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真紀ちゃんの気もち
でーと!
しおりを挟む愛希と、デート……!
どきどきする……!
くるくる鏡の前で回った俺は、ぴこぴこ寝ぐせで髪が跳ねていないのを、コートのすそがデニムのお尻に、はさまったりしていないのを11回確認し、やわらかにワックスで流した前髪を、ちょんちょん整えてから家を出た。
待ち合わせよりあんまりはやく着いて待っているのも気もちわるいかもと、5分前に到着をめざした俺は15分前に着いた。あるあるだ。許容範囲だよな……!
心配しながら、愛希を待つ。
乗換駅を降りてすぐのロータリーは、待ち合わせの人でいっぱいだ。
行楽の汽車が走っているから、これから観光なのだろう人々でにぎわっている。
ちいさな子どもが歓声をあげて走りだして、追いかけるお父さんが涙目だ。
愛希がいないのは、ひと目でわかった。
めちゃくちゃ可愛い愛希は、まるで光っているみたいに、きらきらしているから。いると、すぐ見つけられる。
視界が、きらきらしていない = 愛希がいない
便利でいい。
どきどきしすぎるのを押さえようと、俺はトレンチのポケットのなかのスマートフォンに手をのばした。
ほんのわずかの隙間時間でも、さくっと読めるオンラインBL小説でも読もう。
更新されてるかなー?
より、どきどきするんじゃないかとか、聞こえない!
楽しみにアプリを起動する俺の隣から、声が降る。
「待ちあわせですかー?」
チャラそうな兄ちゃんが、ピアスの耳で手を振った。
「間にあってます」
勧誘も彼氏もな! ふん!
鼻を鳴らしたら、人ごみの向こうがきらきらした。
おお、愛希だ!
遠くからでもわかる、きらきら!
「愛希!」
手をあげて、とろけて笑ってしまった。
「真紀ちゃん! ごめんね、待たせた?」
「さっき来たとこ」
ほんとだよ!
30分前とか、2時間前から待ってないから!
ちょっと必死な俺の隣から、手がのびた。
「うわ、親戚の子どものお守り? せっかくの休日に、お兄さん、かっわいそー。
いーじゃん、俺と遊びに行こうよ!」
腕に手をからませられそうだったので、思いきり避けた。
「彼氏だから」
胸を張って言ってしまいました──!
顔が熱い。
どきどきする。
「真紀ちゃん……!」
抱きついてくる愛希を、抱きとめる。
往来だとか、誰かが見てるかもとか、どうだってよかった。
きみを、抱きしめられたら
なにもいらない
いつか、堂々と抱きしめて、堂々と手をつないで歩ける世界をつくる、そう思っていたけれど
いつか、じゃなくて、今、はじめたい。
今、俺は、愛希の彼氏で。
それはきっと、胸を張って、大声で言っていいことで
俺は、愛希を、あいしてる。
「行こう、愛希」
顔が、とろける。
自分の喉からこぼれると思えないほど、声が、あまい。
愛希が、手をつないでくれる。
はちみつみたいに、きらきら笑ってくれる。
「真紀ちゃん、だいすき」
きみが、くれる言葉はいつだって、天上の響きで
『だいすき』
にぎる指に力をこめてくれたら、俺まで天井に昇ってゆく気がするんだ。
「今日は俺がデートコースを考えてきたんだよ!
まずは紅葉狩りでしょ、滝でマイナスイオンで『きゃー♡ つめたーい♡』で真紀ちゃんに抱きつくんだよ!」
にこにこして、俺に腕をからめた愛希が、耳まで紅に染まってゆく。
「……言っちゃった……」
真っ赤な耳で、うつむく彼氏が、かわいすぎて、泣いちゃう──!
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