【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
81 / 209

らいばる?

しおりを挟む



 光の精霊さんを、ぎゅむぎゅむ抱っこして

「かーわーいー♡♡♡」

 至福にひたるキーアの隣で、遠い目になっていたルゥイが再起動した。

「……あ、あの……光の精霊さま、僕も魔法を使わせていただきたいのですが……」

 そうっと進言するルゥイを、光の瞳が振り向いた。

 ちいさな唇が、きゅっと尖る。


『……だっこ、は……?』

 おねだりまで、かわいーです!


「ルゥイ、光さまを抱っこ!」

 キーアの命に、ルゥイのはちみつの髪が、ぴょこんと揺れた。


「え、えぇ!? そ、そんな畏れ多い……!」

 なるほど。崇高なる精霊さまを、ぎゅむぎゅむ抱っこして『かわいー♡♡♡』とか不敬すぎて、ありえなさすぎて、ルゥイは遠い目になってたんだね、理解した!

 しかし!
 精霊さまがお求めなのは、だっこです!

 いかめしく、キーアは告げる。


「抱っこ!」


「わ、わかった!」

 おそるおそる、ルゥイがそっと手をのばす。

 ふわふわ赤い頬で、光さまがルゥイの腕におさまった。


「……か、かわいー……♡」

 きゅっと光さまを抱きしめるルゥイの若葉の瞳が、とろけてる。


 おぉお!
 主人公マェラのライバルが、爆誕したみたいだよ!

 ……あれ?

 マェラのライバル、悪役令息のネィトじゃなかった??





 瞬いたら、音が降る。

 ロデア大公立学園の白亜の建物が現れる。


「大丈夫か! きみは闇だろう、拒絶反応で死ぬこともあるんだぞ!」

 真っ青なフィリに揺さぶられたキーアは、血の気の引く音を聞きながら頭をさげる。


「ご、ごめんなさい……!」

「心配だからと手を出して、余計にひどいことになる場合があるんだよ。よく気をつけるように」

 ハゥザ学園長の訓戒に、キーアは深く頭をさげた。


「申し訳ありませんでした……! 何より、光の精霊さまに、ごめんなさい!」

 キーアの隣で、ちいさな光が、ちらちら揺れる。


『……びっくりしたけど……どーなつ、くれるって……』

 ぽわぽわな声が、降ってくる。


「勿論です! 家に帰ったらすぐにトマに揚げてもらいますね!」

 キーアの言葉に皆が首をかしげるなか、ハゥザは心配そうにルゥイとキーアの顔を覗きこむ。


「何ともないか? 体調は?」

「大丈夫です」

 微笑むルゥイの隣で、キーアは頭をさげる。

「ご心配をおかけして、ごめんなさい」

「いや、僕も簡単そうに言ってしまったから。すまなかった。……選ばれし者、精霊さんと相性がとてもよい者しか招かれることはない。……キーアとルゥイなら、もしかしたらと思った。危険にさらすなんて、学園長失格だ」

 頭をさげるハゥザなんて、初めて見たよ!

 あわあわキーアは首を振る。

「そんな! 俺が勝手にルゥイにさわっちゃったからです。ルゥイにも、ごめんなさい!」

 深々さげた頭を、ルゥイのおっきな手がなでなでしてくれる。


「キーアが来てくれたから、光の精霊さまとほんのすこし交流できたんだよ。ありがとう、キーア」

 微笑んでくれるルゥイが、はちみつみたいに、あまあまです。


「お、逢えたみたいだね。魔法を使わせてもらってごらん」

 微笑むフィリに、ルゥイは照れくさそうな朱いまなじりで呼びかける。


「光の精霊さま、もしよろしければ、私、ルゥイ・トゥナ・ロデアに魔法を使わせていただけませんでしょうか? どうぞよろしくお願いもうしあげます」

 うやうやしく敬礼するルゥイの肩で、まばゆい光がきらめいた。


『まほう? 何を使いたい?』

「ルゥイさま、何の魔法をお使いになりたいですか?」

 通訳してみたら、ルゥイの赤い頬が、ぷくりとふくれる。


「ルゥイ。呼びすてて」

 皆いるのに!
 思ったけれど、さっきも皆の前で『ルゥイ』呼んじゃったのでした、ごめんなさい!


「……え、えと、ルゥイ、何の魔法を使いたい?」

 ちっちゃな声で聞いてみたら、ルゥイがとろけて笑う。


「さっき叔父上が使ったの」

 光魔法の究極奥義ですね。

「いやいやいやいや、無理でしょう!」

 首を振るキーアの肩で、光が揺れる。

『できるよ』

「できるんですか!」

 BLゲームでは、主人公だけが使える究極の浄化魔法で、ルゥイには使えなかったはずだけど、やっぱりゲームの世界とすこし違うのかな……?

 顔も名前も声もないモブに、顔も名前も声もあるから?

 首をかしげるキーアのまえで、ちいさな光が、ちらちら揺れた。


『るー、魔力足りない。きー、あげて?』

「え、それは勿論大丈夫ですが、あの、俺、光魔法の適性なくて──」

『適性、できたよ。俺に逢ったから』

 えぇ……!?

 のけぞる暇もなく、ルゥイとキーアのまえに光の魔法陣が現れる。


「……え、これ、もしかして……ほんと、に……?」

 見開かれた若葉の瞳の奥に、光が燈る。


「わあ……!」

 ルゥイとキーアの身体から、まばゆい光が舞いあがる。


 身体の底から魔力を絞りとられる感覚に、キーアの意識が霞んでゆく。

 そうだよ、さっきも闇魔法で魔界を呼んじゃったよ!?
 その次に光魔法の究極奥義のお手伝いとか無理じゃない?


「キーア……!」

 倒れそうなキーアを、ルゥイの腕が支えてくれる。


 重なるルゥイとキーアの手から、光の魔法が、あふれてく。







しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。

【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。 種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。 ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! トェルとリィフェルの動画つくりました!  インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...