悪役令息の、もふもふに転生しました

  *  ゆるゆ

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だっこ




「じゅーま、しょーかんって、たぃへんな、まほぅ、でしょう?
 とっても、むちゅかしぃ。
 めーちゃん、こんなとこに、とじこめられて、ひとりきり。
 できゆなら、むかしのほんを、ょんで、がんばった?」

 聞いた僕に、ぎゅっとメィユが唇をむ。

「……いけないことかもしれない、しかられるかもしれない、怖かったけど……でも……闇魔法のことを知りたくて……古語なんて、僕にはむつかしくて、わからないのに、闇魔法の本だけは、読めたんだ。だから──」

 ふるえるメィユの手が、僕へとのびる。

「……ともだちが、ほしくて……」

 こぼれる涙が、僕の頬を濡らした。
 ふるえるメィユを、ちいさな前足で抱きしめる。

「ひとりが、さみしぃ、の、あたり、まえだよ。めーちゃん、なんにも、わゆく、ない!」

 ぎゅうぎゅうメィユを抱きしめた僕は、ちいさな頭を肉球でぽふぽふした。

「めーちゃん、ひとりで、よく、がんばたね」

「……るーちゃんが来てくれたのは、ほんとに、奇跡だ。
 従魔召喚をすると、こわい悪魔が出て、食べられちゃうこともあるって、書いてあった。
 ──それでも、僕は、ひとりぽっちじゃ、なくなりたくて……」

 嗚咽おえつにふるえる肩を、抱きしめる。

「もう、めーちゃんは、ひとりじゃ、ないよ。
 ぼくが、いゆ」

 やさしくメィユの髪をなでた僕は、埃まみれの本棚を見あげた。

「おふろ、はいゆ、まえに、ほかのも、みてみゆ?」

 そう、僕には前世の知識があるので!
 埃まみれの書庫を探検するのは、お風呂の前に限るのです!

 お風呂の後に埃まみれになったら、泣いちゃう!

「あ、あの、あんまりさわると、バレちゃって、しかられる、かも。
 は、はやく出よう、るーちゃん!」

 あわあわ僕をうながすメィユに、首をふる。

「とぅの、なかに、あゆの、は、めーちゃんの、すきに、して、いーはず、だよ!」

 たぶん!
 というか、塔に閉じこめる時点で、大間違いだから!

 ぷりぷりする僕のしっぽが、ばふばふして、紅い瞳をまるくしたメィユが声をたてて笑う。

 笑ったら、ちょこっと元気が出たみたいだ。
 緊張で青かった顔色が、やわらかな朱に染まる。

「……あの、ほんとは、ないしょで、あの、いちおう見てみたんだけど、僕に読めたのは、闇魔法の本だけだったんだ。ぜんぶ、古語みたいで、背表紙を読むことさえ、むつかしくて」

「なゆほろ? めーちゃん、だっこ」

 前足をのばしたら、ふしぎそうにメィユがまたたいた。

「? う、うん」

 僕を抱きあげてくれたメィユの腕のなかから、僕は本棚に並んだ本の背表紙を見つめる。

 そう、ちょっと背丈が足りなかったのです。
 めーちゃんのおかげで、よく見えるよ!


「いしぇかい、てんせぃ、ちーと、こぅりん!」

 前足をかかげてみた!


「しゅてたしゅ、おぷん!」


 ……………………………………。


 …………………………。


 ………………。


 何も起こらなかった!


「ふにに」

 むうっと顔をしかめた僕は、本棚の背表紙を見つめる。

 集中する。


 いでよ、異世界転生チート──!


 キュアァ──っと光があふれて、カッと目が開いて、読めるように──…………な、ならなかった!


 ………………ちょっと待って。

 異世界転生って言えば言語理解じゃないの!?


 涙目になっちゃった!







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