滅んだ国の元軍人兄妹冒険譚〜魔王レベルの魔力保有者は自由に異世界冒険を満喫する〜

ネリムZ

文字の大きさ
23 / 37

鉄の蜥蜴

しおりを挟む
 竜亭所に到着し、熱き龍のメンバーと別れた。
 別れ際にきちんと挨拶はする。

「それじゃあな」

「ああ」

 魔法士が前に出て来て、魔法について少しだけ述べてくれる。

「初期から使える魔法だけに頼っちゃダメだよ。色んな魔法陣を見て、色んな魔法に触れて。君達は魔法がメインじゃないから良いと思うけどね」

「いや、そうするよ。それじゃ」

「ありがとうね!」

 そして、俺達は離れた。熱き龍は冒険者ギルドに向かい報酬を受け取るらしい。
 俺達はまず宿を探そうと思う。
 門に近い宿を見つけたので、そこに入る。

「カンカンうるさい」

「馴れるしかないさ」

 ここら辺はどこからもカンカンと金属を叩く音が聞こえる。
 それでここがどの様な国か語っている様なモノである。

「泊まりたいのですが」

 店主と思われる人に近づいてそう言う。
 こちらを一瞥して、紙を取り出して来る。

「どのプランにするべ?」

「えっとですね。食事付きを一部屋、取り敢えず一週間で」

「あいな。銀貨三枚掛ける七で銀貨二十一枚頂戴するべよ」

 懐の小袋から銀貨二十一枚取り出してカウンターに置く。
 店主は男で、サナを下から上、そして顔を凝視する。
 サナは小首を傾げる。そして、店主は俺の耳元でこう言う。

「防音は完璧だべ」

「俺達は兄妹だ」

「⋯⋯またまた」

「事実だよ!」

 それを証明しろと言われても難しいけどな!

「そう言う事にしとくべ」

 この店主⋯⋯。

 部屋の鍵を貰い、向かう。
 部屋に入り荷物を整理してから備え付けの椅子に座る。

「お兄ちゃんなんの話してたの?」

「気にするな」

「分かった」

「素直だな」

 それから一休みしてから冒険者ギルドに向かう。
 そろそろ依頼か何かしようかと思ったのだ。
 だが、白星で受けられる依頼なんて無かった。
 なので、魔物の情報掲示板の方に向かい見る事にした。

「近くで行ける範囲だと、あれが一番高いな」

「アイアントカゲ? 行く?」

「行くか」

 そして、俺達は『鉄の洞窟』と言う所に向かった。
 鉄の鉱脈の一つで、現在は使われてないらしい。もっと大きい鉱脈があるみたいだ。
 基本的に冒険者が来る。

「壁に張り付いて風景と同化するらしいから、しっかり警戒しろよ」

「あいあいさー」

 気の抜けた返事を受けながら、俺は背中の剣を抜いた。
 正面を見ても特に何かが動いた訳でも見える訳でも無い。
 だが、そこに居るのだ。だいたい天井近くの右の壁。

「姿は見えて無くても、気配がダダ漏れなんだよ!」

「お兄ちゃんが訓練で良く言われた言葉だ!」

「るっせ」

 光の剣に魔力を込める。
 白い光の奔流が剣に纏わり着く。
 その光を退ける様に強く気配がする場所に振るう。
 光は剣から離れて一本の斬撃と成って気配のする方へ洞窟を照らしながら飛来する。
 何か硬いものに当たった様に弾かれ、光は霧散する。
 ドスン、と壁は剥がれて迷彩を解除した鉄の塊と見間違える姿のトカゲが姿を表した。

「サナ」

「分かってるよ」

 サナは数歩大きくステップして後ろに下がる。
 トカゲは攻撃して来た相手を俺だと確信して、ドサドサと迫って来る。
 トカゲの基本的な攻撃は噛み付き、尻尾の薙ぎ払い、突進と踏み付けと言う単純な肉弾戦だけだ。
 突進して来るのを剣をクロスさせて塞ぐ。

