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たすけてくれたよ
しおりを挟む泣き腫らした瞳で、アルフォリアがお弁当の作り方を教えてくれる。
ぽわぽわな赤い瞼のアルフォリアは、いつもの完璧王子じゃなくて、とても可愛い。
「料理は、俺の趣味なんだ。
皆が目を剥くから、生徒会室でこっそり」
照れたように笑うアルフォリアは、めちゃくちゃかわいー♡
??
アルフォリアの特技が料理って、ゲームにあった、かな??
…………うーん…………
……なかった、気がする……
でも俺の記憶は、もしかしたら確かじゃないのかもしれない。
試験の問題が、1問も合ってなかったように──!
「お米は、こうやって炊くんだよ」
にこにこ教えてくれるアルフォリアは、とても楽しそうで、見ている俺までうれしくなる。
「卵の殻、割ってみようか」
「うん!」
ガシャ!!
俺の手が砕いた殻が粉々になって、生卵のなかに投入された。
そ、そうだった……!
俺、卵、ちゃんと割れた試しがなかった!
カップラーメンに卵さえ追加できない俺。
カップラーメンにお湯を注ぐのが精いっぱいだった俺。
お湯を注ぐだけなのに、腹減り過ぎて、あわててどばって注いじゃって、
『あちあちあちちちち!!』
って、顔とか手とか服とか、粉スープが若干溶けた熱湯まみれになった俺!
蘇る前世のさみしい記憶に、うなだれた。
ほんとに俺、できそこない感満載!
さすが、残念な悪役の転生者に選ばれる俺!
しょげかえる俺の頭を、アルフォリアがなでなでしてくれる。
アルフォリア、やさしー!
「ま、まあ、いいんじゃないかな。
口を切ればいいとか、思ってるけど」
にっこり笑ったアルフォリアが、卵の殻でがしゃがしゃの卵液を、そのまま焼いてしまう。
え、それ、もしかして俺に対する攻撃……?
「ちがうでしょ。
リユィは誰のためにお弁当つくりたいの?」
俺の頭のなかを読んだみたいなアルフォリアの声に、跳びあがる。
「ディゼの口の中が切れちゃう!」
「切れたらいいねえ」
にこにこしながら鼻歌とともに、アルフォリアが殻でいっぱいな卵焼きを焼いてくれた。
…………自分で卵焼きができる気がしない。
というか、殻でガシャガシャにならずに、卵を割れる気がしない。
ご、ごめんなさい、ディー!!
ち、ちがう、俺が食おう。
うん。
卵の殻はカルシウムだ。お菓子にも入ってる。喰えるはずだ!
が、がんばる! 口のなかを切らないように!
拳を握る俺の前で、彩りあざやかなお弁当ができあがる。
「わ──!! おべんとうだ──!!」
アルのおかげで!
俺がしたのは、米に水を入れたこと、卵の殻を割ったこと、ウインナーの袋を開けたことで、後はぜんぶアルがしてくれたけど、でもお弁当だよ!!
「じゃあ、これはメファの分ね。
これを参考に、リユィが作ってみよう」
「え??」
「手作りだから、いいんだよ。ね?」
にっこり笑うアルフォリアの微笑みは、黒い。
た、たぶん、ディゼに、食べられないような弁当を喰わせたいんだ!!
くうぅ!
俺、がんばる!!
ディーにおいしーお弁当つくるよ!!
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