【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
6 / 209

ごめんよ

しおりを挟む



 キーアが元気に掲げる拳に、ヨニおじいちゃんが、ぽかりと口を開ける。

「……は? え、キーアおぼっちゃま、そ、それはちょっと、ご無理があるかと……」

 ヨニの視線をたどったキーアは、お腹をつまんでみた。

 ぷよってる!

 ……とかいう次元じゃなくて、段じゃね……?

 やばい!
 なんだこの身体は!

 キーアとしては貴族の標準体型だったらしいが、紀太からするとやばやばぷよんだ!


 あわあわ寝台から身体を起こしたキーアは、鏡を覗きこむ。

 ぶよんと出た腹と、ぷよってる腕と足が、ゆさゆさ揺れた。
 もっさもっさの黒髪を掻きあげてみたら、青い目だった。おお!
 しかしせっかくの透きとおる青の目が頬の肉とまぶたの肉に埋もれてる。よく見えん!
 顔はにきびで、ブツブツしてる。
 キーアの記憶では、油っこい食事ばっか食べてる!

 顔の造作は仕方ないよ。
 そこは文句を言われても困るけど。
 どうしようもない病気とか、怪我とかで運動ができないとか、色々ある人は別としてさ、健康なキーアとしては、ぶよぶよんは自分の頑張りで何とかできるあれだよね?

「……これはちょっと、悪役令息に同情するかもしれん……」

『これが伴侶(予定)です』って言われたら、ちょっといや。

 ……なんか、ごめん。

 これは、他のかっこいー男にきゃーきゃーしたくなる気持ちが、わかる。BLゲーム大すきだから!

 理解した!

 反省した!


「ヨニ、俺、大公に謁見申請は取りやめる。がんばって痩せてから、ネィトに謝るよ……」

 しょんぼり告げたキーアに、ヨニは目を剥いた。

「えぇ!? キーアおぼっちゃまがネィトさまに、あ、謝られるのですか!?」

「これはちょっと、あんまりだからさ」

 つまんでみた段々になったお腹が、ぶるぶるしてる!

 やばやばぶよん!

 これを何とか改善し『今までごめんね』の後に、伴侶(予定)を解消する!

 これで行こう!


「ヨニ、毎日の食事を俺の言うとおりにして! 野菜とたんぱく質重視で、炭水化物は適量、油は控えめに! よし、筋トレと有酸素運動がんばるぞー!」

 筋肉は裏切らない!

「キーアおぼっちゃま、安静第一ですぅ──!」

 叱られました。

 ……仕方がない。たんこぶが落ちつくまでは、おとなしくドローインでもやってよう。

 お腹をへこませたまま、腹式呼吸を繰りかえすんだよ。真面目にやると、きっついよ。お腹ぽっこりが治ったり、やせるらしいよ!

 がんばろー!
 おー!

 



 食生活の改善、これだけでも、かなりいける!

 キーアとしての記憶しかないなら大変だと思うが、紀太の記憶があるニューキーアなら、何の問題もない!

 というか、この世界の料理、油っぽすぎるよ……
 ふつうに調理したら痩せる!

「こんなあっさりした飯でいいんですか!」

 料理長兼御者兼厩番兼従僕なトマが仰け反ってた。

 びっくりなことに、キーアはちっちゃな邸に、おじいちゃん執事のヨニと、何でもやってくれるありがたいスーパー従僕トマの3人で暮らしてる。

 ……あれ?

 上位貴族の次期当主じゃなかったっけ?


「……え、俺、もしかしなくても、超絶冷遇されてる?」


 悪役令息な伴侶(予定)にないがしろにされる、ぷよぷよんなうえに、冷遇~?

 顔も名前もないモブに、厳しすぎない……?





しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。

【完結】悪役令息⁈異世界転生?したらいきなり婚約破棄されました。あれこれあったけど、こんな俺が元騎士団団長に執着&溺愛されるお話

さつき
BL
気づいたら誰かが俺に?怒っていた。 よくわからないからボーっとしていたら、何だかさらに怒鳴っていた。 「……。」 わけわからないので、とりあえず頭を下げその場を立ち去ったんだけど……。 前世、うっすら覚えてるけど名前もうろ覚え。 性別は、たぶん男で30代の看護師?だったはず。 こんな自分が、元第三騎士団団長に愛されるお話。 身長差、年齢差CP。 *ネーミングセンスはありません。 ネーミングセンスがないなりに、友人から名前の使用許可を頂いたり、某キングスゴニョゴニョのチャット友達が考案して頂いたかっこいい名前や、作者がお腹空いた時に飲んだり食べた物したものからキャラ名にしてます。 異世界に行ったら何がしたい?との作者の質問に答えて頂いた皆様のアイデアを元に、深夜テンションでかき上げた物語です。 ゆるゆる設定です。生温かい目か、甘々の目?で見ていただけるとうれしいです。 色々見逃して下さいm(_ _)m (2025/04/18) 短編から長期に切り替えました。 皆様 本当にありがとうございます❤️深謝❤️ 2025/5/10 第一弾完結 不定期更新

処理中です...