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お約束のぴんくな髪の主人公
しおりを挟むアルフォリアのエスコートという謎の待遇で、悪役の俺が、入学式にゆくことになりました……?
え、これ、主人公ポジじゃない?
大丈夫、俺?
めちゃくちゃ主人公から怨み買わない?
びくびくしてたら、なんか来た!
「わああ! 遅刻、遅刻──!」
てへ♡ 効果音がつきそうな感じで、食パンをくわえて走ってくる、ぴんくの髪の美少年に、俺は仰け反った。
いや、ゲームの時も『いつの時代だよ!』って仰け反ったけど、3次元で見ると、食パンくわえて走ってくる美少年の違和感が、凄まじすぎる────!!
「わあ!」
ど────ん!!
音がするほど、激しくぶつかられた俺は、吹き飛んだ。
ちっちゃいからな……!
ちっちゃい仲間だろう主人公より、更にちっちゃい。
俺、ちっちゃくて、威張り散らして、いじわるなんだよ。
しかも、頭弱くて、魔力最低、口だけきゃんきゃん。
さらに、元王子。
今、平民。
これぞ残念な悪役!
「ご、ごめんなさい、大丈夫?」
ぴんくの髪が、さらさら揺れて、吹っ飛んだ俺へと手を伸ばしてくれる。
さすが、心やさしい主人公!
手を取ろうとしたら、ドスの利いた声が降ってきた。
「……お前さ、悪役の癖に、何、人の出会いイベント掻っ攫ってんだよ。
ふざけんなよ、モブ」
…………………………。
心やさしくなかったね。
凍えた俺が、出した手を引っ込めようとした時だった。
主人公じゃなく、アルフォリアが俺の手を握る。
「大丈夫? リユィ」
ぎゅ、と手を握って引っ張って、倒れた俺を立たせてくれ、ぱふぱふ、俺のお尻についた泥を払ってくれた。
「え、王子がそんなことしなくても!」
ぴんくな瞳を見開いた主人公は、俺からアルフォリアを引き離す。
「僕も痛かったですー♡」
目をうるうるさせる主人公は、主人公チートで、とても可愛い。
出会いイベントなら、アルフォリアの目も♡になるはずだ。
すきすきメーターは、イベントで爆上がりする。
イベントが起きた = すきすきメーター急上昇
アルフォリアも、主人公のことを想うようになるんだろうな。
主人公が、誰を選ぶにしても。
主人公に選ばれたいと望むようになるんだろう。
ゲームの世界では、当たり前のこと。
でも、リアルになったら、胸が痛い。
俺は、ざまぁされて、酷いとモブレされて快楽堕ちしちゃう悪役で。
アルフォリアは、攻略対象者のひとり。
ゲームのシナリオ通りに進むなら、そこに、俺たちの意志とか、気持ちとかは、あるのかな。
強制力だけで造られた世界なら、中身はきっと、空っぽだ。
俺の気持ちも。
きっと、なかったことにされる。
思ったら、また泣きそうで、慌てて目を擦った。
「泣かないで。
擦ったら腫れちゃうよ。ね?」
アルフォリアが、俺の眦をやさしく撫でてくれる。
「……え、ちょ、殿下……?」
茫然とする主人公を見るアルフォリアの碧の瞳は、氷だった。
「私は職業柄、耳がいいんだ。
とてもね」
青くなった主人公が、引き攣った笑みを浮かべる。
「や、やだなあ、冗談……」
慌てて手を振る主人公を、アルフォリアが見ることは、なかった。
「行こう、リユィ。
泥がついちゃったね。後で制服を届けさせよう」
「え、大丈夫だよ、洗うから!」
アルフォリアのエスコートが再開されて、仰け反る俺に、主人公の殺人光線が突き刺さる。
「なんっで主人公を置いて、悪役をエスコートする訳!?
アルフォリア、どうしちゃったの!?」
叫んだ主人公に、アルフォリアは唇の端をあげた。
答えることなく、俺と一緒に入学式が行われる行動へと歩を進める。
「主人公を無視するなんて、ふっざけんな────!!」
拳を握り締めて叫ぶ、ぴんく髪の主人公は、歪んだ顔でも、可愛かった。
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