18 / 37
体調悪いときは養命酒もパイカルもNG
しおりを挟む
早番の畑山さんは、向井にお粥を渡した際に玉子スープやコーンスープの素も置いて行った。
向井は貼られていた付箋を見て、思わず顔が綻んだ。
『朝、食べられたらお湯で溶かして、飲めば、温まりますヨ。朝は、雨の予報ですし、人手が足りていますので、無理して来ないように!』
「ふっ」
(もう東京のお母さんだな。あの店、織さんのお母さん多いんだよな)
織さんのスマホは、俺がライトを点灯し続けて電池が切れたため、アラームは鳴らないはずだった。
「えっ?何で?何時!?」
その甲斐あって、シャワーを借りてリビングで髪を拭いてると、ちょうど取り乱す織さんが見れた。
「おざす、今10時ちょいっす」
「えええ!やばい、開店してるわ、どうしよ」
(どうせならもっと寝てればいいのに)
ひとまず畑山さんの付箋メッセージを見せ、織さんに玉子スープかコーンスープかを選んでもらった。
「じゃあ玉子…あ、向井君そっちで大丈夫?」
「ハイ。あ、シャワー借りました」
「あぁ良いよ全然。タオルわかった?」
「ハイ(柔軟剤のメーカーも確認して俺んちにあす着です)」
そこまでは良かったが、織さんの何となくよそよそしい感じが気になった。
(まぁ、男が好きって言ってるし、こんだけグイグイ来てたら流石に警戒するか)
「…あの、織さん」
「んっ?」
やっぱり何か不審だった。
どう思われても仕方ないが、せめて体調が戻るまでは変に意識してほしくなかった。
「昨日はあんな状態だったし押しかけちゃいましたけど。今後は呼ばれない限り勝手に来ないんで」
俺はなるべくカミングアウト前の温度感を心がけて言葉を続けた。嘘をつくときは、何となく織さんの顔を見れなかった。
(本当は呼ばれなくても来たい。ひと目でも顔を見て安心したい。許されるなら毎日そばにいたいし、甘やかしたい)
「店長が倒れたら困るし、学生バイトが心配してお節介焼いてるだけなんで、多少ウザくても諦めて早く元気になってください」
「…」
「織さん?」
「うん。ごめんね、心配してくれてありがとう」
織さんはこっちを見て笑った。一旦は拒絶されなかったことに、俺は安堵した。
(…何か含みのあるありがとうだな)
「嫌そうっすね」
「何でよ。店長として情けないなってだけだよ。しかし、何時に行くのがいいかねぇ…」
カウンターに肘をついて、思案顔の織さんはいつも通りに見えた。
「実際、マスト何時とかあるんすか」
「うーん。一応定時は13時だったと思う」
「ブラック過ぎて笑うんすけど」
-----
残念ながら講義があるため、向井は昼過ぎに織と別れ、大学へ向かった。
それまでの時間は後回しにしていた洗濯や掃除を二人でして、お茶を淹れて一息ついて過ごした。
「安否確認するんで、ちゃんとLINE見てくださいね」
「…ハイ。なんか遠方のおじいちゃんみたいだけど分かったよ」
「向井コールみたいな呼出ボタン作ったら置きます?」
「置かない。気を付けていってらっしゃい」
提案は却下されたものの、織の行ってらっしゃいを受けて向井は嬉しそうに改札を通った。
織は、向井の後姿を見送って店舗に向かった。
(おかげ様でだいぶ人間らしくなったな)
ここ最近の不調が全てとはいかないが、だいぶ楽になった。
しかも、練習の甲斐があり、向井に自分が淹れた紅茶を飲んでもらえたことにも織は上機嫌だった。
迷惑をかけたお詫びとお礼に、駅前で早番さん達にお菓子を選んでいる間も、自然と笑顔を浮かべていた。
(あ。このクッキー紅茶に合いそう。今度はミルクティーで出してみようかな)
クッキーを手に取った時に織は気付いた。自分が今度を期待していることに。
(違う)
織は静かに商品を置いた。
