【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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カラカラです

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 たりたり鼻血のあふれるキーアの鼻を、闇さまが、うんしょ、うんしょと押さえてくれる。

『きー、僕が、たすける!』

 かわいい……!

 いやしだ。

 抱っこしたい。

 思わず手を伸ばしたキーアの頭が光る。


『きー、闇を、はがすな! 落ちつけ! 血の管が切れてるぞ!』

 頭のうえに出てきた光さまも、闇さまと一緒になって、鼻を押さえてくれました。

 やさしい!


『あーもーしょーがないなー。冷たくしてあげるからね』

 冷たい水の塊を出して、闇さまと光さまと一緒に冷やしてくれる水さまが、によによキーアの顔を覗きこむ。

『やらしーこと考えて、興奮しちゃったんでしょ』

 ちょこっとお尻が浮くほど跳びあがったキーアが、ぶんぶん首を振る。

「そ、そそそそそそんな畏れ多い!」

 あわあわするキーアの鼻を、光さまと闇さまが押さえてくれる。


『うごくな、きー!』

『安静!』

 はー、鼻に精霊さまが2精もくっついてくれるなんて、かわいー!

 もだもだしてるキーアの肩を、地さまがたたいた。


『ありゃあ、脈ねーな、きー』

 ぽんぽん、地さまが慰めてくれる。


『元気だせ、きー! たいてい、本命には振られるもんだよ!』

 いつも元気で可愛い炎さまが、真実を語ってくれました……

 せつない。


『きーなら、一発逆転も、できるかもしれないぞ? がんばれ、きー!』

 風さまが、キーアの頭のうえで、ぴょんぴょんしてる。

 かわいい。
 励ましを、ありがとう!


 髪で遊ばれても、ぴょんぴょんされても、精霊さまは体重がないみたいで、もしょもしょするだけだよ。

 やさしい精霊さまたちをぽふぽふ抱っこしたキーアは、頭をさげた。


「……ありがとうございます。
 でも、俺、ネィトの伴侶(予定)だし。伴侶(予定)な間は、裏切りたくないなって思うんです」

 ぽそぽそ呟いたら、光さまがちいさな高い鼻を鳴らす。


『遠慮してる間に、他の誰かと伴侶になって、死んでしまうぞ。人間の命は短いのだぞ!』

 心配そうに光の瞳が、キーアの目を覗きこんだ。


『間違ったら、ちゃんと謝って、心にまっすぐに生きてもよいと思うぞ』


『浮気って、よくないけど。ずっとひとりを大すきでいられたらいいけど。出逢っちゃうこと、あるみたいだよね。いっぱいお話があるよ!』

 炎さまが、うむうむしてる。


『ちゃんと謝って、お別れしてから、乗り換えだな』

 地さまも、うむうむしてる。


『同時進行、だめ、絶対!』

 水さまが、おこです。


『そうだぞ、きー! ちゃんとお別れしたら、風のように、自由に!』

 張りきった風さまのおかげで、髪がびゅーびゅーになりました……



「うわ! な、なんだ? 嵐か!?」

 宿屋の階下で水の入った桶と白い布をもらってきてくれたゼァルが、のけぞってる。


『おぉう』

 あわあわ風さまが、力をおさめてくれました。


『……きー、ねーと、おわかれ、しちゃう……?』

 しょんぼり肩を落とす闇さまに、キーアはちいさく笑う。


「闇さまは、ネィトがすきですか」

 もじもじした闇さまが、キーアを見あげる。


『……僕の力、使ってくれる人間、僕に魔力くれる人間、すくないの。……皆、闇、こわいっていじめられたりして……僕といっしょ。……だから、しあわせに、なってほしいなって……』

 見あげてくれる闇の瞳が、ほんのり潤んだ。


「闇さまは、おやさしいですね」

 ゼァルに聞こえないよう、小声でささやいて、ちいさな闇さまを抱っこした。


 ちょっと目を見開いたゼァルは、不思議な動きをしたように見えたかもしれないキーアに、何も言わなかった。

 冷たい水に浸した白い布を絞ってくれる。


「ほら、ちゃんと横になりなさい、キーア」

 ゼァル将軍が、最愛の推しが、名を呼んでくれましたぁあ──!

 はー♡ 至福♡

『紀太』は無理だから、『きーちゃん』とか、呼んでくれませんかとか、言ったらいけないのは分かってる!


 おとなしくキーアは寝台に横になる。


 ゼァルがすさまじい握力で絞ってくれたために、カラカラになった白い布を鼻のうえにのせてくれました。

 やさしい。






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