【完結】最愛の推しを殺すモブに転生したので、全力で救いたい!

  *  ゆるゆ

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勇者の村を守り隊!

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 た~り~り~ららり~ららら~♪

 勇者の村の音楽を口ずさみながら、僕はゆく。


 ジアの薬草のおかげで、体調が完全復活したらしい勇者エォナは、僕と一緒に村を見回ってくれるようになった。

 クロも、僕と一緒だよ。

 勇者の村を、守り隊!


 勇者兄のチチェも隊員になってくれて、畑仕事の合間を縫って、一緒に見回ってくれたりする。

 今日は、チチェは川に洗濯に行っている。
 大切な家事だ。
 服が臭くなると、ほんとに切ない。


 というわけで、ちっちゃなエォナとクロと見回り隊だよ。



「わあ! おひめさまだ!」

「黒い目に黒い髪なんて、秘宝みたいだねえ!」

「すげー! ほんものの、ひめだ!」


 笛吹きさんみたいに、後ろから知らない人たちがくっついてくる。

 笛、吹いてないよ。
 見回りだよ。

 そして何より!


「ひめじゃないよ」

 僕の懸命の訂正は、全然本気にされない。

 なぜだ!






 村の隅々まで、ちいさな勇者とクロと一緒に、魔物が来ていないか、おかしな気配がないか、見回ってゆく。

 ゆく先々で、すっかり顔馴染みになった、勇者の村の人たちが、手を振ってくれる。

 ちいさな子どもが駆けてきて、おっきな瞳で笑ってくれる。


「おひめさま、えほんのおひめさまより、おひめさま!」

 きゅう、と僕の手を握ってくれるちいちゃな手が、めちゃくちゃかわいー。


「ひめじゃないよ」

 訂正するのに、3歳児にさえスルーされるのは、なぜだ!


「こんな辺境のちいさな村を、おひめさまが見回ってくださるなんて!」

「ありがたいねえ。ありがとうねえ」

 おばあちゃんたち、拝まないでください!


「ひめじゃないです」

「はあ、ひめさまのお顔を見ると、寿命が十年延びるねえ」

 耳が遠くていらっしゃるんだな。うん。
 スルーされてるんじゃないもん、きっと!


「ひめさま、大すき」

 ちいさな手で、子どもたちが僕の手を握って、笑ってくれる。


「こんなに気にかけてくれて、ありがとうねえ」

 おばあちゃんたちが、やさしいしわの笑顔で、頭を撫でてくれる。





 世界一、むかつくモブの僕に

 前世でも、誰にも相手にされなかった僕に


 皆が、笑ってくれる。



 あふれそうな涙を、あわてて拭った。



「おひめさま」

 僕と手を繋いで、うっとりしたみたいに僕を見つめるエォナの目が、うるうるしてる。

 ほっぺが真っ赤で、かわいいよ。

 ちがう、訂正しても訂正しても、おひめさまの元凶は、きみか!


「僕、男だから」

 ちっちゃいけど、ちゃんとついてるよ。
 マグナムが!
 発射の予定は、まだないよ。

 繋がっていないほうの拳を握ったら、ちっちゃいエォナは、おごそかに頷いた。


「わかった」


 わかってない気がするなあ。

 なぜだ!







 最近は、勇者の村の皆さんも、狙われてるっぽいよ! と危機感をちょこっと持ってくれるようになった。

 僕とエォナが手を繋いで、村を毎日見回ってるからね。
 その後ろを、知らない人たちが、ぞろぞろついてくるからね。
 村の名物行列みたいになってきたよ。

 僕たちの後を守るようについてきてくれるクロが、一番警戒感があって凛々しい件について!


「クロが一番優秀だよ。
 ありがとう、クロ」

 なでなでしたら、クロは鼻を僕の胸に擦りつける。


「ろー、まもるよ!」

「ああ! クロがかわいー!!」

 クロを抱き締めて悶える僕を見つめるエォナの目が、氷だった。

 ……気のせいかな?






