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にげるよ
「おかあさん、おとうさん、親不孝をおゆるしください」
深く深く頭をさげるルティに、両親は目を剥いた。
夕闇の降りた薄暗い部屋で、ぴんくの髪の子どもがしおらしく両手を前に頭をさげたらびっくりするよな。わかる。
「ど、どうしたんだ、ルティ!」
心配してくれる両親をありがたく思いながら、ルティは考えた計画を話した。
「第二王子殿下の伴侶にさせられそうだから、髪と目の色を魔法で変えて、逃げる。
かあちゃんと、とうちゃんはカティに庇護を求めてトロテ王国へ逃げてくれ。国境封鎖はココ王国の王侯貴族を通さないだけだ、平民は行ける!」
カティの存在に、今日ほど感謝したことはなかった。
たぶん逃げた両親を追い払うような真似は、カティもクヒヤ殿下もしないと思う。たぶん!
「え、王配、断っちゃうの?」
両親が、ぽかんとしてる。
「第二王子だから、王配は無理」
説明した。
皆、王子の伴侶っていうと王配って思うんだよ、ちがうから!
優秀な王太子がいると、第二王子はいるんだか、いないんだかよくわからない人だから。
その伴侶はもっと存在が、どうでもいいから!
「いやでも、王子だよ?」
「すごくない?」
「カティのおかげで忘れがちだけど、俺ら平民だぜ?」
両親が期待で、きらきらしてる!
BLゲームの鉄板だが、平民が王子の伴侶になるのは確かにすごいかもしれん。
しかしだ。
よく考えてくれ。
「見てるのがカティだけでも?」
しずかな、しずかな、憤りのにじむルティの声に、両親は硬直した。
「そ、そうだったな」
「ごめん、ルティ」
しおらしく謝ってくれる両親に、ほっと息をつく。
これで『いや王子の伴侶だぞ! なっておけ!』っていう両親だと泣いちゃうよ。
「わかってくれたらいいんだ。
かあちゃん、とうちゃんは、一刻も早くトロテに逃げてくれ」
「ルティはどうするんだ……!」
真っ青な両親に、ルティは微笑む。
「ドディア帝国側の国境に行ってみる。
もし『迷惑だ、顔も見たくない』言われたら、俺もカティとクヒヤ殿下にすがろうかなと」
全力で頼ってる。
ごめんよ、カティ、クヒヤ殿下──!
カティへの執愛がおかしなほうに凝り固まったコタ殿下が、逃げるルティをおとなしく放してくれるのか、かなり心もとない。
しかもカティの代わりにルティを追いかけているのは、ココ王国の中枢を担う王侯貴族の子息たちだ。
強権を発動して、両親を捕縛してルティに言うことを聞かせるとか絶対やりそうなので、ルティが逃げる前にまず両親を逃がす!
そのあとルティも国境に行こうと思っているが、クヒヤ殿下みたいに国境封鎖だの色々繰りだしてくるかもしれない。
強固な庇護を発動してくれそうなのは、ふたりしか思いつかない。
迷惑をかけてしまうのは非常に心苦しいけれど、そこはちょっとおまけしてほしい。
「元々は、カティのせいだから──!」
叫んだら、ちょっとすっきりした。
わるぎはなくてもね。
ハーレム造成はだめだと思うな。うん。
「ああ、うん、ルティはいつもとばっちりで……」
「今度のは特大だな」
眉をさげた両親が、抱きしめてくれる。
「ルティの無事を祈ってる」
「がんばるんだよ」
「こっちは気にするな」
「即行逃げる!」
背を叩いて、笑ってくれた。
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