(そもそも、向井君は遊びに来たんじゃなくて、職場でダウンした自分を送って介護してくれたのに。なに浮かれてんだ)
今後は呼ばれない限り勝手に来ないんで。
店長が倒れたら困るし。
学生バイトがお節介焼いてるだけ。
(わざわざ線を引くようなことを言ったのは、自分が…何か、警戒されるようなことをしたのかも)
学生バイトに手を出す気持ち悪い社員にだけはなりたくなかった。そのくせ織は、向井の言葉に傷ついている自分が既に気持ち悪かったし、向井に自分の気持ちが漏れていたらと考えると血の気が引くような気持ちになった。
「…すみません。これお願いします。自宅用で」
織は東京のお母さん達が待つ職場へ急いだ。
ゴーストライターのおかげで本部への提出物が捗って仕方なかった上に、お母さん達が織の残業を許さなかったため、織はさっさと職場を追い出された。
スタッフの思いやりは美しかったが、落ちている人間に時間を与えるとろくなことにならないのは間違いなかった。
-----
※向井
(既読つかねぇな)
病的な間隔でスマホを見返しても、織さんの反応は無かった。
(この前は日和ったせいであんな織さんを見る羽目になったからな)
ウザがられても良いから確かめに行こうと、迷わずお宅訪問を決めた。
「あれぇ?向井君?本物ぉ?」
「あす。本物なんで入れてください」
トロンとした織さんを見た時点でお察しではあったが、カウンターに置かれた養命酒を発見して確信した。
(養命酒で酔ってんだこの人…)
残った量を見るとそこまで飲んではいないっぽいが、箱にしまってテレビの裏に隠した。織さんはソファで寝る一歩手前だった。
「うーん…向井君どしたの?」
「織さんLINEも電話もつながんないんで、孤独死チェックに来ました」
「そう!なんか充電なくなっちゃったんだ、どこやったかな」
(もう駄目だ、この人)
さすがに呆れたけど、何かあった訳じゃなくて良かった。
「心配してくれたの?」
「…しましたよ」
「心配性の、お節介な向井くんだもんね」
「はいはい言いましたね」
俺は織さんが贅沢に使っているソファの隙間に座った。織さんはもはや目が開いてないが、一応起きているようで俺にくだを巻き始めた。
(人の気も知らないで…)
「だからって、なんでここまでしてくれるの?」
「それは…」
織さんが聞いたくせに、返事を待たずにジロッとこっちを見て続けた。
「僕の事、ペットかなんかだと思ってるでしょ」
「いや、ペットなら問答無用でカメラ置くし、ものすごく尊重されてますよ織さんは」
「そうなの?いちおう尊厳があったんだ、僕にも」
(前より酔ってるかも…)
そういえば織さんって自分のことボク呼びだったのか。
「なんてね。さすがに分かるよ」
「またまた」
急に俺の気持ちを読んだ織さんの口ぶりに、内心ドキッとしつつ、口では余裕ぶった。
「安心してね、向井君がいる間はクビになんないように頑張るからさ」
(ほら何も分かってない)
「わぁ俺とっても嬉しいです」
安心した俺は棒読みで答えた。
「僕もこのお店好きだから、嬉しいよ」
「いい人ばっかっすよね」
それは本当に思っている。
「うん、本当ありがたいよ」
「織さんの人徳ですよ。そういう人が集まるのは」
「そうだといいね」
(はあぁぁぁ何その顔)
寂しそうな笑顔に、俺は何も言えなくなってしまった。自分が社員だから気遣ってくれてるだけ、織さんは本気でそう思ってるから。
「…本当にそうなんすよ」
それきり寝てしまった織さんが寄りかかってきた。顔が近いと俺が悪さをしそうなので、俺が落ち着くまで俺の膝を枕に寝かしておいた。
-----
※織
信じられないかもしれませんが、目が覚めたら向井君の膝枕で寝ていました。
「!!!!??」
(何で?現実?いま何時?スマホは?)
