【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  ゆるゆ

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久方ぶりの学食だよ!

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 皆で、学食に行くことになった。

 理由は簡単、ずらす時間がないからだ!
 ご飯、大事!


 俺たちの周りには、ブラックホールのように人がいなくなり、その周りに人だかりができるという謎現象に見舞われる。

「日替わり定食がおすすめだよ」

「しょうゆラーメンがいいぞ」

「僕はバゲットサンド!」

 にこにこするアルフォリア、ジェミ、キーザには、昨日の最低クソ野郎共の雰囲気は、微塵もない。


「…………どゆこと?」

「ほらリユィ、早く選ばないと、お昼休み終わっちゃうよ」

 トエに促された俺は、日本の学食っぽいメニューの食券販売機の前で、固まった。


「…………俺、一文無しだった──……!」

 お金、ない。

 魔界でも、お金、使ったことない。
 人界のお金なんて、もっと知らない。

 真っ白になる俺に、トエが500円玉を渡してくれる。

 めちゃくちゃジャパンな500円玉だった。
 さすが日本のBLゲーム!


「貸しね」

「あ、ありがとう……!」

 頭を下げた俺は、500円玉を券売機に入れて、オムライスのボタンを押す。


「ぷくくくく!」

 隣でトエが笑って、ふくれた俺は、出て来た小さな券を握り締めた。


「め、めちゃくちゃ美味いんだからな!」

「あーもー、リユィ、かわいー!」

 ぎゅう、と抱きつかれた俺は、ふくれた頬がちょっと熱くなるのを感じつつ、列に並ぶ。


「うお! 元魔王の元王子、真面目に列に並んでるぞ!」

「食券買ってたぞ!」

「それ以前に文無しだったぞ!」

「うわ! ちっちぇえ!」

「ちっちぇえ言うな!」

 ぷくりと頬を膨らませて、拳を握る俺に降るのは、やっぱり笑顔だ。


「角が、ちょこんてしてる!」

「最低階級の黒リボンが可愛く見える!」

「うそ、オムライス頼んでる──!」

「かわい────!!」


 ………………。

 そ、そう?

 えへへ。

 食堂の恰幅のよいコックさんに、食券を渡そうとした時だった。


「あ、ごっめえん!」

 ど────ん!!!

 衝撃とともに、吹っ飛ばされた。


「日替わり定食、お願いしまーす♡」

 ぴんくの髪を揺らして、主人公が笑う。


「あんた、横入りはだめだ」

 コックさんの突っ込みにも、主人公は怯まない。
 主人公だからな!


「えー♡ 僕、急いでるんです♡
 アルフォリア殿下がお待ちだから♡」

 きゅるん♡ と音がするような笑顔に、コックさんは、お玉を掲げた。


「殿下だろうと、同じ学生だ。
 横入りは許さねえ!
 最後尾に並びな!!」

「おおぉおお──────!!!」

 見守っていた皆から、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
 俺も一緒に拍手した。


「おじちゃん、すごい!」

「おにいさんと呼べ!!」

「おにいさん、オムライスお願いします!」

「よし!!」

 食券をおにいさんに渡そうとしたら、主人公に毟られて、千切られた。


「……お前さあ、モブレされる悪役の癖に、なんっで俺より注目集めて、可愛いとか言われてんの?
 ふっざけんなよ、クソ元王子が!」


 突き飛ばされた俺は、吹っ飛んだ。







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