悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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あとで!

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「トゥヤ師匠! 一刻を争うのです、喜劇は後で!」

 一喝するカイに、トゥヤが瞬いた。

 セゥスは、トゥヤに、にぎられた手を、にぎりかえす。


「お力をお貸しください、トゥヤ殿!」

「え、あ、うん、でも大事な話なんだけど!
 ゆぃりって……もしかして、悪役令息? さらわれたの? たすけに行くの? セゥスが?
 元伴侶(予定)って言った? 伴侶(予定)契約は破棄したの? 話の最初で破棄だよな? そこは終わったってこと?」

 あふれ流れる質問に、セゥスも皆もぽかんとした。

 ……どうして逢ったこともない人が、これほどまでに詳しいのだろう……

 それより気になるのが……

「……悪役令息、とは……?」

 たしかユィリも、口にしていた……?

 自分は、悪役令息なのだと。

 アーシェが、主人公だと……?


「そういうお話は、ゆりさまが無事に見つかってから、ゆっくり、後で! おねがいします!
 さらわれたんです──!」

 カイの悲鳴に、トゥヤの顔が引き締まる。

「わるかった。ごめん。
 カイがいたのに、さらわれたのか」

 カイがうなずく。

「魔導士さまが、イセカイの記憶をもつ者のみが使える技を行使したのかもしれないと。
 イセカイテンセイの者には、特異な力が使えることがあると。
 人を遥かに超えるトゥヤ師匠は、もしかしたら、イセカイテンセイではないかと──」

 カイの声が、揺れる。

「どうか、ゆりさまを、救ってください……!」

「おねがいする……!」

 カイとともに、ノゥスも、セゥスも、胸に手をあて、膝を折った。

 目を見開いたトゥヤが、ちいさく笑う。


「とうちゃんに、まかせろ!」

 どんと胸を叩いてくれた。


 14歳の少年なのに『とうちゃん』なんだ。
 カイの、ロロァの、後ろで心配そうに見守ってくれている、たくさんの少年たち、大人たちの、お父さん。

 任せてしまったら、ぜんぶ解決してくれそうで、それじゃだめだと、ゆるみそうな顔をセゥスは引き締める。



 ユィリをたすけるのは、自分がいい。

 助けを借りても、みっともなくても、情けなくても、それでも。

 ユィリに最初に手をのばすのは、自分がいい。



「突然、消えたとしか思えないんだ。カイも気配に気づかなかった。魔導士のおじいさまも、魔法の気配がないと。特殊な力を使われたのではないかという見解だ。
 トゥヤ殿は、それでも気配を追えるだろうか。ユィリを追跡できる……?」

 緊迫のセゥスの声に、トゥヤは凛々しい眉をひそめる。


「……それはちょっと厄介だな。カイが気づかず、魔法でもない……スキルか。異世界転生特典のスキルだと厳しいかもしれん。
 精霊さん、看破できる?」

 トゥヤが、肩のうえに目をやった。

 ちらちら、光が舞った気がする。


「……精霊さまと会話できるのか……!?」

 驚愕に息をのむノゥスとセゥスの隣で、カイは青い顔のまま、うなずいた。


「人を超える師匠ですから。だいたい、なんでもできます」

「買いかぶりだ」

 笑ったトゥヤが、手をあげる。
 それだけで、後ろで見守ってくれていた、たくさんの少年たちが、さっと前に集まった。

 音さえしない。

 気配もしない。


 ……カイが言っていた。

 ここにいる全員が、自分より遥かに強いと。


 背が、ふるえる。


 味方してくれるなら、これほど心強いものはない。

 けれど、もし、敵に回ったら……?


 考えるだけで、血の気がひいた。


 ノゥスの指がふるえているのが見えたセゥスは、息をのむ。

 ふるえる指をのばして、そっとにぎった。



 自分は、お兄ちゃんだ。

 弟のノゥスを、守りたい。


 思うだけで、強く、なれるんだ。


 ありがとう、ノゥス。






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