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なめこがエロいと思うような奴はろくなもんじゃない
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俺はバイト先の店長のことが大好きな大学生だ。
今日は織さんが酔ったときに約束した、と思い込んでいるデートだ。もちろん向こうにデートという認識は無い。
(これがゼロ距離から見る織さんの寝顔)
俺ならアラームが震えだす前に起きられると信じていた。そして今は隣で眠る織さんを目に焼き付けている。
(この世の平和が全てここにある気がする。はぁ)
触りたいけど、まだできない。それは織さんのためなんかじゃなく自分のために。まだまだ初恋を引きずっている織さんに手を出して、こじらせたくないから。
人生最大の奇跡を、一時の欲望に任せて台無しにするつもりは無い。
(きれいだなぁ。かわいいなぁ)
あぁ幸せ。俺をこんなに幸せにしてくれる織さんが、早く幸せになるといいなぁ。むしろ俺が幸せにしたいものだ。
学生の俺が今できるのはせいぜいバイトを頑張ることぐらいかと思っていたが、チャンスは思いがけないところにあるものだ。
(行きたいって言ってくれて良かった)
思わず頬が緩む。趣味は無いって言ってたけど、一人暮らしにしては色んなお茶が置いてあったから。合ってたみたいで良かった。
(…そろそろ準備しとくか)
俺は朝食を食べない方だが、織さんは食べるっぽい。昨夜は珍しくジャンキーなものを食べてたから、今日は胃に優しいものを作るつもりだ。
「ふんふん♪」
つい鼻歌が出た。俺らしくない。相当浮かれてることが分かった。
(よし。準備もできたし、こっちもおさまったし、ぼちぼち起こすか)
料理は得意じゃないが、集中しているうちに荒ぶる俺を鎮めてくれる。一石二鳥だ。
-----
「はー。寝たぁ」
休みの日はアラームで起きなくていいのが嬉しい。
(そういえばスマホどこだろう)
ベッドから降りて捜索を始めるとソファの近くにあるリュックを見つけて、向井君が来ていたのを思い出した。
「おざます」
「!」
向井君がリビングに入ってきた。朝食を用意してくれたようで、カウンターに二人分の食器を並べていった。
(朝食食べる派だったんだ…)
しかも、誰かに朝食を作ってもらうなんて初めてだ。惚れてまうとはこのことだろう。自分も前に同じことをしたはずなのに、この違いは何なのか。
-----
「え?こんな器あった?おしゃスティッグマイヤーすぎる」
「(オシャスティッグマイヤー?)カウンターのとこにあったんで使わしてもらいました」
織は自宅で木のプレートに乗った食事が出たことに感動した。
「昨日から本当ありがとねぇ。味噌汁で始まる朝はいいねぇ、いやミソスープか」
「言うほど朝じゃないすけどね」
「はは、ギリギリかもね。ほうれん草と豆腐のチョイスが、久々に濃い食事で疲れた胃に優しくて泣ける」
向井は織の言葉を聞き、満足気に頷いた。
(豆腐となめこの方が胃に良い気がしたけど、エロいと思われても困るし楽だし良かったな)
味噌スープと斜めに切ったトースト少々の朝食を食べ終え、織はコーヒーを淹れながらカウンターに座る向井を見た。
「料理は全然なんて言ってたけど、全然うまいって話?」
「いや苦手っす。今日は前に作ってもらったから。簡単であれっすけど作りたかったんです」
「やだ、嬉しい。じゃあお礼じゃないけどコーヒーどうぞ~」
時刻は午前11時、向井は織の隣で飲むコーヒーの味を噛み締めた。
彼は自分でも先程から思考が暴走気味な自覚があったので無口に努めた。
それが良かったのか、織がお買い物デートを提案してきた。
織の部屋で二人きりという状況に、今にも間違いを起こしそうな向井にとっては良い話だった。
今日は織さんが酔ったときに約束した、と思い込んでいるデートだ。もちろん向こうにデートという認識は無い。
(これがゼロ距離から見る織さんの寝顔)
俺ならアラームが震えだす前に起きられると信じていた。そして今は隣で眠る織さんを目に焼き付けている。
(この世の平和が全てここにある気がする。はぁ)
触りたいけど、まだできない。それは織さんのためなんかじゃなく自分のために。まだまだ初恋を引きずっている織さんに手を出して、こじらせたくないから。
人生最大の奇跡を、一時の欲望に任せて台無しにするつもりは無い。
(きれいだなぁ。かわいいなぁ)
あぁ幸せ。俺をこんなに幸せにしてくれる織さんが、早く幸せになるといいなぁ。むしろ俺が幸せにしたいものだ。
学生の俺が今できるのはせいぜいバイトを頑張ることぐらいかと思っていたが、チャンスは思いがけないところにあるものだ。
(行きたいって言ってくれて良かった)
思わず頬が緩む。趣味は無いって言ってたけど、一人暮らしにしては色んなお茶が置いてあったから。合ってたみたいで良かった。
(…そろそろ準備しとくか)
俺は朝食を食べない方だが、織さんは食べるっぽい。昨夜は珍しくジャンキーなものを食べてたから、今日は胃に優しいものを作るつもりだ。
「ふんふん♪」
つい鼻歌が出た。俺らしくない。相当浮かれてることが分かった。
(よし。準備もできたし、こっちもおさまったし、ぼちぼち起こすか)
料理は得意じゃないが、集中しているうちに荒ぶる俺を鎮めてくれる。一石二鳥だ。
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「はー。寝たぁ」
休みの日はアラームで起きなくていいのが嬉しい。
(そういえばスマホどこだろう)
ベッドから降りて捜索を始めるとソファの近くにあるリュックを見つけて、向井君が来ていたのを思い出した。
「おざます」
「!」
向井君がリビングに入ってきた。朝食を用意してくれたようで、カウンターに二人分の食器を並べていった。
(朝食食べる派だったんだ…)
しかも、誰かに朝食を作ってもらうなんて初めてだ。惚れてまうとはこのことだろう。自分も前に同じことをしたはずなのに、この違いは何なのか。
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「え?こんな器あった?おしゃスティッグマイヤーすぎる」
「(オシャスティッグマイヤー?)カウンターのとこにあったんで使わしてもらいました」
織は自宅で木のプレートに乗った食事が出たことに感動した。
「昨日から本当ありがとねぇ。味噌汁で始まる朝はいいねぇ、いやミソスープか」
「言うほど朝じゃないすけどね」
「はは、ギリギリかもね。ほうれん草と豆腐のチョイスが、久々に濃い食事で疲れた胃に優しくて泣ける」
向井は織の言葉を聞き、満足気に頷いた。
(豆腐となめこの方が胃に良い気がしたけど、エロいと思われても困るし楽だし良かったな)
味噌スープと斜めに切ったトースト少々の朝食を食べ終え、織はコーヒーを淹れながらカウンターに座る向井を見た。
「料理は全然なんて言ってたけど、全然うまいって話?」
「いや苦手っす。今日は前に作ってもらったから。簡単であれっすけど作りたかったんです」
「やだ、嬉しい。じゃあお礼じゃないけどコーヒーどうぞ~」
時刻は午前11時、向井は織の隣で飲むコーヒーの味を噛み締めた。
彼は自分でも先程から思考が暴走気味な自覚があったので無口に努めた。
それが良かったのか、織がお買い物デートを提案してきた。
織の部屋で二人きりという状況に、今にも間違いを起こしそうな向井にとっては良い話だった。
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