じわじわ記憶が戻ってきた。多分さっき飲んだ養命酒で酔ったんだろう。
向井君が寝ていたので、起こさないようにそっと身体を起こして室内を見回した。養命酒も無いけど全部飲んじゃったんだろうか。怖い。
(そう思うと、身体がやたら熱いような)
確か薬局で、小さいカップに一杯飲んだそばから温まる、みたいなことを言われて買った。
なるほど、汗もかいてるし効果はばつぐんな感じがする。
(…うわ!向井君がいるのに、人が来ない時用の部屋着じゃん)
まだ状況が良く分からないけど、多分LINEの返事が無いから向井君が心配して来てくれたんだろう。
(ALSOKもびっくりの遂行力だな)
とにかく汗を流して着替えるために浴室へそっと向かった。
-----
(どうしよう)
織は養命酒のせいにはできない熱を持て余して、お湯の溜まっていない浴槽にへたり込んでいた。
(でも向井君の前で反応しちゃう訳にもいかないし、かといって前だけじゃ余計に状況が悪化する気がする)
しばらく悩んだ結果、織は洗面台の下にしまい込んでいたグッズを取り出して準備を始めた。
「ん…。はぁ…」
何度かお湯を飲んで吐いている内に、何故か前が反応していた。
中を洗っただけでこんなことになる自分に嫌気が差したが、無視できない衝動に従って織は手を動かし始めた。
「はー…んんっ…」
向井を起こさないよう声を抑えたが、(防音だし逆にこっちからの音も聞こえないのかも?)と思い油断が生まれた。どのみち、我慢しても漏れる声を抑えきれなかった。
シャワーを止め、洗浄用のノズルにオイルをまとわせた。再びその先端を自分の中に入れ、くるくるとかき混ぜるように中で動かし始めた。
「ん…んん…っ…」
久々の刺激を貪るように身体が反応した。同時に、加速度的に欲望が沸き上がってきた。
(思い切り突いて欲しい。自分に興奮してほしい。その熱をぶつけて欲しい。最後まで…誰か)
向井の顔が浮かんだ。
「っ…!んんっ…や、あ、はぁ……」
止められなくて、織は一瞬ためらったが洗面台の下から取り出したローションの封を切って秘部に注入した。
(助けて。どうしようもなく欲しい。もっと…)
「も…やだ…」
余裕が無くなった織は気付かなかった。
目が覚めると姿が無くなっていた織を探して向井が浴室へ向かっていた音にも。
何度か呼びかけた向井の声も。
「織さーん?」
「大丈夫っすか?」
「…すんません、開けますよー」
結果、浴室の扉を開けた向井は、織のあられもない最中の姿を見る形になった。
扉が開いたことに、さすがに気付いた織が熱に浮かされた顔で後ろを振り返った。そして二人の目が合った瞬間、
「こらっ、そんな事したら怪我しますよ」
向井は固まっている織から金属製のノズルを取り上げた。
「は…え…?むか…」
予想外の反応に織はまだ対応できなかった。その間に向井はシャワーヘッドを全年齢用に付け替え、浴室の扉を閉めた。
「温まったら出てきてください」
織はリアクションが間に合わないまま、浴室に一人残された。
「…え」
この世の終わりっぽいが、なんか違う向井の対応に、織はまだ頭が追いついていなかった。
「いい加減出てこないと突入しますよ」
「待って待って待って開けないで!!」
向井の一言で、立てこもっていても良いことが無いと分かった織は、リビングに戻ってきた。
向井は貼られていた付箋を見て、思わず顔が綻んだ。
『朝、食べられたらお湯で溶かして、飲めば、温まりますヨ。朝は、雨の予報ですし、人手が足りていますので、無理して来ないように!』
「ふっ」
(もう東京のお母さんだな。あの店、織さんのお母さん多いんだよな)
織さんのスマホは、俺がライトを点灯し続けて電池が切れたため、アラームは鳴らないはずだった。
「えっ?何で?何時!?」
その甲斐あって、シャワーを借りてリビングで髪を拭いてると、ちょうど取り乱す織さんが見れた。
「おざす、今10時ちょいっす」
「えええ!やばい、開店してるわ、どうしよ」
(どうせならもっと寝てればいいのに)
ひとまず畑山さんの付箋メッセージを見せ、織さんに玉子スープかコーンスープかを選んでもらった。
「じゃあ玉子…あ、向井君そっちで大丈夫?」
「ハイ。あ、シャワー借りました」
「あぁ良いよ全然。タオルわかった?」
「ハイ(柔軟剤のメーカーも確認して俺んちにあす着です)」
そこまでは良かったが、織さんの何となくよそよそしい感じが気になった。
(まぁ、男が好きって言ってるし、こんだけグイグイ来てたら流石に警戒するか)
「…あの、織さん」
「んっ?」
やっぱり何か不審だった。
どう思われても仕方ないが、せめて体調が戻るまでは変に意識してほしくなかった。
「昨日はあんな状態だったし押しかけちゃいましたけど。今後は呼ばれない限り勝手に来ないんで」
俺はなるべくカミングアウト前の温度感を心がけて言葉を続けた。嘘をつくときは、何となく織さんの顔を見れなかった。
(本当は呼ばれなくても来たい。ひと目でも顔を見て安心したい。許されるなら毎日そばにいたいし、甘やかしたい)
「店長が倒れたら困るし、学生バイトが心配してお節介焼いてるだけなんで、多少ウザくても諦めて早く元気になってください」
「…」
「織さん?」
「うん。ごめんね、心配してくれてありがとう」
織さんはこっちを見て笑った。一旦は拒絶されなかったことに、俺は安堵した。
