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るーくん
運動会は、僕が活躍できる、一年で一回の、はれの舞台でした。
幼稚園の年長さんの僕は、得意でした。かけっこで、絶対にいちばんになると思っていたのです。
頭のよくない、お遊戯も、お絵かきも苦手な僕には、かけっこしかないのです。
一生懸命、走りました。
頭のいい、よーくんが、すぐ後ろを走っているのが、わかりました。
抜かされたら、かけっこでさえ一番になれなかったら、僕には何にもなくなる気がしたのです。
僕は必死で走りました。
一番でテープを切り、両親に、幼稚園の皆に、もしかしたらよーくんにも、ほめてもらえるかもしれない。
ああ、もう白いテープだ。
ほら、一番だ。
得意の絶頂になったとき、転びました。
世界が、ひっくり返りました。
一番から、ビリになりました。
たったひとつの得意なことさえ失敗する僕が、クズみたいに思えました。
泣きそうになった僕に、手を差しのべてくれたのは、よーくんでした。
僕と手をつないだことのない、手をつなぐのが苦手な、僕が転んだから1番になれたはずの、よーくんでした。
1番になれたのに、ビリになってしまうのに、よーくんは僕のために戻ってきてくれました。
手を繋いで、膝をすりむいてうまく歩けない僕を支えて、僕といっしょに歩いてくれるよーくんに。
僕は、恋をしたのです。
「──……っ」
顔が燃える。
胸が熱い。
心をこめて、遥斗は書いた。
りょーくん、だいすきを。
りーくんも、こんな気持ちで、はーくんへの想いをつづっていたのだろうか。
熱くて、痛くて、切なくて、はずかしくて、だいすきであふれる、とくとくの鼓動で。
「はぅあぅあ──!」
熱に浮かされながら、自室のベッドでスマートフォンを抱きしめた遥斗は、もだえた。
今でも充分すぎるくらい、りょーくんがだいすきなのに、書いたらよけいに、もっと、もっと、だいすきになっちゃう……!
燃える頬でくねくねした遥斗は、ぼふんと白い枕に顔をうずめた。
りーくんが、涼真だったら。
るーくんが遥斗で、よーくんが涼真だと、気づいてくれるだろうか。
『✨🎀💕りーくんの恋💖日記💕🎀 ✨』に書かれていないことを、遥斗は書いた。
はじめてのバレンタインの可愛いラッピッグ、遥斗のおかあさんの運転で涼真といっしょに競技場に行ったこと、涼真にかけた銅メダルの紐の色、涼真と遥斗なら知っている、でも『りーくんの恋日記』を読んだだけの人には絶対に書けないことを、懸命につづった。
りーくんが、読んでくれたら。
りーくんが、涼真なら。
感想を、くれるだろうか。
両想いだと、気づいてくれるだろうか。
どきどきが、破裂する。
バレンタインのこと、陸上部のリレーでメダルを涼真の首にかけたこと、『りーくんの恋日記』に応えるように、遥斗は書いた。
書くことは、苦手。
小説を書くなんて、絶対むり。
思っていたのに、どんどん書けた。
りょーくんへの気もちだからだ。
だいすきがあふれて、文字になる。
文字を書く、ただそれだけなのに、記憶より熱くて痛くて深い、あいしてるが、あふれてく。
書くたびに遥斗は、涼真を想った。
だいすきな、だいすきな、幼なじみを。
もし、りーくんが、涼真で。
はーくんが、遥斗で。
涼真が、こんな気持ちで『りーくんの恋日記』を書いてくれているのなら。
めちゃくちゃ、両想いだ。
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