おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ

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なんとなく




 移り香……?
 ……俺に、ラザさまの、めちゃくちゃいー匂いが、ついてるっていうこと……?

 そ、それは、ちょっと……うれしぃ、かも……?


 思ってしまったことさえ、はずかしい。
 とくとく鳴る胸で、熱い耳で、目をふせる。

 ふんと隣のラザが鼻を鳴らした。

「まだ何もしていない」

「えぇ──!」

 のけぞる陛下に、ラザの凛々しい眉があがって、ヤヤが吹いた。
 ラザの鋭い視線に刺されたヤヤが、硬直する。

 俺も、ちょっと笑いそうになった唇を引きしめた。

 そう、自分のことだよ!
 手を出されたら、終わっちゃうんだよ!

「レイは16だ。手を出すのは2年後だな」

 はい、2年後に、俺も、国も、飛びますよ──!

 ──じゃなかった!

 そうそう、飽きる、飽きる飽きる飽きる、ぜえったい、まちがいない!

 平気平気平気!

 俺も、国も、2年後も元気だよー!

 光の速さで百回唱えて、魔導具の指輪を百回こすった。

 頼むよ、魔導具……!

 まだ2日目なのに、何度、号泣しそうになったか、わからない……!
 もうね、背中にね、滝の汗が流れ落ちるのが、あたりまえとか、ひどくない……?
 夏だよ。あせもになっちゃう!

 ちょこっと、真実はめちゃくちゃ、どっきどっきしながら、なんにもありませんよな顔で微笑む俺に、陛下の頬が、ふうわり朱くなる。

「……レイは、ほんとうに、なんと……」

 ぽかんと、つぶやく陛下の言葉を遮るように、ラザが唇を開いた。

「ともに朝餉をと思ったけれど、兄上の顔が赤い。熱があるんじゃないか。
 体調がよくないときに、すまなかったな。
 じゃあ、そういうことで」

 かるく兄に手をあげたラザの瞳が、ほそくなる。

「レイには、手を出すな」

 鋭い声に、ぶんぶん陛下がうなずいた。

 ……うーん……

 やっぱり、ラザさまが、陛下の、弟っぽくない。
 陛下が、ラザさまの、お兄ちゃんぽくない。

 こう、家族の親しみとか、家族だからこそある引っかかりとか、弟とお兄ちゃんあるあるな感じが、感じられない気がする……?

 7人も、お兄ちゃんがいたからね。
 わっちゃわっちゃしながら、育ってきたからね。

 7人に頭を、もっしゃもっしゃにされたこともあるよ!


 なんとなく、なんとなーく、なのだけれど。
 ラザさまの身代わり──ほら、暗殺者に備えて常設しておく、そっくりさんが、陛下なんじゃ……? という気もちになるのですが……?

 そうすると、やっぱりラザさまが帝王陛下なのでは……? ということになるのですが……?


 ……こ、ここここ、こわ──!

 な、なにも気づかなかったことにしよう──!


 ちょこっと、あわあわしちゃった俺に、ふしぎそうにラザが首をかしげる。

「どうした、レイ」

「も、もももも申しわけありません! ラザさまのほうが百万倍、陛下っぽいなとか、微塵も思っておりません!」


 叫んじゃった!




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