
何か大切な人が働いていて様子を見に行ったのだろう。
例えば息子が社会勉強の一環で働いていたり。
あそこは接待と娼婦の二つがある。
そこでは男も働いている。主に注文された品を運んだり料理をしたり⋯⋯所謂裏方。
家族には問題ないだろうが、職場では先に言いふらしたモン勝ち。怖いモノですね。
家に到着する。
最後のあの三人の顔を見て、私は何も感じなかった。『ざまぁみろ』や『自業自得』等と言う感情すら無かった。無関心だ。
もしもあの人達が自国の民と言うのなら、私は迷わず手を差し伸べただろう。
でも、既に私は王族であり王族ではない。
「アヤ聞いた?」
「何をですか?」
「アクアの方でとんでもない魔法を使った新米冒険者が居たんだって。今はミンクの方に行ってるらしいよ」
「そうなんですね」
「興味なさげ? もしかしたらユウキ君達かもよ」
「それは無いと思いますよ。我々の様な特殊な場合ならともかく、一般の兵士ではまず、国に入れません。滅んだ国の人間の行ける場所は限られている。ユウキ君達が生きているのなら、まずは近くの村に行きますよ。そこで必死に働いて、お金を稼いで、国に行くと思います。滅んでから、その情報は流石に早すぎる」
「ドライだね~」
「確かに、ユウキ君達なら嬉しいです。ですけど、高望みの希望は良くないです。でも、そうですね。もしも、その冒険者がユウキ君達なら、こちらに向かっている可能性がありますね。ま、とても低い確率ですけどね」
「まあ、確かに。身分証も無く国に入るには入国手数料がいるし、そんな金は無い」
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