能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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二章 能力専門学校

13話 呼び出し

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「なんですか先生」

 俺は担任に呼び出された。理由? 知らんよ。

「最近、外部報告の数が減っている。何かしたか?」

「いえ何も」

「⋯⋯」

「先生が生徒を疑うんですか?」

「お前が聞きに来た日と、報告の数が減り始めた日が同じなんだよ」

「たまたまですよ」

「そうか? まぁ良い。あ、お礼の言葉も来ていたぞ。ウチの制服を着て、おかしな仮面を付けた人が平和にしてくれたって」

 おかしな仮面? なら違うな。

「それでは、失礼します」

 家に帰ると、そこには柴が壁にもたれていた。

「どったの? 最近顔出さなくて千秋が心配してたぞ」

「それは、すまん。ただ、色々と片付くまで会わない方が良いと思って。少し時間ある?」

「ふ、俺程暇な高校生は居ないと思うぞ」

「それは無いな」

「上がってくれ。今の時間帯なら誰も居ない」

「そうさせて貰うよ」

 柴を家に上げて、椅子に座らせて話を聞くことにする。

 適当にココアでも入れて出しておく。

「あたし、育ち良いから紅茶とか、普通の緑茶でも良いぞ?」

「嫌味か! 妹がココア好きだから、ココアしかない」

「茶は日本人として嗜んでおけよ」

「はぁ。で、話ってのは」

「ああ。実は」

 柴は青界と喧嘩したようだ。

 そして、圧倒的な敗北をしたらしい。

 柴の能力は純粋な加速。それを使った推進力を利用しての蹴りがメイン攻撃だ。

 しかし、その攻撃は大雑把で、避ける事は案外簡単だ。

 だから、申し訳ないけど、ぶっちゃけ柴が負けても驚きはしなかった。

「⋯⋯」

「すまん。今邪念を捨てた。⋯⋯で、青界に負けて悔しいから俺に仇を打って欲しいのか? 断るけど」

「違う。青界のアビリティは水を生み出し操る力、だけど、あたしを倒したアビリティは強化系だった。ビーストブースト、かなり上位のアビリティだよ」

 身体能力を底上げするアビリティ、強化系とは真逆の魔法系が本来のアビリティ。

 そう考えると、強化系のアビリティの適正は無いように思える。

「で?」

「それで、あいつは魔道具マジックアイテムを使っていた」

「ふーん」

「なぁ、そこまで強力な魔道具を、高校生で、しかもアドベンチャーラーですらないヤンキーが、買えるか?」

「無理だな。本当は頭が良くて投資とかやっているなら別だが。管理者が居るにしても、Aクラス以上の管理者しか作れない」

「詳しいな」

 にしても、担任を洗脳した魔道具、強力な強化のアビリティを使える魔道具。

 どちらも強力な効果がある魔道具なのは確かだ。

 あくまで一般人目線だが。

「⋯⋯まて、千秋を巻き込みたくないんだよな?」

「ああ。その、と、友達だから」

 そんな顔を赤らめて言わなくてもいいだろ。

「で、俺は巻き込んでも問題ない、と?」

「え、あんた強いし」

「なんだよその基準! で、他には?」

「そう。魔道具の事が気になったから色々と自分で調べたのよ。足で調べるなら、あたしのアビリティは使える」

「ふむふむ」

「それで、他の人も魔道具を所持している事が分かった。加藤並の方に居た時は、そんな傾向は無かった」

「ウチに来てから、当然?」

「かもしれない」

「犯人の目星は?」

「あたしは、迷宮都市の管理者が怪しいと思ってる」

 最近は難攻不落迷宮とかじゃなく、迷宮都市と俺のダンジョンは呼ばれるようになっている。

 そっか、迷宮都市の管理者⋯⋯俺が怪しいと? なぜ?

