【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
42 / 209

舞踏会だよ!

しおりを挟む



「そ、それでも僕のすきな人が、きーちゃんだったら……?」

 うるうるの涙目で、きゅ、と小指を握られたキーアは、うなる。

 悪役令息なのに、主人公並みの攻撃力だよ!
 闘える悪役令息、つよい──!

「未来のことは分からないから、とりあえず大公立学園を卒業してから考えよう! 俺が無言の人形みたいになったらネィトにも申しわけないし」

「キーアおぼっちゃまが、どんなになられようと、お支えします──!」

「ずっと、お仕えします──!」

 ヨニが、トマが、涙の滲む瞳で、抱きしめてくれる。

「うわあん! ヨニ、トマ、ありがとう──!」

 皆で抱きあって泣きました。

「ぼ、ぼぼ僕も──!」

 ぴっとり背中にくっついてくるネィトが、かわいーです。

「じゃあ俺も──♡」

 どさくさで抱きしめてくるヤエも、かわいーです。



 ヤエさまが、ネィトの髪を可愛くシャギーを入れて切って、紫の目が見えるようにしてくれました!

 あの歯抜けみたいなハサミじゃなくてもシャギーを入れられるのって、すごいよね。さすがプロ!

 服飾デザイナーだけじゃなくて、仕立ても、スタイリングもできるなんて

「ヤエさま、すごい!」

 拍手したら、照れ照れらしい赤い頬で笑ってくれた。かわいー♡

 トリアーデ家の従僕さんが持ってきてくれたネィトの服のなかから、キーアの今日の装いにも似合う夜会服をヤエが選んでくれる。

「一緒の闇色もいいけど、紫の目が怖がられちゃうかもしれないから、今日は白でいってみよー! おそろい感を出すために、青を差し色に使おうかな」

 ヤエが選んだ服を、ヤエに着つけてもらう。
 ヤエがメイクしてスタイリングしてくれたら

 使用前 → 使用後 みたいな、びっくりするほどかわいー悪役令息が、できました!

「おお! かわいー!」

 皆で拍手したら、照れ照れらしいネィトが真っ赤になった。

「……きーちゃんと、一緒に舞踏会に行けるの、うれしい」

 ふわふわ紅い頬で笑ってくれる。

 こんなに可愛くて、しかも貴族最高峰のトリアーデ家のネィトを伴侶(予定)にできただなんて、ネィトの目が紫だったからしかありえないけど、キーア・キピア、すんごい大快挙だな!

 前のキーアを、初めて心から賞賛した。
 何にも頑張る気がない、どーなつ両手に持ってる姿しか記憶にないけど、強制力で仕方なかったのかもしれない。

 ふたりで、たんぽぽの綿毛を飛ばした記憶を、大切に守っていたみたいに。

 ネィトのことを、とても大事にしていたのだろう。

 だから、おそろいのもしゃもしゃの髪で。
 だから、誰に何を言われても、ネィトの行動を制限したりしなかった。

 その前のキーアの意志を継いで、ネィトには自由に恋をしてほしいと思う。

 紫の目、ただそれだけで忌まれてきたネィトは、ほんとうは、とても可愛くて、やさしい人だから。

 悪役令息なんかじゃない、ひとりの人間で。
 攻略対象たちから愛されるに足る人だと思うから。


「応援、するから」

 微笑んだら、ネィトがぷくりとふくれる。

「ぼ、僕は、きーちゃん一筋なんだから!」

 今の気もちはうれしいけど、これからどうなるか分からないからね!

「まあまあ。頭が♡で、きゃーきゃー♡ しちゃうんだろ? 俺もそうだから! お互い大目に見るということで、お願いします!」

「…………は…………?」

 あんぐりするネィトに告げる。

「俺、攻略対象、大すきだから! 反射で拝んじゃうから! ごめんね、ネィト!」

 事前に真実を告げておきました。

「えぇえぇええ──!」

 ネィトが、ちょっと泣きそうになってる。かわいい。

「ネィトさま、あの、キーアおぼっちゃまは、かっこいー顔面に、大変に弱いだけですので」

「ええ、それはもう、大変に」

 ヨニとトマがフォローしてくれてる。やさしい。ありがとう。

「じゃあ俺の芸術をお披露目にいこー!」

 拳を掲げるヤエが、元気だ。

 遠くから、おそるおそるこちらを伺っていたネィトのお兄さんティトが、手を挙げる。

「あ、あの、皆で行くなら、馬車と馬を用意する、けど……」

 キピア家の馬車、ちっちゃいし、馬も1頭で、ネィトも一緒に行けないからね。心配してくれた。やさしい。

「別人みたいなきーちゃんと、あんまり一緒にいたくなくて、大公殿下の舞踏会でしか会わなくて、馬車も一緒に乗らなくて、ごめんなさい」

 ネィトが、ちゃんと謝ってくれた。

「こちらこそ、踊ることさえしなくて、食べてばっかりで、無反応で無言になって、ごめんなさい」

 キーアも、ちゃんと謝った。

「お相子?」

「だな」

 ふたりで手を繋いで、笑う。


「ああ、ほんとうに、キーアおぼっちゃまが、おちいさかった頃に戻られたみたいです──!」

 ヨニが涙を拭って喜んでくれて、トマも涙ぐんで祝福してくれた。

「よかったですね、キーアおぼっちゃま!」

「これからどうなるかわからないけど、今のところはよかったね! じゃあ舞踏会に行って、ヤエさまの服を宣伝しよー!」

「おー!」

 拳を掲げるヤエさまが、やる気だ。




 トリアーデ家の真白な馬車を貸してくれて、夕闇の降りるなか皆で一緒に大公宮に向かいました!

「トリアーデ家ご子息、ネィト・トリアーデさま、キピア家次期当主、キーア・キピアさま、ご来臨!」

 歌うように告げてくれる大公宮の従僕さんに、かるく手をあげたキーアは、ふわりと馬車から降り立った。

 馬車から降りようとするネィトに、そっと手を差しだす。

「どうぞ」

「えへへ。ありがとう、きーちゃん」

 ふわふわ紅い頬で、キーアの手をきゅっと握ったネィトが馬車から降りてくる。



「キーア!」

 腰の砕けるような、あまい声がした。
 はちみつの髪が、ふわふわ揺れる。

「逢いたかった」

 とろけた笑顔が、キーアの手に繋がるネィトと、馬車から降りて後ろに立つヤエに、凍りつく笑顔に変わってゆく。


「……どうして逢うたびに、ちがう男を連れてるの……?」

 ルゥイ殿下のあまいはずの声が、大地をえぐってる。






しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。 種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。 ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! トェルとリィフェルの動画つくりました!  インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】もふもふ獣人転生

  *  ゆるゆ
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 もふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しいジゼの両片思い? なお話です。 本編、舞踏会編、完結しました! キャラ人気投票の上位のお話を更新しています。 リトとジゼの動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントなくてもどなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィル 『悪役令息の従者に転職しました』の透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が遊びにくる舞踏会編は、他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きしているので、お気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 ジゼの父ゲォルグ×家令長セバのお話が『ずっと、だいすきです』完結済みです。 ジゼが生まれるお話です。もしよかったらどうぞです! 第12回BL大賞さまで奨励賞をいただきました。 読んでくださった方、応援してくださった皆さまのおかげです。ほんとうにありがとうございました! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...