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闇の森
しおりを挟む「……だめだそうです……」
しょんぼり肩を落とすキーアの頭のうえで、光さまが腕を組む。
わずかの間、目を閉じた光さまの身体から、やわらかな光があふれて、すぐに消えた。
明いたのは、光の瞳だ。
『……むぅ。まあ、それほどの危険はないと思う。できるところまで、がんばれ』
光さまが、ちっちゃな手で、頭をぽふぽふしてくれました。
『ぼ、僕、きー、守るよ!』
きゅうっと抱きついてくれる闇さまに、顔が溶ける。
「俺も、闇さまを守れるようになりたいです」
ちっちゃいおでこに、おでこをくっつけて、笑う。
ぽわぽわ赤い頬で、闇の髪をふわふわ揺らして笑ってくれる闇さまが、とびきり、かわいーです!
ルゥイとキーアを先頭に、広大な森の担当区域までは素早く6人で固まって進み、到着したら3組に分かれて詳細に探索することになりました!
闇の森と呼ばれるだけあって、濃い緑の葉が重なるように陽の光を遮り、やわらかな闇が降りてくる。
「落ちつきますね、闇さま」
『きー、も?』
闇の瞳が、瞬いた。
「闇は、やすらぎです」
にこにこするキーアに、泣きだしそうに瞳を揺らした闇さまが、ぎゅうぎゅうキーアに抱きついた。
ちっちゃな闇さまを、包みこむように抱きしめる。
こわくない、忌まわしくない、やさしい、かわいい、やすらぎの闇さまを。
「闇さまは、俺が、守るから」
とろけて笑ったキーアを、闇さまが、うるうるの目で見あげてくれる。
きゃ──!
かわい──!
もだもだしたキーアは、隣にルゥイがいたことを思いだして飛びあがる。
肩を揺らしたルゥイが笑ってる。
「……きょ、挙動不審でごめんなさい……」
「キーアがとってもかわいいから、さらわれちゃわないか、心配だよ」
ルゥイが笑って、手をひいてくれる。
「はぐれないように、手を繋いでおこうね。何か見つけたら、すぐに教えて」
「はい!」
闇さまを頭にのっけたキーアは、ルゥイと手を繋いで闇の森を進む。
つながる指が、あったかくて、ルゥイのいい匂いがして、鼓動がとくりと音をたてた。
踏みしめる森の土はやわらかで、枯れ葉の降り積もる大地に、足が沈む。
まだ学生だから、と割りあてられた担当区域はロデア大公国側だ。最も危険な、最もネメド王国に近い区域はゼァル将軍が担当してくれている。
もしゃもしゃしたと思ったら、闇さまと光さまが仲良くキーアの頭のうえで座ってる。かわいい。
風さまが楽しそうに隣でふよふよして、肩に水さまと地さまをのせて、くるくる飛び回る炎さまと、手をひいてくれるルゥイと一緒に、キーアは森を進んだ。
まだ闇の森の辺縁だ。
担当区域も、それほど深くまで入りこまない。
それでも、足を進めるたび、闇が深くなる。
見慣れた樹々が、見慣れぬ樹々へ。
愛らしい花々が、奇怪な花々へ。
胸を満たす清々しい森の大気が、禍々しい瘴気へと変わってゆく。
「皆、気をつけて」
ルゥイの声に緊迫が滲んで、キーアも皆もうなずいた。
胸をおしひしぐ、腐ったような、吸いこむだけで苦しくなる瘴気に、キーアは初めてふれた。
「……これ、が……瘴気……?」
凛々しい眉をひそめ、ルゥイはうなずいた。
「あまり吸わないように気をつけて。取りこみ過ぎると、魔物化する」
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