 俺は魔道具を外に出してない⋯⋯と、言えば嘘になる。

 だが、便利系で洗脳だの強化だの、そんな道具売ってない。

 そもそも高校生で、それもアドベンチャーラーですら無い人が買えるような値段では無い。

「なんでそう思ったんだ?」

「テストで干渉して来たでしょ? 不自然でしょ」

 た、確かに。

「いやでも、あそこは困っている人に手を差し伸べるって言う考えだし、だからじゃないのか?」

「だったらさっさと不良共を倒してるだろ。なのに今、それをやってんのは雨宮の学校の生徒だ」

 はいはーい! それ俺。

「変な仮面の生徒、誰なんだろうな。⋯⋯なんだよ、その目は」

「いや、なんでもない。柴は迷宮都市反対派か?」

「当たり前よ! あんな人間を監禁するようなやり方! 何が目的なのかはっきりしないし! 最近迷宮都市をパクろうとする馬鹿も出ているし」

 詳しいな。

 ま、迷宮都市をパクるなんて出来ないだろうがな。

 設備、広さ、それらを揃える為のエナジーを本来用意出来ない。それは俺でも同じだ。

 溜め込んだエナジーを全部使っても、今の迷宮都市の地形を作る事は出来ない。

 ま、それは今はどうでも良いな。

「あんたは賛成派なの?」

「ああ。あそこを見学しに行ったんだけど、皆笑顔で、モンスターと人間が共に笑いあっていたぞ」

「嘘でしょ」

「見に行けば」

 てか、本題に戻さないとな。

「魔道具、買えない程の効果、誰かが配った?」

「青界⋯⋯」

 柴が苦しいそうな顔をする。

「自分をボコった相手が心配か?」

「青界ってあたしの幼馴染なんだよ。年上だけど」

「まじ?」

「マジのマジ。あいつ、昔はあんな奴じゃなかったのに」

 それ言ったら昔の千秋はもっと活発だったな。

 いや、あんまり変わんないか。

 柴がしばらく居り、帰って行った。

 ドアで入れ違いで亜久が入って来て、目を大きく見開いていた。

「兄貴、その、子供は計画的にね!」

「変な方向で考えんな!」

 翌日、俺は千秋経由で雪姫に屋上に呼び出された。

 気まづい空気の中、屋上に呼び出された。

 心が沈み、苦しい気持ちになる。怖い、その恐怖心が俺の心を塞いでくる。

 だが、それと同じくらいに好奇心が心を高ぶらせている。

 屋上には既に銀髪を風になびかせた雪姫が居た。

 季節は秋、紅葉が世界を染めようとしている序盤の時期に、雪姫は居る。いや、俺も居るけどさ。

「ねぇ、天音さん」

「はい」

「貴方は、迷宮都市の管理者、なんですか?」

 俺は、正直に答える。

「ああ。そうだよ」

「⋯⋯ッ!」

 悲しそうに目を閉じる雪姫。

「私の、夢はバカだと、思いましたか? アホだと、思いましたか?」

 俺は顔を横に振る。全力で否定する。

「私達と、訓練した日々は、茶番、でしたか?」

「いや。楽しかったよ。模擬戦したり、互いに指摘し合ったり、楽しかった。これに嘘偽りは無いよ」

「なら、どうしてあの場ですぐに否定してくれなかったんですか!」

「分からなかったんだよ。頭が混乱して、何も分からなく成った」

 なんだろう。俺が言いたいのはそうじゃない。

「天音さんは、どうして迷宮都市を始めたんですか?」

「それは⋯⋯」

 これは言っていいのか、分からなかった。

「⋯⋯そうですか」

 雪姫は屋上を去ろうとした。俺は、振り返る事が出来ず、ただ呟いた。

「ごめん。怖い思いさせて。ごめん。俺なんかに関わったせいで」

「それは、違いますよ。ただ、私が未熟だっただけです」

「⋯⋯今まで、ありがとう」

「⋯⋯天音さん。本当に、嘘は言ってませんよね?」

「ああ」

「なら!」

 雪姫が振り返り、一言叫ぶ。

「また始めませんか!」
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