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びきびき
しおりを挟むキュァアァアアア──!
キーアとルゥイの手からあふれゆく輝く光に、広大なロデア大公立学園が包まれる。
清らかな光が降りそそいで、学園中が、きらきらしてる。
「わぁああ──!」
「すごい!」
「今日は何の日!?」
「魔界と天界が現れる日だ!」
ロデア大公立学園の最初の授業の日です。
2回も究極奥義で浄化された学園は、しばらく清浄だと思うな!
しかし、魔力を譲渡するだけだと思っていたのに、ルゥイの手からだけじゃなく、キーアの手からも、光魔法が出たっぽい……?
え、闇魔法が使える人は、光魔法が使えないんじゃなかったの……??
ぽかんとするキーアの肩で、ちいさな光が、ちらちら揺れる。
『できたよ』
えへんと胸を張ってる光さまが、かわいーです!
「……あ、あの、でも俺、死にそうです……」
よれよれですよ……!
今にも倒れそうだよ、というよりほぼ倒れてて、ルゥイが支えてくれてるよ……!
「ごめん、ルゥイ、重いよね」
立とうとするけど、足に力が入らない──!
「羽のように軽いよ、キーア」
……いくら今は成長途中とはいえ50キロくらいはあると思うから、10キロの米袋5個だよ? 羽みたいとかありえないよね? 倒れてきたら死ぬよね? なのに支えて微笑んでくれるルゥイが、間違いなく王子ポジなんだけど、台詞が、伴侶向けだよ!
攻略対象が、悪役令息の伴侶(予定)な顔も名前も声もないモブに、誤作動してる!
「キーアに負担をかけて、ほんとうに、ごめんなさい。叔父上に負けたくなかった僕のせいで、キーアが……!」
若葉の瞳が泣きだしそうに揺れるのに、ちいさな光が瞬いた。
『だいじょぶ。寝てたら回復』
なるほど。
極限まで搾りとられても、魔力は寝たら回復するみたいだよ。よかった。
「寝てたら治るって。だいじょうぶ」
泣きそうなルゥイの、はちみつの髪をなでなでした。
ぎゅうぎゅうしてくれて、はちみつの髪をふわふわ揺らして鼻をすするルゥイが、めちゃくちゃかわいいです。
光魔法の究極奥義を、学園の特別講義の初日で繰りだせるだなんて、ルゥイ、すごい!
「……うわあ、僕の立場、なくない?」
ハゥザ学園長が、がっかりしてる。
「……まさか、全属性……?」
講師の先生が、化け物を見る目になってる!
……あれ? ルゥイじゃなくて、こっちを見てる……?
「……闇魔法の究極奥義と、光魔法の究極奥義を連続で使うなんて、最終兵器なの?」
大魔法使いのフィリ先生まで、あんぐりしてる!
あれ? フィリ先生まで、こっちを見てるよ……!?
「ルゥイにも修了書、あげるよ」
ハゥザ学園長が、ルゥイにも修了書をくれるみたいです。
色々おかしい。
ありえない魔法2つのおかげで、へろへろになりました……
視界が霞むよ。
指も手足も動かしにくいよ。
ルゥイにもたれたままだよ、ごめんなさい!
立とうとするんだけど、足に力が入らない……!
「ごめん、ルゥイ」
「無理しないで、キーア。救護室まで運ぶから」
軽々と、おひめさま抱っこをしてくれようとするなんて、どんだけ王子なんですか──!
きゃ──!
あわあわしてたら、ちいさな身体が駆けてくる。
「きーちゃん!」
心配してくれたのだろう、泣きだしそうなネィトに微笑んだ。
「だいじょうぶ。寝てたら治るって」
「きーちゃんは闇属性なのに、光魔法を使わせるなんて、めちゃくちゃだよ! ひどい!」
ルゥイをにらみつけるネィトに、キーアのほうがびっくりする。
悪役令息は、主人公と一緒に、攻略対象に『きゃー♡ きゃー♡』する係じゃなかった?
「違うよ、ネィト、俺が自分から魔力をあげるって言ったんだ」
「でも──!」
「……キーアに負担を掛けたことを、心から申し訳なく思う。ここはやはり責任をとって、是非今すぐキーアを伴侶に──」
「はぁアァアぁあ──!?」
めちゃくちゃ可愛い悪役令息のおでこが、血管で、ビキビキです。
おかしい。
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