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おひめさま?
りょーくんと、もしかしてもしかしたら両想い……!? きゃ──♡♡♡ だけじゃなく、ほんとうに高熱が出たらしく、意識を失った遥斗は病院に運ばれたらしい。
薄いカーテンで仕切られた白い寝台で、遥斗はぼんやり目を明ける。
「ハル……!」
起きた瞬間に、涼真が泣きそうな顔でのぞきこんでくれるとか、なんてごほうび……!
きゃー♡ きゃー♡ したい気もちを、病院に涼真がつきそってくれていることに気づいた遥斗は、あわてて押しこめた。
「……心配させて……ごめんね、りょーくん……」
涼真の手を、熱い手でにぎる。
ひんやりした涼真の手が、きもちいい。
「おとうさんも心配したんだよ、遥斗……!」
視界にいたのは気づいてた。
ごめんよ、おとうちゃん。つい、りょーくんを優先して!
遥斗の腕には点滴の管がささっていた。
熱さましの薬が入っているらしい。
「涼真くんが、はるを運んでくれたんだぞ。よくお礼を言いなさい」
点滴のささった腕で、ぴょこんと遥斗は跳びあがった。
「り、りりりりょーくんが、僕を運んでくれたの……!?」
こくりとうなずく涼真の夜空の髪が、さらさら揺れる。
きゃ──ぁ──ア──!
「きゅう」
遥斗は倒れた。
「患者さんを、興奮させないでください!」
看護師さんに、叱られました。
「も、申しわけありません!」
お父さんといっしょに、頭をさげてくれる涼真を見つめた看護師さんが、つぶやいた。
「……興奮しちゃうの、わかる」
だよね!?
しばらく点滴されたら、遥斗の熱はすこし落ちついたみたいだ。
「もう、だいじょうぶ。ありがとう、りょーくん」
見あげたら、夜空の瞳が揺れる。
「遅くなったし、送っていくよ、涼真くん。
遥斗はおとなしく、点滴されてなさい」
チャリリと遥斗の父が車のキーを鳴らす。
いなくなってしまう涼真にさみしくなりながら、遥斗は手をふった。
「はあい。気をつけて帰ってね」
ひらひらする遥斗の手を、涼真がにぎってくれる。
「帰りも俺が運びます」
ちいさな声に、点滴のささった腕で、遥斗はぴょこんと跳んだ。
「はい、飛ばない!」
看護師さんに、叱られました。
「ご、ごめんなさい……」
熱い頬でかぶってしまう白い毛布は、消毒薬の匂いがした。
「……うん、涼真くんの気もちはとってもありがたいけど、遥斗の熱がまた上がりそうだから、送ってく」
おとうさんが、息子の恋路を邪魔しにきてる! ひどい!
火照る頬をふくらませる遥斗の手を、涼真がにぎってくれる。
「俺が、運びます。
この間、ぎっくり腰しちゃったかもって、おっしゃってましたよね?」
「おぉう」
思いだしたらしい父が腰をさすさすしてる。
「あ、あの、りょーくん、僕、歩けるよ」
申しわけなくなってきて、言いたくないことを言ってしまった遥斗の手を、涼真の指がなでた。
「無理したら、だめ。
俺が、運ぶ」
断固たる涼真に、父が折れた。
「わ、わかったよ、涼真くん。ありがとう。
お家に遅くなるって、連絡を入れておいで」
こっくりうなずいた涼真が、スマホを手に処置室を出てゆく。
……スマホを見せてもらったら、りーくんが、りょーくんかどうか、わかる、のかな……?
作者のページとか?
そんなの遥斗に見せてくれる?
なんて言って見せてもらうの?
うんうんうなっていたら、また意識が遠くなったらしい。
あったかい腕に、つつまれた気がした。
涼やかで、凛として、爽やかな涼真の香りに包まれた気がした。
遥斗は、そうっと目を明ける。
涼真が、遥斗を心配そうに、抱きあげてくれていた。
目が明いたら、起きてしまったら『もうだいじょうぶ。りょーくん、ありがとう。僕、歩けるよ』言わなくてはならない。
涼真がしてくれた夢のような『おひめさまだっこ』が終わってしまう。
遥斗は、ぎゅっと、目を閉じた。
涼真の胸に、そっと、おでこを押しつける。
涼真の鼓動が、とくとく、遥斗の頬を揺らした。
どきどきではち切れそうな遥斗の鼓動と、重なった。
そっと、そっと、遥斗は手をのばす。
そっと、そっと、涼真を抱きしめる。
ぎゅう
涼真が、抱きよせてくれた気がした。
見あげたら、涼真の耳が、ほんのり紅い。
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