能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

一章 同格の管理者

33話 ダークエルフ戦

　金栗稜留はただの落ちこぼれの医者だった。
　アビリティを持ってない医者など現代においてはただの時代遅れ。
　知識があっても何かの手術がある訳では無い。
　そんな淡々とした日々を過ごしている稜留。
　彼がもう50を超える時、ニュースに出て来た東京タワーダンジョンを目にした。
　最初はまたただの違法ダンジョンかと思った。

　しかし、そのダンジョンは月日を跨いでも1度もボス部屋まで辿り着く事が出来ず、管理者の顔を誰も拝む事が出来なかった。
　一度、政府が管理している管理者のモンスターを連れて攻めて行っても返り討ちにあう。
　その事に稜留は徐々に心配から興奮に変わった。

　どんな強者だろうが、返り討ちにしていたダンジョン。
　稜留は57と言う年齢にしても高揚感を覚えた。
　憧れに変わったのだ。

　そんなある日、稜留に一通の手紙が届いた。
　それは太陽神ラーであり、彼に管理者としての力とアビリティを与えた。
　この世のあらゆる事を知る事の出来る絶対的なユニークアビリティ、情報記録書庫アカシックレコードである。
　神は知っていてまだ発見されてない裏技を使って彼は驚くスピードで成長して行った。

　最初は良かった。
　憧れである管理者に近づく為の努力、仲間との絆。
　しかし、途中から彼はモンスターを仲間や部下では無く、道具として見るように成った。
　自分の命令にだけ従う便利な道具。

　そして、何時しか欲が生まれた。
　自分の方が短期間でSSSクラスへと上り詰めた。
　その実績が彼の欲を膨張させた。
　自分が難攻不落の管理者になると、そして彼は決めた。

　世界征服をしようと。
　そして、管理者の最高潮であり、絶対的な強さの意味をする、ダンジョンマスターに成ろうと。
　そして、いずれ神となる。
　全知の力を持って全能の力を打ち倒す。
　それが、今なのだ。

　◆

　難なく進んで居ると、奥からナイフが飛んで来た。
　その速度と綺麗に喉を狙われた攻撃に俺は咄嗟にスペルカードを取り出してそれで弾いた。
　すぐにスペルカードから紫蘭を解放して構える。

　正面から黒森人族ダークエルフと思われるモンスターが俺に膝蹴りを噛まして来た。
　紫蘭で防ぐが、かなりの威力で、後ろに下がる。
　タクヤ、皐月、ヤユイ、ミツルが四方向にバックステップしてダークエルフを視界に入れる。

　先に行動したのはヤユイ。
　ハンドガンを二丁高速で展開して高速で放つ。
　1回の爆音にしか聞こえないが、弾は合計で4発放たれていた。
　ダークエルフはそれを手に持っている短剣で全て斬った。

　そして、ワンステップでヤユイに接近して回し蹴りを放つ。
　手の甲で防ぎ、ドンと言う鈍い音と衝撃波を広める。
　エルフの手は止まらず、短剣をしまい近接格闘で粘り、相手を離さない。

　ヤユイも相手の攻撃を防いでハンドガンで反撃をする。
　しかし、その攻撃を見事な回避行動に寄って、弾丸は虚空を進むに終わった。
　皐月が背後に周り大剣を大振りで払う。

　それにはヤユイも巻き込まれ、ヤユイとエルフは跳躍して躱す。
　エルフは空中で旋回して皐月のデコに頭突きを放つ。
　ガンと音が成るが、皐月のバランスは崩れる事が無かった。

「痛いだろ！」

「堅物ゴリラ」

「んだと！」

　頭に力を込めて首を前に強く倒す。
　その勢いだけでエルフを後退させるに至る。
　背後に数体の人形が出現する。
　タクヤが操った人形は槍の先端をエルフに向けて突き進む。
　バンと爆音が響き、再び4発の弾丸が閃光を放って高速で飛来する。

　ミツルは武装を解除して、機動力の向上と見た目を隠した。
　しかし、エルフは人形にナイフを刺して爆発させ、弾丸は短剣で斬る。
　透明なミツルは揺れる空気と空間を見て見事に回避した。

「なんだコイツ、秘密兵器か？」

　見事に対応して来ている。
　俺は2枚のスペルカードを取り出す。

「スペルカード、マーキング、ホーミングファイヤーボール、発動！」

　エルフが青い光に包まれ、出現した炎の球がエルフ目掛けて突き進む。
　エルフは躱す事はしないで1枚の魔道具マジックアイテムを取り出した。

「リリース」

　丸い石をパリンと砕くと、炎の珠がかき消された。
　反魔法アンチマジックだろうか。
　魔法に対して真反対の魔法をぶつける事で打ち消す魔法。
　俺のスペルカードのプログラムの真反対を知っている場合、スペルカードの魔法は1番対策されやすい。

「なら！」

　俺は地を蹴って加速し、エルフに接近して紫蘭を振るうが、躱され虚空を斬る。
　相手の技術はかなりの高さで、俺達の攻撃パターンを知り尽くしたように最適な動きをして来る。
　厄介だな。

「危ねぇな！」

　短剣でクロス斬りを放たれるが、紫蘭で防ぐ。
　俺はバックステップして距離を取り、隣に皐月が並ぶ。
　皐月と共に地を蹴りエルフに接近する。

「チェンジ」

　ヤユイがハンドガン二丁からサブマシンガン二丁に変えて連射する。
　タクヤは爆弾を持った人形をエルフに向かって放った。
　ミツルは隙を見ての攻撃の為に控える。

　俺と皐月が同時に刃を下ろす。
　紅と紫の閃光を放ち、衝撃波の斬撃を放つ。
　同時に大爆発と弾丸の雨がエルフに集中する。
　しかし、エルフは離れた場所に短剣を構えて立っていた。

　マジックアイテムを乱用しているようだ。
　今のは瞬間的に近くの場所に転移ワープするアイテムだろう。
　沢山あるから絞り出すのは厳しいがな。

「一筋縄ではいかんよな」

　あの3人よりも全然強いぞ、コイツ。


───◆
　迷宮丸秘ファイル。
　迷宮症候群の時に神から何か来ると確信して居た理由。
　迷宮症候群を起こした人に罪を与えた結果、最高責任者が天音になったから。