(…何か含みのあるありがとうだな)
「嫌そうっすね」
「何でよ。店長として情けないなってだけだよ。しかし、何時に行くのがいいかねぇ…」
カウンターに肘をついて、思案顔の織さんはいつも通りに見えた。
「実際、マスト何時とかあるんすか」
「うーん。一応定時は13時だったと思う」
「ブラック過ぎて笑うんすけど」
-----
残念ながら講義があるため、向井は昼過ぎに織と別れ、大学へ向かった。
それまでの時間は後回しにしていた洗濯や掃除を二人でして、お茶を淹れて一息ついて過ごした。
「安否確認するんで、ちゃんとLINE見てくださいね」
「…ハイ。なんか遠方のおじいちゃんみたいだけど分かったよ」
「向井コールみたいな呼出ボタン作ったら置きます?」
「置かない。気を付けていってらっしゃい」
提案は却下されたものの、織の行ってらっしゃいを受けて向井は嬉しそうに改札を通った。
織は、向井の後姿を見送って店舗に向かった。
(おかげ様でだいぶ人間らしくなったな)
ここ最近の不調が全てとはいかないが、だいぶ楽になった。
しかも、練習の甲斐があり、向井に自分が淹れた紅茶を飲んでもらえたことにも織は上機嫌だった。
迷惑をかけたお詫びとお礼に、駅前で早番さん達にお菓子を選んでいる間も、自然と笑顔を浮かべていた。
(あ。このクッキー紅茶に合いそう。今度はミルクティーで出してみようかな)
クッキーを手に取った時に織は気付いた。自分が今度を期待していることに。
(違う)
織は静かに商品を置いた。
(そもそも、向井君は遊びに来たんじゃなくて、職場でダウンした自分を送って介護してくれたのに。なに浮かれてんだ)
今後は呼ばれない限り勝手に来ないんで。
店長が倒れたら困るし。
学生バイトがお節介焼いてるだけ。
(わざわざ線を引くようなことを言ったのは、自分が…何か、警戒されるようなことをしたのかも)
学生バイトに手を出す気持ち悪い社員にだけはなりたくなかった。そのくせ織は、向井の言葉に傷ついている自分が既に気持ち悪かったし、向井に自分の気持ちが漏れていたらと考えると血の気が引くような気持ちになった。
「…すみません。これお願いします。自宅用で」
織は東京のお母さん達が待つ職場へ急いだ。
ゴーストライターのおかげで本部への提出物が捗って仕方なかった上に、お母さん達が織の残業を許さなかったため、織はさっさと職場を追い出された。
スタッフの思いやりは美しかったが、落ちている人間に時間を与えるとろくなことにならないのは間違いなかった。
-----
※向井
(既読つかねぇな)
病的な間隔でスマホを見返しても、織さんの反応は無かった。
(この前は日和ったせいであんな織さんを見る羽目になったからな)
ウザがられても良いから確かめに行こうと、迷わずお宅訪問を決めた。
「あれぇ?向井君?本物ぉ?」
「あす。本物なんで入れてください」
トロンとした織さんを見た時点でお察しではあったが、カウンターに置かれた養命酒を発見して確信した。
(養命酒で酔ってんだこの人…)
残った量を見るとそこまで飲んではいないっぽいが、箱にしまってテレビの裏に隠した。織さんはソファで寝る一歩手前だった。
「うーん…向井君どしたの?」
「織さんLINEも電話もつながんないんで、孤独死チェックに来ました」
「そう!なんか充電なくなっちゃったんだ、どこやったかな」
(もう駄目だ、この人)
さすがに呆れたけど、何かあった訳じゃなくて良かった。
「心配してくれたの?」
「…しましたよ」
「心配性の、お節介な向井くんだもんね」
「はいはい言いましたね」
俺は織さんが贅沢に使っているソファの隙間に座った。織さんはもはや目が開いてないが、一応起きているようで俺にくだを巻き始めた。
(人の気も知らないで…)
「だからって、なんでここまでしてくれるの?」
「それは…」
織さんが聞いたくせに、返事を待たずにジロッとこっちを見て続けた。
「僕の事、ペットかなんかだと思ってるでしょ」
「いや、ペットなら問答無用でカメラ置くし、ものすごく尊重されてますよ織さんは」
「そうなの?いちおう尊厳があったんだ、僕にも」
(前より酔ってるかも…)
そういえば織さんって自分のことボク呼びだったのか。
「なんてね。さすがに分かるよ」
「またまた」
急に俺の気持ちを読んだ織さんの口ぶりに、内心ドキッとしつつ、口では余裕ぶった。
「安心してね、向井君がいる間はクビになんないように頑張るからさ」
(ほら何も分かってない)
「わぁ俺とっても嬉しいです」
安心した俺は棒読みで答えた。
「僕もこのお店好きだから、嬉しいよ」
「いい人ばっかっすよね」
それは本当に思っている。
「うん、本当ありがたいよ」
「織さんの人徳ですよ。そういう人が集まるのは」
「そうだといいね」
(はあぁぁぁ何その顔)
寂しそうな笑顔に、俺は何も言えなくなってしまった。自分が社員だから気遣ってくれてるだけ、織さんは本気でそう思ってるから。
「…本当にそうなんすよ」
それきり寝てしまった織さんが寄りかかってきた。顔が近いと俺が悪さをしそうなので、俺が落ち着くまで俺の膝を枕に寝かしておいた。
-----
※織
信じられないかもしれませんが、目が覚めたら向井君の膝枕で寝ていました。
「!!!!??」
(何で?現実?いま何時?スマホは?)
