【完結】かわいい彼氏

  *  ゆるゆ

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るーくん




 運動会は、僕が活躍できる、一年で一回の、はれの舞台でした。
 幼稚園の年長さんの僕は、得意でした。かけっこで、絶対にいちばんになると思っていたのです。

 頭のよくない、お遊戯も、お絵かきも苦手な僕には、かけっこしかないのです。

 一生懸命、走りました。
 頭のいい、よーくんが、すぐ後ろを走っているのが、わかりました。

 抜かされたら、かけっこでさえ一番になれなかったら、僕には何にもなくなる気がしたのです。

 僕は必死で走りました。

 一番でテープを切り、両親に、幼稚園の皆に、もしかしたらよーくんにも、ほめてもらえるかもしれない。

 ああ、もう白いテープだ。

 ほら、一番だ。

 得意の絶頂になったとき、転びました。


 世界が、ひっくり返りました。
 一番から、ビリになりました。

 たったひとつの得意なことさえ失敗する僕が、クズみたいに思えました。
 泣きそうになった僕に、手を差しのべてくれたのは、よーくんでした。

 僕と手をつないだことのない、手をつなぐのが苦手な、僕が転んだから1番になれたはずの、よーくんでした。

 1番になれたのに、ビリになってしまうのに、よーくんは僕のために戻ってきてくれました。

 手を繋いで、膝をすりむいてうまく歩けない僕を支えて、僕といっしょに歩いてくれるよーくんに。


 僕は、恋をしたのです。







「──……っ」


 顔が燃える。

 胸が熱い。


 心をこめて、遥斗は書いた。

 りょーくん、だいすきを。


 りーくんも、こんな気持ちで、はーくんへの想いをつづっていたのだろうか。

 熱くて、痛くて、切なくて、はずかしくて、だいすきであふれる、とくとくの鼓動で。
 



「はぅあぅあ──!」

 熱に浮かされながら、自室のベッドでスマートフォンを抱きしめた遥斗は、もだえた。

 今でも充分すぎるくらい、りょーくんがだいすきなのに、書いたらよけいに、もっと、もっと、だいすきになっちゃう……!

 燃える頬でくねくねした遥斗は、ぼふんと白い枕に顔をうずめた。


 りーくんが、涼真だったら。

 るーくんが遥斗で、よーくんが涼真だと、気づいてくれるだろうか。


『✨🎀💕りーくんの恋💖日記💕🎀 ✨』に書かれていないことを、遥斗は書いた。

 はじめてのバレンタインの可愛いラッピッグ、遥斗のおかあさんの運転で涼真といっしょに競技場に行ったこと、涼真にかけた銅メダルの紐の色、涼真と遥斗なら知っている、でも『りーくんの恋日記』を読んだだけの人には絶対に書けないことを、懸命につづった。


 りーくんが、読んでくれたら。
 りーくんが、涼真なら。

 感想を、くれるだろうか。


 両想いだと、気づいてくれるだろうか。


 どきどきが、破裂する。




 バレンタインのこと、陸上部のリレーでメダルを涼真の首にかけたこと、『りーくんの恋日記』に応えるように、遥斗は書いた。


 書くことは、苦手。

 小説を書くなんて、絶対むり。

 思っていたのに、どんどん書けた。


 りょーくんへの気もちだからだ。

 だいすきがあふれて、文字になる。


 文字を書く、ただそれだけなのに、記憶より熱くて痛くて深い、あいしてるが、あふれてく。



 書くたびに遥斗は、涼真を想った。


 だいすきな、だいすきな、幼なじみを。



 もし、りーくんが、涼真で。

 はーくんが、遥斗で。

 涼真が、こんな気持ちで『りーくんの恋日記』を書いてくれているのなら。



 めちゃくちゃ、両想いだ。







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