能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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二章 能力専門学校

3話 柴の家庭事情

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「ただいま」

 結奈は自分の家へと帰っていた。

「おかえりなさい」

 母親に出迎えられ、少し頬が緩む結奈。

「結奈、喧嘩はしてないでしょうね?」

「してないよ」

(あれは喧嘩じゃなくて、互いに一方的な暴力だ)

 結奈は千秋に対して、天音は結奈に対して、勝負にも成らない戦いをしていた。

(ただの恥だな)

 改めて考えると、とても恥ずかしい行為をしていたと自覚する。

 良くある事だろう。

 だが、結奈には恥の他にも何かを思う感じがあった。

「そう言えば今日はお姉ちゃんが帰って来るよ」

「姉さんが? そっか」

 結奈はリビングへと向かう。そこにはソファーに座って、ホログラムテレビでニュースを見ている父親の姿があった。

 彼は公務員。その仕事柄、最近は悩みの種が出来ている。

「お父さん。ただいま」

「⋯⋯」

 素っ気ない態度の父親。偏差値の低い学校に入学した結奈に失望して、相手にしてないのだ。

 結奈ならもっといい高校に入れた。なのに、低い高校に入った。

 それが安定、エリートなどの言葉に縛られた父親の逆鱗に触れたのだ。

 だが、その父親は無能力者。娘二人は能力者なのにだ。

 余計に劣等感を抱き、比例するように期待していた。

 それを裏切られた父親の気持ちを結奈は少しばかりだが、理解は示していた。

「今日の晩御飯はなに?」

「カラーよ。違う高校だけど、どう、問題ない?」

「ないよ」

 ドアがガチャりと開く。

 父親が立ち上がり、玄関へと向かった。

「お帰り、莉奈」

「ただいま帰りました。お父様」

 一例する莉奈りなと呼ばれた紫色の髪をショートヘアにした女性。

 その顔は凛々しいの一言に尽きない。

「あら、結奈、帰って来ていたのね」

「う、うん。姉さんも、お帰り」

「ええ、ただいま。お母様も」

「ええ。カレー出来てるから食べてね」

「その為に帰って来たんですよ」

 莉奈の動作一つ一つに気品を感じられた。

 彼女は悪い能力者を取り締まる、警察の一部の所属である。

 アビリティが絡む事件などを主に担当する。

 その中でもエース級の実力を持つ莉奈。

 莉奈の存在があるからこそ、結奈は余計肩身の狭い生活をしている。豪邸なので窮屈ではないが。

「⋯⋯」

 無言の食事。

 終わったら結奈は片付けて自分の部屋に戻る。

「あたしだって、複数個アビリティがあったら」

 アビリティオーブを手に入れるには管理ダンジョンに行くしかない。

 だが、それにはアドベンチャーラー登録が必要。それを両親は認めない。

 国に仕える事が正義だから。

 買うにしても、高額で高校生である結奈は手が出せず、適正ではない場合、本当に無駄金に成るからだ。

 この豪邸は莉奈が建てたモノだ。父親はただの公務員。

 莉奈は自分の部屋に入った。

「完全防音結界」

 音が外に漏れないにしてから、電気を付ける。

 そこは壁にも、天井にも、全体に様々な年の結奈の写真があった。

「はぁ~結奈ちゃん今日も可愛いな~。ごめんね~クソジジイが近くに居たから甘えれなかったよ~」

 ベットにダイブして、ベットの下から一枚の下着を取り出して、鼻に持って行く。

「スーーハーー。結奈ちゃんの匂い。結奈ちゃんに包み込まれるぅ! 上司のジジイからのストレスが解消されていくぅ! 本当は生が良いけど」

 防音性の高い家だが、完璧を求めないと妹に嫌われる、そう考えている莉奈は魔法を使っている。

「あ~もう無理!」

 服を脱いで、タンスから昔からチマチマ集めた数々の結奈の下着コレクションをベットに広げて、再びダイブ。

「結奈ちゃんにぃ、包まれるぅ、幸せぇだぁ! あ~でも今日の結奈ちゃんいつもより瞳が0.2ミリ下がってたなぁ。何かあったのかな? 嫌な事されたのかな? ソイツ、絶てぇに許さねぇ」

 誰かは分からない相手に殺意を向ける莉奈。

 そんな莉奈に同僚の人からメールが届く。

「ん? 迷宮都市の視察者に入選? ふ、ふ、ふざけんなあああ! ゴミ、クソ! なんでやんねぇといけねぇんだよ! 絶てぇに結奈ちゃんとの時間が消えるだろ! 今でも同じ空気を吸う時間と生の匂いを嗅ぐ時間が減ってんのに、もっと減るだろ! はぁはぁ。だけど、仕事クビに成る訳にもいかないし」

 莉奈は最重要任務の為、仕事はクビに成る訳にはいかない。

 最重要任務は私情である。

「せめて結奈ちゃんに頬にちゅーして貰ったら頑張れるのに、流石に頼めないな。はぁ、どうして姉妹の仲の距離が空いたのか」

 メールには続きもあった。

 それは護衛任務。政治家の一人の娘が偵察しに行くのを陰ながら守るのが任務だ。

 莉奈達は視察として、偵察の人を護衛する。

「はぁ。人間相手の警察にモンスターの巣窟に行けと? ばっかじゃないの」

 スマホを投げ付ける莉奈はふて寝した。下着に包まれながら。

 ◇

「これまた酷いな」

 ゴミ? 落書き? そんなもんじゃ無かった。

 今度は机が破壊されていた。

 流石に酷くない? ま、直せるからいいんだけど。

 てか、今日で三日だ。

 ただの校舎程度ならアビリティを使えばすぐに修復可能だろう。

 なのにまだ修復が終わってないのか?

 あまり学校などの重要な部分ではない事に情報網は広げてないが、今回は調べておくか。

「天音、流石に先生に言った方がいいよ」

「多分知ってるよ。知ってる上で無視してんの。教師なんてそんなもんだよ。誰だって自分の身が一番大切、こんなんで教師が動くならこの世にいじめなんてないよ」

「天音、なんか暗いよ」

「はは。冗談だよ」

 俺達のクラス、今では十三人しか居ない。

 かなりの人数が減っている。

 他のクラスも着々と減っている。

 加藤並高校の生徒達が使っているのは北棟だ。

 俺達の教室は南棟である。

 ただ、南棟に特別教室は固まっている。

「終わった~天音帰ろ~」

「分かった」

「にしても、今日の天音は面白かったよ~」

「るっせぇ!」

 今日は雨であり、体育館で女子はバレー、男子はバトミントンをやっていた。

 そこで、俺はラケットを振るったのだが、刀を最近は良く握っており、感覚をミスって手からラケットが滑り、綺麗なホームを描いて俺の頭に当たった。

 痛くは無かったけど、うん。恥ずかしかったね。

 人数が少なくなって、他のクラスとも合同に成っている。

 リュックから折り畳み傘を取り出すフリをする。本当はスペルカードだ。

 行きは雨が降っていなかった。

「ねぇ天音」

「どった?」

「雪っちとは、仲直りした?」

「だから喧嘩してないって」

 喧嘩はしてないと思うよ? ただ、気まづい。

 それに、俺から話しかける権利と言うか、資格はないのだ。
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