【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ

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ひるがえるてのひら




 あまりのクヒヤのヤンデレぶりに、ぷるぷるして抱きあうルティと両親が不憫になったらしい。

 カティがあまえるように、ちょこんとクヒヤの袖を引いた。

「たまの里帰りくらい、ゆるしてほしいな。一緒に帰ろう、クヒヤ♡」

 きゅるきゅるぴんくの瞳に見あげられたクヒヤが瞬いて、さきほどのおどろおどろしさが幻だったかのように、爽やかに微笑んだ。

「あ、ああ、そういう意味か。ごめんね、カティ。カティを奪われるかと思うとちょっと暴走しちゃって」

 ドン引くのかと思ったカティは、うっとりしてる……!


「そういうクヒヤ大すき♡ クヒヤの愛に包まれてる感じがする♡」

「カティ♡」

 ぎゅうぎゅうカティを抱きしめたクヒヤが、とろけるように微笑んだ。


「かわいすぎるカティを追いかけて有象無象が来そうだから、しっかり国境封鎖するからね」

 イイ笑顔だ!


「絶対、カティを守るから」

 カティの細い腰を抱きよせるクヒヤの目が、本気すぎてこわい。


「クヒヤ♡ だいすき♡」

 そんなクヒヤを見あげるカティの瞳が、うっとりしてる……!



 …………………………。


 ルティと両親は顔をみあわせて、こっくりうなずいた。


 心配しなくても、ふたりでめちゃくちゃしあわせになってくれそうです。

 よかった!
 
 と思うよ。心配だけど!

 ものすごく、心配だけど……!







「元気でね……!」

「しあわせに……!」

 カティの乗った白い馬車が見えなくなるまで、ずっと、ずっと、ルティは手をふった。

 生まれる前からずっと一緒だったカティと離れるのは、身を裂かれるようにさみしくても、それでもカティがしあわせになってくれるなら、ルティもしあわせなはずだった。

 遠くから、カティのさいわいを祈って、しずかにトトと暮らすはずだったのに。


「カティは!?」

「カティがいない!」

「カティ──!」

 大恐慌が沸き起こった。

 下町も、ココ王立学園も、天変地異が起きたみたいに。


「よかった、カティ、いなくなるなんて、嘘だよね」

「ああ、カティ! いた!」

「カティ──!」

 駆け寄ってくる、きらきら攻略対象たちに潰されそうになったのは、ルティだ。


「ちがう、俺はルティだ! カティじゃない!」


 叫んだら、皆が眉をしかめる。


「カティは!?」

「どこに行ったんだ!?」

 血走った目で、唾を飛ばして、がなられた。

 叫ぶ圧に、あまりの必死さに、ルティの指が、わずかにふるえる。


「……トロテ王国に。クヒヤ殿下と伴侶になるそうです」

 事実を告げたら、誰もが衝撃に固まった。

 さらさらと崩れ落ちてゆく皆が膝をつく。


「そんな、カティ……!」

「僕を置いてゆくなんて……!」

「今からでも追いかけよう──!」

 皆が一斉に立ちあがるので、ルティは告げる。


「……というのを察したらしいクヒヤ殿下が、国境を封鎖すると仰っていました……」

 とてもイイ笑顔で。


「そんな──!」

 泣き崩れた皆が、涙と鼻水の顔をあげる。


「……いるじゃないか、カティが、そこに……」


 皆の目が、ルティを向いた。

 とても、とても、厭な予感がする。



「だから俺はルティで、顔は同じでも中身は全然ちがう──」



「ああ、ルティ!」

「今まできみの魅力に気づかなかったなんて、俺はなんてあんぽんたんだったんだ!」

「一生大事にするよ、ルティ」



 すんごい掌返し、きた…………!







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