おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ

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………………




 見つめられると、見つめ返してしまう。

 月明かりを宿すように、きらめく陽の瞳や、凛々しい眉に、高い鼻、淡い唇を視線でたどって、見惚れていたことに気づいた。

 ──仕方ない。
 こんなに凛々しく輝く、かんばせなんて見たことがなかったのだから。

 熱い頬をごまかすように、髪を揺らした俺は、ラザの言葉が真なのか、確かめるように陽の瞳をのぞきこむ。

 首をかしげた俺の髪が、さらさら流れる。

 微笑んで、いたずらっぽく、ささやいた。

「お気に召しましたか?」


『そんな訳ないだろう』

 引きだすための問いだ。

『気に入りましたか?』聞かれると『別に』言いたくなるものだからだ。

 言葉には力がある。

 一度否定すれば、『別に気になんて、なっていない』言葉は心に根を下ろす。

『気に入らないで、忘れてください』

 それは、ささやかな、お願いだ。
 俺の命と、国の命をつなぐための。

 ……それなのに、ラザに忘れられてしまうことは、さみしい気がした。

 忘れ去られて、存在さえも消してもらったほうが、俺も国も長生きできそうなのに。

 ほんの少し話して、一緒に歩いただけのラザに、忘れられたくないだなんて。


 くやしいから、笑う。

『ほら、気に入らないって言って』

 ねだるように。


 揺れる月明かりの髪を、ひと房つかんだラザの瞳が、近づいた。

「とても」

「……え……?」

 髪が、流れる。

 指を、とられる。

 瞳が、重なる。

 唇が、ふれそうな距離まで、近づいた。



 ………………え…………?


 吐息がふれる距離で、ラザが止まる。

「……拒まないのか」

 ふしぎそうな、がっかりしたような声だった。

 びっくりして、思わず笑ってしまいそうになった俺の唇が、緊張にこわばって固まっていた唇が、ゆるむ。

「ラザさまには、欲がない。わたくしに何もなさるおつもりがないのに、さわぐのは無粋でしょう?」

 脂汗がダラダラで反応できなかったとか、ほんとうのことは言えない……!

 まるで当たり前みたいに、にっこり笑ってみた。

「なるほど」

 喉を鳴らして、ラザが笑う。


「気に入った。おいで」

 ラザが手を引く。

「どちらへ?」

 そうっと聞いた。

 あたりまえのように、ラザは告げる。

「俺の宮」


 …………………………。


 …………やばくない……?






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