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もし
どくどく遥斗の鼓動が耳元で音をたてた。
頬が、熱い。
頭が、燃える。
『りょーくん、もしかして『りーくんの恋日記』書いてる?』
聞けない。
だって聞いてしまったら、『りーくんの恋日記』を検索されてしまったら、遥斗がBL小説が大すきなことが、涼真にばれてしまう。
もし、りょーくんが、りーくんじゃなかったら?
『きもちわるい』思われてしまったら?
遥斗の世界が、終わってしまう。
オンラインで小説を書いている人はたくさんいるかもしれないけれど、自分が大すきで愛読していて感想を送っているお話を書いている人が、自分の家の隣に住んでいる幼なじみの確率は、どれほど低いだろう。
考えるまでもない。
ありえない。
わかっているのに、遥斗の胸は音をたてた。
耳元で、鼓動がうなる。
もし、もしりーくんが、りょーくんだったら……?
はーくんが、遥斗だったら……?
──……両想いだ。
涼真は、遥斗が、すき。
「うそ──!?」
自室のベッドで跳びあがった遥斗が、すごい音を立ててベッドに落ちた。
ばたばた音がして、おとうさんが飛んでくる。
「どうした、はる──! 泣いてるのか!」
あわてて駆け寄ってくれる父に、遥斗はあわてて頬をぬぐう。
泣いてた。
両想いかもって、思った瞬間。
気もちがあふれて。
泣いてた。
遥斗は燃える頬で、目をぬぐう。
ど、どどどどどどどうしよう……!
りーくんが、りょーくんだったら、両想いなのに……!
『りょーくん、もしかして『りーくんの恋日記』書いてる?』
聞けなかったら、どうやって、確かめたらいいの……?
もしかしてもしかしたら両想いなのに、両想いになれないの……?
うんうんうなった遥斗は、熱をだした。
知恵熱だと思う。
『りょーくんと、両想いかも!』が、遥斗のすべてを打ち倒し、しあわせでぽやぽやの海に浸けこんだようだった。
熱が出てくれてよかった。
りょーくんのこと以外、何も考えられない。
ぽわぽわんで学校を休んだ遥斗は布団にくるまって、涼真のことを考える。
『りーくんが、りょーくんなら、両想い』言葉がぐるんぐるん頭を巡った。
もしかしたら両想いにびっくりしていたけれど、あの『✨🎀💕りーくんの恋💖日記💕🎀 ✨』を書いたのが、無口で、あまり表情の動かない、クールでかっこいー涼真なのかもしれないと思うと、びっくりする。
「はー、りょーくんのこと、ちょっとは知ってたつもりだったのに、全然知らなかったんだなあ」
さみしい衝撃だった。
10年も隣にいたのに、涼真のことを、何にも知らない。
りょーくんが、あんなにかわいい人だったなんて……!
いや、りょーくんが、りーくんじゃないかもしれないけど……!
枕を抱きしめて、ごろんごろん転がる遥斗にノックの音が降る。
「はあい」
遥斗を心配して今日は在宅勤務にしてくれたお父さんが様子を見に来てくれたのだろうと返事をしたら、すぐに扉が開いた。
「ハル、だいじょうぶ?」
滅多に聞けない、涼やかで凛とした、低い声が耳をくすぐる。
遥斗は掛け布団ごと、ぴょこんと跳んだ。
「りょ、りょーくん、どどどどどうしたの!」
反応が、めちゃくちゃあやしくなっちゃった!
りょーくんのことしか考えられないのに、りょーくんが来ちゃったよ!
あばばばな遥斗に、涼真はこともなげにうなずいた。
「お見舞い」
やさしい声に、頬が燃える。
「あ、ああ、ありがとう、りょーくん」
火照る頬で笑った。
「熱、くるしい?」
顔をのぞきこんでくれる、かっこいーりょーくん、夜空の髪がさらさらして、夜空の瞳がきらきらして、めちゃくちゃいー香りのする、幼稚園から高校生になって、声が低くなって、めちゃくちゃかっこよくなったりょーくんが、僕を、すき──!?
ま、まさかまさかまさかまさかまさか……!
りょーくん、めちゃくちゃ、めちゃくちゃモテるよ!
で、でもでもでもでも、万一、万一そうだったら……!?
きゃ──ぁ──ア──!
「きゅう」
ゆだった遥斗は、ぽふりとベッドに沈んだ。
「ハル!」
びっくりしたような涼真の声が、遠く遠く、消えてゆく。
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