【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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えぇ!?

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「……お昼は?」

 ぽそりと、腰にくるいい声で聞いてくれるレォさまも、尊い。

 日常会話だよ。
『お昼は?』
 これが尊いのって、すごくない?

 さすがイケメン!
 さすが攻略対象!
 すべてがスチルクオリティ──!

 お金がなかったのか時間がなかったのか力尽きたのか『え、これスチルなの……!?』泣いちゃうクオリティがひとつもないよ!

 すべてが輝いてる!
 3次元、半端ない──!

 キーアは拝みたくなる手をあわてて止めた。

 拝みまくっていると、会話もできないよ、ごめんなさい!

 あわあわ体勢を立て直したキーアは、スーパー従僕特製のお弁当を掲げる。

「お弁当です! レォさまは?」

 長い青磁のまつげが、伏せられる。

「……従僕が用意してくれるから、一緒にどうかと、思って……」

 なぜ!?

 びっくりしすぎて、ほんとに跳んだ!

 ぴょこんってなった。

 青磁の瞳を瞬いたレォが、ちいさく笑う。


 なんですか、そのかわいー顔は!

 あぁあ、イケメン尊い──!

 じゃなくて、会話ね、会話。
 そう、お昼ご飯のお誘いでした!


「お誘い、とても、とても! うれしいのですが、あ、あの、俺も、従僕が作ってくれたお弁当がある、ので……」

 折角トマが朝早くから作ってくれたんだよ。
 食べないで帰るという選択肢は、ない!

 このうえないイケメンのお誘いでも、それはちょっと無理なのです……!

 キーアの答えに、ちょっと残念そうに眉をさげたレォは、首をかしげる。
 それだけで長い髪がさらりと揺れて、とろけるような香りをふりまいた。

 イケメン、まぶしすぎる……!


「……同席しても?」

 攻略対象が、名前も顔もないモブと同席!?
 いいんですか、そんなことして!

 こちらが『いやです』とかないよね!?
 だって髪さらっさらの、いー匂いする、3次元イケメンな攻略対象レォさまだよ!?

「も、勿論です!」

 レォが手を挙げると、さっとやってきた従僕の皆さんが、ベンチの前にさっとテーブルとテーブルクロスを設置し、ほかほか湯気のたつご飯を並べて、しゃっと帰っていった。

 プロだ。
 すげえ。

「食べる?」

「いえ、俺も、お弁当があるので!」

「ひとくちだけ」

 フォークで刺された、小さな赤い果実を差しだされた。

 ……え、これって、このまま食べるの?
 それって、『あーん』じゃないのかな?

 顔も名前もないモブが?
 きらっきらの攻略対象と?

 ないないないないない!

「……え、あの……」

「……だめ?」

 拗ねたみたいに、ちょっとまなじりが紅くて、唇がほんのり尖ってる。


 え、なんですか、その可愛い顔は──!

 スチル間違いない……!

 拝んだ。

 だって、こんなにイケメンなんだよ!?
 拝むのは条件反射だよ。反射!


「キーア」

 唇の前に、あまい香りのする果実が差しだされる。

 ほんのり赤いまなじりのレォの唇が開かれる。


「あーん」


 きゃ──────! 

 モブなのにごめんなさいぃいい!

 ……口を開けてしまいました。


 きゅ

 唇のなかに詰めこまれた赤い実から、あまい果汁が滴った。


「おいし?」

 火照る頬で頷いた。


「もう1個、食べる?」

 ぷるぷる首を振る。


「だめ」

 えぇ!?


「あーん」

 照れたみたいに、はにかむように笑って、ほんのり朱い頬で、紅い果実が唇へと運ばれる。


 かっこいぃいいい──!

 きゃ────!

 ひとしきりもだもだした後

 ………………口を開けてしまいました。


「おいし?」

 こくこくする。


「もう1個──」

「もう無理ですぅうう──!」

 燃える頬で泣いたキーアに、喉を鳴らしてレォが笑った。



 やわらかな笑い声と、やさしい微笑みは、間違いなくスチルだぁああ──!



 拝んだ。

 反射だから!

 



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