【完結】オメガの俺に、推しの愛が届かない

  *  ゆるゆ

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おそうじ

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 専門外なのは、わかってる!
 でも俺には、シフィしか頼れる人……精霊さんがいないんだよー!

 頼れる人間はゼロだったね。あんの親父は、まちがいなくゼロだね!


「そこをなんとか! シフィさま!」

 祈ってみた。

 ちっちゃい小人さんみたいな、青い髪に青い瞳の精霊さんになったシフィの小鼻がふくらんでる。

『仕方ないなあ』

 えへんと胸を張ったシフィが、鍵穴にちいさな指を入れた。
 鍵がかかっているところを、強い風を吹かせて押しあげてくれる。

 カチリ

 ちょいちょいと開けてくれました。
 さすが精霊さん! チートだ!

「おぉお! さすがシフィさま!」

 胸を張りすぎたシフィが、反り返ってる。



 俺の異世界転生特典は、きっと風の精霊さんシフィと仲よくなって、加護をもらえたことだと思う。

 生まれて間もない、力の弱い、ちっちゃい精霊さんは、精霊界なら生きてゆけるけれど、間違って人間界に来ちゃったりすると、人間の召喚に呼ばれるほどおっきくないから、人間の魔力の供給を受けられなくて、消えてしまうこともあるらしい。

 精霊界は魔素に満ちてるけど、人間界には魔素が少なくて、人間からの魔力供給が、いちばんのご飯になるらしい。ご飯を食べられないと、儚くなってしまう。

 よわい子は淘汰されちゃう、きびしい世界だ。せつない……!

 召喚された大きな風の精霊さんにくっついて来てしまって、すんごい魔法で飛ばされて、帰り道がわからなくなり行き倒れていたシフィを貧民街で見つけて、魔力を分けてあげてから、ずっと仲よくしてくれる。やさしい。

 そうそう、俺、魔力も、けっこうあるんだよ。
 悪役令息だからかな?

 ……っていうか、ほんとに悪役令息なの? 俺?

 主人公の邪魔をするべき?
 いやいやいや、お話の展開より保身が大事だから!


 とりあえず主人公には、あんまり近づかないのがよいと思う。攻略対象にも。
 最愛の推しの傍で応援できないのは、とっても残念だけど!

 めちゃくちゃ残念だけど……!

 ジークさまに、もう逢えないとか、泣いちゃうけど……!

 でも推しは遠くから、たてまつるものなので、よいのです。

 ……涙目だけど。
 近くにいきたいけど。
 ふんふんしたいけど……!

 オメガだからね。
 あの、とろけそうな香りを、もう一度──!
 思っちゃうけど……!

 我慢だ、俺──!


 というわけで、目の前の扉を開けてみた。


 ギィイイイ


 ほこりとカビの匂いがする。

「……おぉう……」

 なんかもう灰色に覆われた部屋だよ!
 窓には、ほこりまみれのカーテンがぶら下がって、外の陽のひかりを遮っていた。

 部屋は、どんより暗い。
 ということは、穴がないということだよ。やった──!

 見あげたら、天井にも穴は開いていなかった。

 ほこりまみれの天蓋つきの寝台と、机と椅子があるっぽい。
 草は生えてないっぽい。
 暗いし、ほこりまみれだからな。

「おお! ここを俺の部屋にしよう! この部屋だけ掃除する!」

『がんばってー』

 シフィが、ちいさな手をふってくれる。
 かわいい。
 とか言ってる場合じゃない。


「いやいやいや、手伝ってよ。風の精霊さま。ほこりを、びゅーんと吹き飛ばして!」

『さっきは鍵も開けてあげたじゃん! 別料金だよ!』

 シフィが、ぷりぷりしてるので、首を差しだしてみた。


「どうぞ! 俺の魔力を、すきなだけ吸えばいいさ!」

『……いつも吸い放題だから、あんまり、ありがたみがない』

「ひどい!」

 すねる俺の首にあるらしい魔脈から、俺の魔力を、シフィが、ちゅうちゅうしてる。

 かわいい。


 青い髪を撫でたら、シフィが、ふわふわ笑う。

 かわいい……!


『……僕、力が弱くて、ルゼをあんまり守ってあげられなくて、ごめんね』

 ちいさな、消えてしまいそうにちいさな声に、首をふる。


「シフィがいてくれるから、俺は元気に、ひねくれずに、楽しく生きていけるんだよ。ほんとにありがとう」

 ぎゅ

 抱きしめたら、きらきらして、笑ってくれる。


「快適な幽霊屋敷生活のために、お掃除、がんばるぞー!」

 ………………。


「……おーは? いっしょに拳をつきあげようよ」


『ちょっと、いや』


 シフィが、とっても、正直です!







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