【完結】最愛の推しを殺すモブに転生したので、全力で救いたい!

  *  ゆるゆ

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伴侶は5人まで♡

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「じゃあ、ひめさまに通報装置作るから、ひめさまの鼻血をお願いします♡」

 超絶笑顔のキュトに、僕は手を挙げる。


「ひめじゃないです!
 加えて、は、鼻血じゃなくてもいいと思います!」

 拳を握る僕に、ジァルデが首を傾げる。


「しょっちゅう垂れてるから、負担なくていいんじゃね?」

「言わないでください、お願いします!」

 耳まで熱い僕を守るように、レトゥリアーレが前に出る。


「我が血を使え。
 通報は、私に。
 エルフがルルに負担をかけることは、ゆるさぬ」

 蒼の瞳を吊りあげるレトゥリアーレに、キュトは首を振った。


「レトゥリアーレには、皆喜んで連絡しちゃうでしょ?
 意味ないよー」


「わ た し の 血 を つ か え !」


「こわいこわいこわい!!
 美形の青筋ビキビキの顔、真剣に怖いから!」

 ぷるぷるするキュトに、僕は手を挙げる。


「僕もレトゥリアーレさまの鼻血、欲しいです」

 真っ赤になったレトゥリアーレが、鼻を押さえてうずくまる。


「あ、血、出たね。
 エルフの長の血、採り放題! あざーす!」

「だめだめだめ!
 ぼ、僕が嘗めるから!!!」


 キュトを押し退けた僕は、最愛の推しの鼻に、口づける。



 紅い血は、とろけるように甘い、蜜の香りがした。













 レトゥリアーレさまの鼻血を嘗めた僕が、鼻血を噴いて倒れたので、キュトは無事僕の血を採取し、魔道具に組み込んでくれる。

「魔道具ひとつ作るのも、すんごく大変だって、本で読みました。
 僕の我が儘なのに、キュトたん、ありがとうございます。
 僕でできることなら、何でもします!」

 頭をさげたら、キュトの紫紺の瞳が、うるうるした。


「はあ♡
 ひめさま、尊い♡
 じゃ、じゃあ、お礼に、ちゅーを♡」

 んー♡ と突き出されたキュトの唇を、レトゥリアーレの掌が潰した。


「我が命を懸けて闘う」

 ギラギラ燃える蒼の瞳が、本気だ。


 レトゥリアーレの凍気にぷるぷるしたキュトが、僕の手をにぎにぎする。


「僕、がんばってるのに。
 レトたんが、いじめる」

 ぱふりと僕に抱きつこうとするキュトを、レトゥリアーレの腕が阻んだ。


「いざ尋常に、勝負!」

 グォオオァアアアア──────!

 レトゥリアーレの身体から魔力が噴きあがり、キュトの目がきらきらして、ジァルデの手が、レトゥリアーレとキュトの頭を、ぽこぽこした。


「家を壊すな」

「家より、ルルだから!
 生きてたら直す!」

 目を吊りあげるレトゥリアーレに、ジァルデが笑う。


「レトゥリアーレも、ここで暮らすか」

 目を見開いたレトゥリアーレが、ジァルデを見つめる。


「……よいのですか」

 ジァルデが振り返った先で、ゼドが頷いた。


「にぎやかになる」

 ゼドとおそろいの微笑みを浮かべたジァルデは、僕の顔を覗き込む。


「ろー、伴侶は5人までだぞ。
 それ以上は収拾がつかん」

「ひとりですから!!」

 耳まで熱い僕を、レトゥリアーレの腕が抱き締める。



「5番目でもいい。
 傍において、ルル」


 ささやきが、耳朶にふれる。

 最愛のぬくもりに、つつまれる。





 鼻血を噴いた僕は、失神した。

 何回目だ!



 キュトたんは、研究材料になる僕の鼻血を喜んでくれた。


 レトゥリアーレさまは、僕の鼻血を嘗めたらしい。



 …………いや、あの、おそろいですけど、レトゥリアーレさまは、やったらだめ────!!





 




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