 メーメーモーモーコケッケの牧歌的な村を、ちっちゃいエォナと手を繋いで見回るのは、クロが後ろで凛々しくしてくれているのに、お散歩感が半端ない。

 しかし、油断してはいけないのです!
 緊急事態がやってくると言えば、避難訓練だ!


 ということで、皆で深夜に避難訓練を行った。
 真夜中に魔物軍が攻めてきたという想定だ。

 事前に纏めてもらっていた大切なものと当面必要なものを袋に詰めて背負い、武器を手に、ちいさな子と老人を守るように隊列を組んで、緑深い森に向かう。

 ちっちゃな子も、眠たいだろうに、僕と手を繋いで頑張ってくれた。

 クロに励まされると、ちっちゃな子もやる気になるみたいだよ。
 さすがクロ!

 ちいさな子に囲まれる僕とクロに、隣でエォナとチチェがギリギリしてる。


 だいじょうぶ、僕、ショタコンじゃないから!
 僕は安全だよ!

 犯罪臭がしないように、安全第一でにっこり笑ったら、エォナもチチェもちいさい子もおじいちゃんも、くずおれてた。


 …………なぜ?



「夜のお散歩は素敵だねえ!」

「ひめさまと一緒!」

「ふぉふぉ、真夜中のひめさまを見られるなんて、また寿命が延びるねえ!」

 夜の遠足気分満載らしい村人たちは、避難所に指定した迷いの森の奥で、お弁当とお酒で盛りあがってくれた。


 本来の趣旨とは違うけど、楽しんでくれたなら、よかった、かな?
 あんまりピリピリしてるのも、よくないかもしれない。


 僕と勇者と勇者兄が毎日見回って、村の皆も警戒レベルを上げてくれている。



 これでは魔物軍も、出陣し難かろう!

 と思うけど、ヅァギだからな。

 っていうか、ヅァギ、逢ったことないよ。
 黒幕だよね。
 大丈夫だよね。


 僕、前世42歳まで生きたけど、頭よくないんだよ!
 たすけて、ジア!
 泣いたら見放されそうなので、踏ん張る。


 ジアは、やさしいけど、厳しい。
 おかあさんみたいだ。

 思うと、ちょっと照れる。


「えへへ」

「おひめさま?」

 不思議そうにエォナに問いかけられた僕は、跳びあがる。

 手を繋いで見回りしてたのに、ごめんねエォナ!


 思い出し笑い、標準装備なんだよ、僕。
 気持ちわるいって前世で散々言われたのに、失敗した!


 生まれ変わっても、僕はあんまり、変われない。


 防御や突撃、剣や魔法はできるようになったけど。
 中身があんまり変われないのは。
 ……変わろうと、頑張ってないからかな。

 
 42年生きた前世の記憶を振り返るに、3歳からあんまり成長しなかった。
 今度はちょっぴし頑張ってみたいよ。

 折角、また生まれたからね。
 世界一むかつくモブだけど──!
 

 でも、エォナの栗色の瞳が、うるうるしてて、ほっぺが赤くて、ぽーって、うっとりしてるっぽいのは、なんでかな?


 僕、頭わるいから、勇者の村が守れるかどうかわからないとか吐露して、ちっちゃいエォナを不安にさせたらだめだ!

 ここは、嘘っこでも、できる大人を演じてみよう!


「気を引き締めて警戒しないとね」

「はい! ひめ」

 きゅう、と僕の手を握って、凛々しい顔になってくれるエォナは、めちゃくちゃかわいー。

 主人公みんな、スペック激高だったけど、勇者のちっちゃい頃はこんなに可愛いんだなあ。


 うへへ。
 出そうな涎を、あわててじゅるりと啜る。

 ご、ごめんよ、残念な42歳で!



「ひめじゃないよ」


「はい、ひめ」



 うん。


 わかってない。






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