 流石は魔物。
 その力は簡単には止められず、後ろに押されて行く。
 手と足に力を込めながら必死に耐える。
 魔力を制御して手とかに集中させれたら良いのだが、生憎とそこまでの技量に俺達は達してない。

「今だ!」

 動きが収まった瞬間に叫び、サナは駆ける。
 風の様に軽く舞い、壁を走りそのまま天井を走る。
 トカゲの真上に来たら天井を蹴って落下する。
 左手は鞘に、右手は刀に。
 力を込めて運動エネルギーを増やして行く。

「抜刀術・剣舞『輪』!」

 刀を抜くのに合わせて魔力が流れ、風の奔流を作り出す。
 そのまま回転するように切り裂き、俺から見て、風の円が完成していた。
 その魔道具を利用した力技に寄ってトカゲの首を綺麗に斬った。

「いえーい!」

「ナイスサナ」

 ハイタッチして、俺達はトカゲの死体を一つに纏めようとするが、トカゲが集まって来ていた。
 俺が先に駆け、一匹の動きを阻害して頭を上に弾く。
 その隙を突いてサナがすぐさま肉薄し、風の斬撃を残す速度で切り裂き首を落とした。
 魔力をある程度流さないと斬る事は不可能であり、連続で倒す事は出来ない。

 そんなサナを狙ってトカゲが噛み付き攻撃をして来るが、サナはそれを刀を使って口を開けた状態でキープさせる。
 その隙を狙い、俺はトカゲの横へと移動して魔力を流していた光の剣で首を攻撃する。
 抜刀術は刀を抜き出す時にしか使えない剣術で、その一撃は重い。
 それに対してただ勢いを付けた斬撃だけでは首を両断する事は出来ず、すぐさま足のスナップを利用して回転し、闇の斬撃で攻撃して首を落とした。
 互いに防御と攻撃を繰り返して行く内に気づいた。流石に数が多すぎると。
 そして、いずれ物量に押される事は容易に想像可能だった。

「魔力回廊接続、土の回廊、フェンスオブグラウンド!」

 サナが地面に刀を突き刺して魔法を発動して地面を上げて壁とする。
 便利な魔法である。この様な洞窟では相手と自分達を遮断出来るのでとても重宝する。

「お兄ちゃん⋯⋯」

「どったの?」

「あいつら、土を食べて移動している。すぐに来るよ!」

「まぁ、鉱石が主食だし、そうだろうな。⋯⋯ある程度の死骸を集めたらトンズラするぞ! 荷物をまとめろおおおお!」

「おおおおおお!」

 速攻で出来る準備だけを済ませて洞窟から脱出する。死骸は外部に持てる物以外は腕輪に収納した。
 そのまま運び、冒険者ギルドへと足を運んで買取をお願いした。

「⋯⋯すみません。先程魔物情報掲示板の方でお見かけした覚えがありまして⋯⋯これはその後に倒したんですか?」

「はい」

「短時間で六体? そんな群れを成す魔物では無いと思うのですが⋯⋯」

「何故か沢山来たんです。途中で逃げて来ました」

 サナも肩を落としている。敵から背を向けて逃げる事が悔しかったのだろう。
 俺にはそんな感覚は無い。既に森で魔物から逃げている。

「そんな事が? これらの魔物は寄り強い鉱石を求めます。もしかして⋯⋯鉄よりも希少な素材で作った武器か防具でも使ったんですか? だとしても、聞いた話の量では⋯⋯何か良くない事でも起こっているのでしょうか」

 そこで、俺は熱き龍達との会話を思い出す。
 オリハルコン⋯⋯もしかしたら、俺達のネックレスがそれを引き起こした可能性がある。

 もうすぐ夜なので、俺達は冒険者ギルドから報酬を貰い、そして今回の狩りで成績が一定に達したので灰星へと昇格して、晩御飯を求めに街を散策する事に決めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...