じわじわ記憶が戻ってきた。多分さっき飲んだ養命酒で酔ったんだろう。
向井君が寝ていたので、起こさないようにそっと身体を起こして室内を見回した。養命酒も無いけど全部飲んじゃったんだろうか。怖い。
(そう思うと、身体がやたら熱いような)
確か薬局で、小さいカップに一杯飲んだそばから温まる、みたいなことを言われて買った。
なるほど、汗もかいてるし効果はばつぐんな感じがする。
(…うわ!向井君がいるのに、人が来ない時用の部屋着じゃん)
まだ状況が良く分からないけど、多分LINEの返事が無いから向井君が心配して来てくれたんだろう。
(ALSOKもびっくりの遂行力だな)
とにかく汗を流して着替えるために浴室へそっと向かった。
-----
(どうしよう)
織は養命酒のせいにはできない熱を持て余して、お湯の溜まっていない浴槽にへたり込んでいた。
(でも向井君の前で反応しちゃう訳にもいかないし、かといって前だけじゃ余計に状況が悪化する気がする)
しばらく悩んだ結果、織は洗面台の下にしまい込んでいたグッズを取り出して準備を始めた。
「ん…。はぁ…」
何度かお湯を飲んで吐いている内に、何故か前が反応していた。
中を洗っただけでこんなことになる自分に嫌気が差したが、無視できない衝動に従って織は手を動かし始めた。
「はー…んんっ…」
向井を起こさないよう声を抑えたが、(防音だし逆にこっちからの音も聞こえないのかも?)と思い油断が生まれた。どのみち、我慢しても漏れる声を抑えきれなかった。
シャワーを止め、洗浄用のノズルにオイルをまとわせた。再びその先端を自分の中に入れ、くるくるとかき混ぜるように中で動かし始めた。
「ん…んん…っ…」
久々の刺激を貪るように身体が反応した。同時に、加速度的に欲望が沸き上がってきた。
(思い切り突いて欲しい。自分に興奮してほしい。その熱をぶつけて欲しい。最後まで…誰か)
向井の顔が浮かんだ。
「っ…!んんっ…や、あ、はぁ……」
止められなくて、織は一瞬ためらったが洗面台の下から取り出したローションの封を切って秘部に注入した。
(助けて。どうしようもなく欲しい。もっと…)
「も…やだ…」
余裕が無くなった織は気付かなかった。
目が覚めると姿が無くなっていた織を探して向井が浴室へ向かっていた音にも。
何度か呼びかけた向井の声も。
「織さーん?」
「大丈夫っすか?」
「…すんません、開けますよー」
結果、浴室の扉を開けた向井は、織のあられもない最中の姿を見る形になった。
扉が開いたことに、さすがに気付いた織が熱に浮かされた顔で後ろを振り返った。そして二人の目が合った瞬間、
「こらっ、そんな事したら怪我しますよ」
向井は固まっている織から金属製のノズルを取り上げた。
「は…え…?むか…」
予想外の反応に織はまだ対応できなかった。その間に向井はシャワーヘッドを全年齢用に付け替え、浴室の扉を閉めた。
「温まったら出てきてください」
織はリアクションが間に合わないまま、浴室に一人残された。
「…え」
この世の終わりっぽいが、なんか違う向井の対応に、織はまだ頭が追いついていなかった。
「いい加減出てこないと突入しますよ」
「待って待って待って開けないで!!」
向井の一言で、立てこもっていても良いことが無いと分かった織は、リビングに戻ってきた。
10
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる