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涙の雫
しおりを挟む「リユィ────……っ」
涙の雫が、頬に降る。
「……ィ……」
ぼんやり目を明けたら、落ちたディゼの涙で、視界が潤んだ。
「リユィ!?」
「リユィ────!!」
ディゼと、トエ、メファ、アルフォリア、キーザ、ジェミ、イォ、レイト、皆が俺の顔を覗き込んで、テチが白い歯きらんで笑った。
「目が覚めたか! よかった。
遠足に来て、突然倒れて死ぬところだったぞ。
俺の魔力のおすそわけだ。しばらく安静にしているように」
さくらの花が舞い散るなかで、テチの身体から溢れた魔力が、俺のなかへと注がれる。
テチらしい、熱くて、さわやかな魔力が、俺の身体に命の光を燈してくれる。
「僕の魔力を!」
メファが涙の瞳で、俺に魔力を注いでくれる。
翠の風のような、やさしいメファの魔力が、消えそうな俺の輪郭を包んでくれる。
「俺の魔力も──!」
アルフォリアも泣きながら、俺に魔力を注いでくれた。
きらきらした魔力は、きっと、ずっと苦しかったアルフォリアの、涙なんだね。
「無茶しやがって」
灰の瞳を辛そうに歪めたイォが、俺に魔力をくれる。
素っ気ないのにあったかい、イォの魔力が、冷え切った俺の指先に沁みわたる。
「いやかもしれないけど、僕のも」
キーザが手を翳して、
「お、俺のも」
ジェミも俺に魔力を注いでくれた。
キーザのやわらかな水の魔力と、ジェミの凛々しい炎の魔力が降ってくる。
魔力を注いでもらったら、わかる。
キーザに下半身の節操が全くないのは、自分のことをすきって言ってくれる子を、断れないから。
やさしいキーザの気持ちが、ちょこっと暴走したんだね。
ジェミが無理矢理が大すきなのは、ディーと同じ。
どんなに真っ暗な自分も、ゆるして、愛してほしかったから。
闇の自分さえも愛してくれる唯一こそが、欲しかったから。
「ひどいことして、ほんとうにごめんなさい。
あんなこと、したくなかった──!」
ぴんくの髪を揺らすレイトに、トエの深紅の瞳が胡乱になる。
「のりのりだったくせに」
「……くっ……そ、そこは、今は言わないでくれないか──!!」
………………のりのりだったらしいよ。
うん。
わかってた!
「……リユィが、僕に嵌められた枷を、砕いてくれた。
…………ありがとう…………」
トエの深紅の瞳から、涙が落ちる。
「…………俺、ちゃんと、できた…………?
……強制力は……?」
涙の瞳で微笑んだトエが、指を掲げる。
「お話のとおりにしか行動できなかった僕が、今は虹を描けるよ」
さくらの天に、七色の虹がきらめいた。
「もう口と身体が、勝手に動いたりしない。
もうリユィに、酷いことをしなくていい……!」
零れるトエの涙を抱きしめようとしたら、深紅の瞳が歪んだ。
「僕が、きみにしたことを、忘れたのか──!
きみの急所の角を叩き斬り、モブレ──……っ」
「トエは、泣いてた。
俺のために、泣いてくれてた。
俺とトエは、ともだちだったんだね」
伸ばした俺の手を抱きしめたトエの瞳から、涙が落ちる。
「……ずっと、リユィと……ともだちに、なりた、かった──……っ」
あふれる涙を、抱きしめる。
「俺は、ずっと、トエはともだちだと、思ってたよ。
今も、ずっと」
崩れ落ちたトエの、ふるえる肩を、抱きしめた。
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