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おまけのお話
夏やすみも働くよー!
しおりを挟む夏休みです!
メファ社長の薬草苑のお世話で、キォタナ学園にやってきました。
鬱蒼と茂る森も、日照り続きで元気がない。
メファが水魔法で雨を降らせてくれるけど、猛暑が凄まじすぎて、しゃあって蒸発しちゃうんだよ。
俺も汗でぐっしょりだよ。
さらにちっちゃくなった気がする。
いや、元々ちっちゃくないけど!!
「親父ー、雨雲の呼び方教えてくれよー」
おねだりしたら
「自分で何とかしろ!」
鼻を鳴らされた。
「ディー、雨雲ー!」
「そーゆーの無理」
両断された。
「うぅ、力になれなくて、ごめん、メファ」
しおしお謝ったら、メファは微笑んで首を振った。
「毎日朝晩、水やりありがとう。すごく助かってる」
「俺、メファ社長の従業員だもん! がんばるよ!」
じょうろを掲げて笑った。
森の泉も水嵩が減ってきて心配だが、この水を汲んで、薬草苑の皆にかける。
麦わら帽子の香りを楽しみながら、朝早くと夕方くらいにやってきて、ジョロジョロ水をあげていく。
地味だけど水は重いし、薬草苑が広いからかなり疲れる。
仕方ないので、歌ってみた!
「ちゃちゃらー、ららららー!」
隣で、日傘を差しかけてくれるディゼが、笑ってる。
「何その歌」
「前世で流行ってたんだよ!」
「へー」
「ディー、日傘は自分で被らなくちゃ!」
俺のほうへ向けてくれる傘を、ぐぃいと押し戻したら、ディゼは首を振った。
「すぐ日焼けして、赤くなって、痛がるだろ。……かわいそうだから」
ちいさな呟きに、とろけて笑う。
「ありがと、ディー」
きゅ、とディゼと手を繋いだ俺は、ちょっとふくれる。
「でも水やりは手伝ってくれないんだな」
「それはリユィの仕事だろ? 金を貰ってるんだ、ちゃんとやれ」
「ごめんなさい」
反省した!
「ぱぱらー、ぱらららー!」
隣でディゼが、肩を揺らして笑ってる。
「それ、歌なの?」
「歌だよ!」
薬草の様子を見に来たメファも、声をたてて笑った。
「かーわいーなー、リユィ、それ歌じゃなくて、遠吠えだよ」
「ひでー!」
ぷっくり膨れた俺に、ディゼとメファの目が、やわらかに細められる。
愛らしいものを、見るように。
恥ずかしくて、照れくさくて、俺はジョウロで水を撒いた。
朝の光にきらきら揺れる水滴が、緑の薬草に落ちてゆく。
「リユィのおかげで、皆何とか持ちこたえてるけど、雨が欲しいなあ」
吐息するメファに、ジゼは眉をあげた。
「雨乞い、踊ってもらえば?」
「誰に?」
きょとんと首を傾げるメファと一緒に首を傾げる俺に、ディゼが笑う。
「リユィに」
「……は!? 踊れるわけない!」
あんぐりする俺の額を、ディゼの指がつついた。
「魔界大祭で踊る奉納舞、あれ、雨乞い」
「そなの!?」
「踊れるだろ、リユィ」
ぎゅ、とちっちゃな拳を握った俺は、なつかしい記憶を思い出す。
魔界の王子なら踊れて当たり前と言われて、必死で特訓した日々を。
運動神経も残念なのであまり上手に踊れなかったし、踊りを憶えるのは難しかったけれど、ぼんやりなら、まだ、踊れる……?
靴を脱ぎ、ディゼが渡してくれた鈴を持った俺は、裸足で大地を踏みしめた。
鈴を鳴らし、踵を鳴らし、白い袖を振り、踊る。
干からびた大地に、どうか、命の水を。
祈るように跳んだら、ぽつり、ぽつり、雨粒が落ちてくる。
「うそ、ほんとに──!?」
仰け反る俺の向こうで現れた淡い雨雲は、さあっと雨を降らせ、天に虹を描いた。
「わあ──!」
皆で、見あげる。
夏休みの朝が、きらきらしてる。
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