【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  ゆるゆ

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涙の雫

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「リユィ────……っ」

 涙の雫が、頬に降る。


「……ィ……」

 ぼんやり目を明けたら、落ちたディゼの涙で、視界が潤んだ。


「リユィ!?」

「リユィ────!!」

 ディゼと、トエ、メファ、アルフォリア、キーザ、ジェミ、イォ、レイト、皆が俺の顔を覗き込んで、テチが白い歯きらんで笑った。


「目が覚めたか! よかった。
 遠足に来て、突然倒れて死ぬところだったぞ。
 俺の魔力のおすそわけだ。しばらく安静にしているように」

 さくらの花が舞い散るなかで、テチの身体から溢れた魔力が、俺のなかへと注がれる。

 テチらしい、熱くて、さわやかな魔力が、俺の身体に命の光を燈してくれる。


「僕の魔力を!」

 メファが涙の瞳で、俺に魔力を注いでくれる。

 翠の風のような、やさしいメファの魔力が、消えそうな俺の輪郭を包んでくれる。


「俺の魔力も──!」

 アルフォリアも泣きながら、俺に魔力を注いでくれた。

 きらきらした魔力は、きっと、ずっと苦しかったアルフォリアの、涙なんだね。


「無茶しやがって」

 灰の瞳を辛そうに歪めたイォが、俺に魔力をくれる。

 素っ気ないのにあったかい、イォの魔力が、冷え切った俺の指先に沁みわたる。


「いやかもしれないけど、僕のも」

 キーザが手を翳して、

「お、俺のも」

 ジェミも俺に魔力を注いでくれた。

 キーザのやわらかな水の魔力と、ジェミの凛々しい炎の魔力が降ってくる。


 魔力を注いでもらったら、わかる。

 キーザに下半身の節操が全くないのは、自分のことをすきって言ってくれる子を、断れないから。
 やさしいキーザの気持ちが、ちょこっと暴走したんだね。

 ジェミが無理矢理が大すきなのは、ディーと同じ。
 どんなに真っ暗な自分も、ゆるして、愛してほしかったから。

 闇の自分さえも愛してくれる唯一こそが、欲しかったから。



「ひどいことして、ほんとうにごめんなさい。
 あんなこと、したくなかった──!」

 ぴんくの髪を揺らすレイトに、トエの深紅の瞳が胡乱になる。


「のりのりだったくせに」

「……くっ……そ、そこは、今は言わないでくれないか──!!」


 ………………のりのりだったらしいよ。

 うん。

 わかってた!


「……リユィが、僕に嵌められた枷を、砕いてくれた。
 …………ありがとう…………」

 トエの深紅の瞳から、涙が落ちる。


「…………俺、ちゃんと、できた…………?
 ……強制力は……?」

 涙の瞳で微笑んだトエが、指を掲げる。


「お話のとおりにしか行動できなかった僕が、今は虹を描けるよ」

 さくらの天に、七色の虹がきらめいた。


「もう口と身体が、勝手に動いたりしない。
 もうリユィに、酷いことをしなくていい……!」

 零れるトエの涙を抱きしめようとしたら、深紅の瞳が歪んだ。


「僕が、きみにしたことを、忘れたのか──!
 きみの急所の角を叩き斬り、モブレ──……っ」

「トエは、泣いてた。
 俺のために、泣いてくれてた。
 俺とトエは、ともだちだったんだね」

 伸ばした俺の手を抱きしめたトエの瞳から、涙が落ちる。


「……ずっと、リユィと……ともだちに、なりた、かった──……っ」

 あふれる涙を、抱きしめる。


「俺は、ずっと、トエはともだちだと、思ってたよ。
 今も、ずっと」

 崩れ落ちたトエの、ふるえる肩を、抱きしめた。











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