【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ

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真紀ちゃんの気もち

くやしい

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 ずっと読んでくださって、ありがとうございます!

 お気に入りや、いいねや、エールで応援してくださった方に、感謝の気もちでいっぱいです!
 ほんとうに、ありがとうございます!

 最後は愛希ちゃんで終わろうと思って完結したのですが、やっぱり真紀ちゃんの最後のお話も書きたくなって、書いてしまいました……!(笑)

 楽しんでくださったら、とてもうれしいです!



────────────────








 修羅場なんて、絶対ごめんだ。

 思っていたことさえ、くつがえして。

『捨てないで、愛希──!』

 泣いて、すがろうと思っていたのに。


「愛希の仕事が終わるまで待ってようと思ったら、体調わるくて帰ったって聞いて、心配で連絡したのに出なくて、浮気してるって、どういうこと……?」

 唇からこぼれたのは、自分の声と思えぬほど、地を這う声だった。


 愛希が、幼なじみなのだろう体格のよい高校生と一緒に、楽しそうにブランコをこいだり、自動販売機の前で話したり、何でもないことをしているだけなのに。

 そこに、愛希と幼なじみが重ねてきた歳月を見るようで。

 絶対に、自分には超えることのできない断崖を叩きつけられたみたいで。

 はらわたが燃えた。
 目から火がでるかと思った。


 ──くやしい。

 愛希と過ごした時間が、ほんの少ししかない自分が。

 ちいさな頃の愛希を知らない自分が。

 愛希と同じ高校に通って、他愛ない話をして、いっしょに勉強したりできない自分が。

 文化祭も、体育祭も、修学旅行も、卒業式も、愛希の心に残るだろうすべてのことに、欠片もさわれない自分が。

 くやしくて、くやしくて、涙がでるからって、愛希に当たるなんて、最低だ──!

 わかっているのに。

 燃える言葉は、止まらなかった。


「ご、ごめん! バイトしてるときはマナーモードで、バイブも切ってるんだ。解除するの、忘れてた!」

 愛希が、びっくりしてる。
 突然、激おこになる彼氏なんて、いやに決まってる。

 でも、くるしいのは、そうじゃなくて。


「いちばん問題なのは、浮気だろう!」

 泣きそうだった。


 彼氏に内緒で、ふたりきりで、夜の公園でブランコに乗って、いっしょの缶でココアを飲むとか、それ浮気だから!

 心狭いとか、聞こえない──!

 だって、だって愛希がぁあぁああ──!

 泣いたら、きらわれる。
 こんなことで、追いかけて、わあわあ叫んで、泣くなんて。

 社会人が。

 はずかしくて、情けなくて、みっともないのに、止められない。


「幼なじみの友樹が、しょんぼりな俺に、ココアをおごってくれただけだよ!
 真紀ちゃんこそ、あんなにきれいな人とふたりで夜ご飯なんて……うわ、き……」

 泣きだしそうに揺れる愛希の栗色の瞳に、びっくりした。


 ……え……いや、そうか、麗乃、顔はきれいだったな!
 3歳のころから密着してくるから、何とも思ってなかったけど、べたべたしてるみたいに見えちゃったのかも!

 うわ、ごめん──!

 ……え、愛希、やきもち、やいてくれたのかな……??

 ど、どうしよう……!

 めちゃくちゃうれしい──!

 じゃなかった、ごめんだ──!

 あわあわ謝ろうとするのを遮ったのは幼なじみだ。


「……愛希を泣かせたら、ゆるさねえから」

 それはそうだろう。
 気もちは、わかる。
 だがそれは、不可能だ。

 愛希を心から愛する同士に敬意を表し、ちゃんと話した。

 ちょっとはずかしかったが、やむを得ない。

 幼なじみに納得してもらうためだったが


「真紀ちゃんを、あいしてる……!」

 ぐしゃぐしゃに泣いた愛希が、抱きついてきてくれた。


 めちゃくちゃ、かわいい。

 めちゃくちゃ、うれしい。

 なのに


「……こんなときまで、まきちゃんか……」


 泣いちゃう!





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