【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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完全なる

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 キーアが見あげる最愛の推しは、背が、高い。

 平面的な2次元でうっとりするのと、3次元で見あげるのとでは存在感がまるで違う。
 盛りあがる筋肉は使いこまれ、しなやかにたくましい腰を彩った。

 いい匂いがする。

 うっとりしたキーアが、あふれそうな鼻血が出ないよう鼻を押さえながら拝むのに、ゼァル将軍が瞬いた。


「どうした、気分がわるいのか?」

 うずくまっているように見えたみたいです。

 いやもう、動悸がね!
 頬は熱いし、目は潤むし、うっとりするし、どう見ても風邪で高熱が出てるっぽいよね!

 しかし、3次元の推し、尊い──!

 でっかい。
 凛々しい。
 たくましい。

 こう、盛りあがる筋肉が人類の理想の曲線をなめらかにえがいて、ふるいつきたくなるたくましい腰が──!

 きゃ──!


 もだもだするキーアに、何かを察したらしいネィトが跳びあがる。

「きーちゃん!」

 ぎゅう。

 うしろから抱っこされたキーアは、荒ぶる息を整えた。

 やばい。
 最愛の推しに目がくらんで、欲情しそうでした──!

 朝から!
 いや、朝だからか。
 いやいやいや、だめだから!
 校門だから!
 皆いるから!


「………………え…………?」

 ルゥイが茫然としてる。

「……まさか、キーアのこのみって……」

 レォの頬が引きつって、ガダ先輩が誇らしげに胸を張る。

「ははははは! 見たか、レォ・レザイ! 筋肉の勝利だ!」


 え、いや、レォもしっかり筋肉ついてるよ!

 ガチムチなガダ先輩とは違うけど、とってもきれいだと思います!

 親指をたてるキーアに、ちょっとうれしそうにしたレォは、眉をさげた。


「キーアは、ああいうのが、このみなの?」

『ああいうの』
 青磁の切れ長の目を流されたゼァル将軍が、引きつってる。


「ロデア大公国で、いちばんかっこいーと思います!」

 拳を握って叫んでた。


「はァア──!?」

 ハゥザ学園長と、ルゥイが、激おこみたいです。

 あわあわキーアは首を振る。


「え、えと、ハゥザ学園長は、ロデア大公国で一番きれいだと思います。ルゥイも!」

 にこにこしてみたキーアに、ルゥイのはちみつの眉が下がる。


「……もしかしなくても、キーアのこのみは、あれなの……?」

『あれ』
 若葉の瞳で刺されたゼァル将軍が、引きつってる。


「将軍、とってもかっこいーって伺ってて、お目にかかれて、めちゃくちゃ光栄です!」

 ふわふわ熱い頬で、キーアは腰を折る。


「キピア家次期当主、キーア・キピアでございます、ゼァル・ロデア大公兄殿下」

 キーアの最愛の推し、ゼァル将軍は、大公殿下の兄君なんだよ。

 前キーアの知識によると、ロデア大公国で1番かっこいいゼァル将軍が第1子、2番目に顔がいい大公殿下が第2子、1番顔がいいハゥザ殿下が第3子、ネィトのおかあさん(男)が第4子で、とってもおきれいだよ。ネィトによく似てる。
 大公殿下の第一子がルゥイね。
 すんごい家族だよね。輝きすぎてる。

 かるく手を挙げて、敬礼を解くよう促してくれたゼァルは、キーアの服の裾をぎゅっと握るネィトに目を瞠る。


「……きみは……」

「お久しぶりです、ゼァル伯父上。ネィト・トリアーデです」

 紫の目で、まっすぐ顔をあげて微笑むネィトに、息をのんだゼァルの瞳が、さまよった。


「……髪を、あげた、んだな」

「はい」

「…………そう、か……」

 うつむいたゼァルも、紫の瞳がこわいのかもしれない。

 キーアはネィトを守るように前に出る。


「紫の瞳にまつわる噂は、迷信です。俺は、ネィトの瞳が、世界でいちばんきれいだと思います」

 ゼァルの鋼の瞳が見開かれ、ほんのり潤む紫苑の瞳でネィトがキーアの手を握る。


「きーちゃん、ありがとう」

 きゅう

 抱きついてくるネィトを抱きとめた。

 伴侶(予定)なので!


「……きみは、たしか……」

 ゼァル将軍の目が、何かを思いだそうとするように細くなる。

 お目にかかったこと、あるのかな? もしくはネィトの伴侶(予定)って誰なんだろうと、遠くからご覧になったことが?

 前のキーアとは、かなり別人になってます。


「僕の伴侶です!」

 胸を張るネィトに、キーアは補足する。


「(予定)です」

 未定だよ。

 攻略対象に『きゃー♡ きゃー♡』していいんだよ!
 一緒に『きゃー♡ きゃー♡』しようよ! じゃない、『きゃー♡ きゃー♡』させてください、お願いします。

 ちょっともう最愛の推しの3次元とか、拝んでも拝んでも拝み足りないよ──!


 もだもだしちゃいそうなキーアとネィトを見つめるゼァルの瞳が細くなる。


「そうか」

 微笑んだゼァルの瞳は、子どもたちの恋を見守る大人な目だ。



 キーアは、完全なる恋愛対象外のようです。


 …………………………。


 …………よかった、のか、な…………?






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