【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  ゆるゆ

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たすけてくれたよ

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 泣き腫らした瞳で、アルフォリアがお弁当の作り方を教えてくれる。

 ぽわぽわな赤い瞼のアルフォリアは、いつもの完璧王子じゃなくて、とても可愛い。

「料理は、俺の趣味なんだ。
 皆が目を剥くから、生徒会室でこっそり」

 照れたように笑うアルフォリアは、めちゃくちゃかわいー♡

 ??

 アルフォリアの特技が料理って、ゲームにあった、かな??

 …………うーん…………

 ……なかった、気がする……

 でも俺の記憶は、もしかしたら確かじゃないのかもしれない。
 試験の問題が、1問も合ってなかったように──!



「お米は、こうやって炊くんだよ」

 にこにこ教えてくれるアルフォリアは、とても楽しそうで、見ている俺までうれしくなる。

「卵の殻、割ってみようか」

「うん!」

 ガシャ!!

 俺の手が砕いた殻が粉々になって、生卵のなかに投入された。


 そ、そうだった……!
 俺、卵、ちゃんと割れた試しがなかった!

 カップラーメンに卵さえ追加できない俺。
 カップラーメンにお湯を注ぐのが精いっぱいだった俺。

 お湯を注ぐだけなのに、腹減り過ぎて、あわててどばって注いじゃって、

『あちあちあちちちち!!』

 って、顔とか手とか服とか、粉スープが若干溶けた熱湯まみれになった俺!


 蘇る前世のさみしい記憶に、うなだれた。


 ほんとに俺、できそこない感満載!
 さすが、残念な悪役の転生者に選ばれる俺!


 しょげかえる俺の頭を、アルフォリアがなでなでしてくれる。

 アルフォリア、やさしー!


「ま、まあ、いいんじゃないかな。
 口を切ればいいとか、思ってるけど」

 にっこり笑ったアルフォリアが、卵の殻でがしゃがしゃの卵液を、そのまま焼いてしまう。

 え、それ、もしかして俺に対する攻撃……?


「ちがうでしょ。
 リユィは誰のためにお弁当つくりたいの?」

 俺の頭のなかを読んだみたいなアルフォリアの声に、跳びあがる。


「ディゼの口の中が切れちゃう!」

「切れたらいいねえ」

 にこにこしながら鼻歌とともに、アルフォリアが殻でいっぱいな卵焼きを焼いてくれた。

 …………自分で卵焼きができる気がしない。
 というか、殻でガシャガシャにならずに、卵を割れる気がしない。


 ご、ごめんなさい、ディー!!


 ち、ちがう、俺が食おう。
 うん。
 卵の殻はカルシウムだ。お菓子にも入ってる。喰えるはずだ!

 が、がんばる! 口のなかを切らないように!


 拳を握る俺の前で、彩りあざやかなお弁当ができあがる。


「わ──!! おべんとうだ──!!」

 アルのおかげで!

 俺がしたのは、米に水を入れたこと、卵の殻を割ったこと、ウインナーの袋を開けたことで、後はぜんぶアルがしてくれたけど、でもお弁当だよ!!


「じゃあ、これはメファの分ね。
 これを参考に、リユィが作ってみよう」

「え??」

「手作りだから、いいんだよ。ね?」

 にっこり笑うアルフォリアの微笑みは、黒い。

 た、たぶん、ディゼに、食べられないような弁当を喰わせたいんだ!!



 くうぅ!

 俺、がんばる!!


 ディーにおいしーお弁当つくるよ!!








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