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久方ぶりの学食だよ!
しおりを挟む皆で、学食に行くことになった。
理由は簡単、ずらす時間がないからだ!
ご飯、大事!
俺たちの周りには、ブラックホールのように人がいなくなり、その周りに人だかりができるという謎現象に見舞われる。
「日替わり定食がおすすめだよ」
「しょうゆラーメンがいいぞ」
「僕はバゲットサンド!」
にこにこするアルフォリア、ジェミ、キーザには、昨日の最低クソ野郎共の雰囲気は、微塵もない。
「…………どゆこと?」
「ほらリユィ、早く選ばないと、お昼休み終わっちゃうよ」
トエに促された俺は、日本の学食っぽいメニューの食券販売機の前で、固まった。
「…………俺、一文無しだった──……!」
お金、ない。
魔界でも、お金、使ったことない。
人界のお金なんて、もっと知らない。
真っ白になる俺に、トエが500円玉を渡してくれる。
めちゃくちゃジャパンな500円玉だった。
さすが日本のBLゲーム!
「貸しね」
「あ、ありがとう……!」
頭を下げた俺は、500円玉を券売機に入れて、オムライスのボタンを押す。
「ぷくくくく!」
隣でトエが笑って、ふくれた俺は、出て来た小さな券を握り締めた。
「め、めちゃくちゃ美味いんだからな!」
「あーもー、リユィ、かわいー!」
ぎゅう、と抱きつかれた俺は、ふくれた頬がちょっと熱くなるのを感じつつ、列に並ぶ。
「うお! 元魔王の元王子、真面目に列に並んでるぞ!」
「食券買ってたぞ!」
「それ以前に文無しだったぞ!」
「うわ! ちっちぇえ!」
「ちっちぇえ言うな!」
ぷくりと頬を膨らませて、拳を握る俺に降るのは、やっぱり笑顔だ。
「角が、ちょこんてしてる!」
「最低階級の黒リボンが可愛く見える!」
「うそ、オムライス頼んでる──!」
「かわい────!!」
………………。
そ、そう?
えへへ。
食堂の恰幅のよいコックさんに、食券を渡そうとした時だった。
「あ、ごっめえん!」
ど────ん!!!
衝撃とともに、吹っ飛ばされた。
「日替わり定食、お願いしまーす♡」
ぴんくの髪を揺らして、主人公が笑う。
「あんた、横入りはだめだ」
コックさんの突っ込みにも、主人公は怯まない。
主人公だからな!
「えー♡ 僕、急いでるんです♡
アルフォリア殿下がお待ちだから♡」
きゅるん♡ と音がするような笑顔に、コックさんは、お玉を掲げた。
「殿下だろうと、同じ学生だ。
横入りは許さねえ!
最後尾に並びな!!」
「おおぉおお──────!!!」
見守っていた皆から、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
俺も一緒に拍手した。
「おじちゃん、すごい!」
「おにいさんと呼べ!!」
「おにいさん、オムライスお願いします!」
「よし!!」
食券をおにいさんに渡そうとしたら、主人公に毟られて、千切られた。
「……お前さあ、モブレされる悪役の癖に、なんっで俺より注目集めて、可愛いとか言われてんの?
ふっざけんなよ、クソ元王子が!」
突き飛ばされた俺は、吹っ飛んだ。
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