【完結】かわいい彼氏

  *  ゆるゆ

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涼真

てんし

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 涼真は、かわいいものが大すきだ。

 リボン、フリル、レース、ぬいぐるみ、お菓子、遥斗。

 そう、世界でいちばん可愛い天使は、遥斗だとおもう。




 3歳のころのことを、涼真はとてもよく覚えている。
 遥斗と出逢ったときだからだ。

 お話するのが苦手な涼真は、前の幼稚園で孤立していた。

 こっくりうなずくか、ふるふる首をふるしか、できないからだ。

 何を話しかけても、こっくりか、ふるふるかの子と、話したいとは誰も思ってくれない。

 両親が念願の一戸建てを購入し、引っ越すと聞いたときも、自分の部屋を造ってくれると聞いたときも、特に何の感慨もなかった。


 どこに行っても同じだと思っていたからだ。

 どこに行っても孤立する。


 どこに行っても、ひとりぽっちだ。




 そう思っていたのに。



 桜の花びらの舞い散る日だった。


 車から降りたら、天使がいた。

 ふわふわの栗色の髪も、おおきな栗色の瞳も、まるきり天使だ。

 髪に天使のわっかが見える。

 あたりまえだ、天使なんだから。


 びっくりした。

 ほんとうに、ほんとうに、びっくりした。


 だって、天使は童話のなかの存在だと思っていたのに、目の前にいる──!


「さくら、はると、5さいです!」

 世界でいちばん可愛い声がした。

 当たり前だ、天使なんだから。

「さくら、はるとだよ。5さい。よろしくね、りょーくん」


 天使が、名前を呼んでくれた──!

 舞いあがった涼真は、こくんとうなずくので、精一杯だった。

 差しだしてくれた手を、自分がにぎっていいとは思えなかった。


 だって、天使だ。

 そうっと影から見つめられたら、しあわせだ。

 そう思っていたのに。


 毎日、遥斗は涼真といっしょに幼稚園に通ってくれるようになった。

 幼稚園のことを、教えてくれる。


 涼真にできることは、こくんとうなずくことと、ふるふる首をふること。


 なのに遥斗は、あきれることなく、涼真にやさしくしてくれた。

 天使の手をにぎるなんて、もったいなくてできなくて、しょんぼりする涼真といっしょに、遥斗もしょんぼりしているみたいで、くるしくて。


 でも、天使に、自分がさわっていいと思えなかったんだ。


 運動会で、天使がころんでしまうまで。


 びっくりした。

 あわてて駆け戻った。

 天使なのに、ころんで、血が出てる。


 人間なのかもしれないと思った。


 涼真と同じ、人間。

 はるか高みにまします天使ではなく、地上に舞い降りた天使──いや、ええと、人間っぽい天使?

 ころんだ遥斗は泣きだしそうで、涼真にできることは、天使を支えることだ。

 勇気を、ふりしぼる。

 それでも

「ん」

 言うのが、せいいっぱいだった。


 懸命にのばした手を、遥斗がにぎってくれた。


 熱い手だった。

 天使の手だ。

 足が痛むのだろう、よろける遥斗を支えて、いっしょに歩いた。


 夢みたいだった。


 ちがう、夢じゃ、いやだ。

 遥斗が、天使じゃ、いやだ。


 おなじ人間でいてください。

 どうか、飛んでゆかないで。


 地上に引きとめるように、涼真は遥斗に手を差しだすようになった。

 だって、手をつないでいる間は、遥斗は涼真の傍にいてくれる。


 だれよりも、そばに。










────────────────


 読んでくださって、ほんとうにありがとうございますー!

 完結したのに、インスタでありがとうございますって申しあげたのに、閲覧ポイント30倍の誘惑に負けて(笑)更新してしまいましたー!(笑)

 もちょっとするかも!(笑)

 もしよかったら、楽しんでくださったら、とてもうれしいですー!

 こんなの見たいとかあられたら、おきがるにどうぞです!





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感想 72

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