悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
134 / 214

ごめんなさい

しおりを挟む



「……あぁ、だめだ、ここまでだな」

 トゥヤのつぶやきに、セゥスの胸が潰れた。

 いつもトゥヤの肩で揺れていた光が、弱くなっている。
 精霊さまには、海から吹く風も、海の近くにいることも、つらいのかもしれない。

 青い闇のようにうねる海に、白い波頭が飛沫をあげる。


「ここから船に乗った人がいないか、聞きこみをしてみよう。何とか船に乗せてもらえるよう交渉を」

 はじめて見る船と海をセゥスが見回したときだった。
 白い帽子をかぶり、長い杖を支えにした、おじいさんが手をあげる。

「ほうほう、いらっしゃいましたの。これはこれは、優秀な。
 セゥスさまですかのう」

 警戒しなければならない、わかっているのに、口は勝手に音をつむいだ。

「ユィリはどこに行ったか、知っているのか──!」

 おじいさんは、微笑んだ。

「海さまは追ってくるのではないかと仰っていましたが、いやはや。このような大陸の果てまで来られるとは」

 感心したように白い髭をなでるおじいさんに、セゥスの目が切れあがる。


「ユィリを、どこへやった──!」

 絶叫だった。

 ノゥスとカイが剣を抜こうとするのにも、トゥヤの瞳が切れあがるのにも、トコハがしずかに剣の柄に指をかけるのにも、おじいさんは、揺るがない。


「わたくしは伝言を、お伝えに」

 透きとおる青の瞳が、皆を見渡した。


「『つよつよな僕は、おともだちといっしょに、お家に帰ります。
  皆、いい子で待っててね!』」

 ユィリが目の前で、手を振ってくれた気がした。


 …………………………。


「…………え……?」

 ぼうぜんとする皆に、おじいさんが微笑む。


「ユィリ殿は、おそらく皆さまが思うよりずうっと、おつよい方ですじゃ。
 おひとりで、立派に、お帰りになります。
 力の強い、あなたがたが、救わなくとも」


 ──……頭を、思いきりなぐられた気がした。


 ……ユィリは、ちいさくて、あいらしくて、よわくて、守ってあげなければならない存在だと思っていた。

 ユィリを守ることこそが、自分の使命なのだと。

 ……ユィリが強いだなんて、思ったこともなかった。
 だから必死で、ユィリを追った。
 ユィリがひどい目に遭うに違いないと。


 ……なんて、傲慢だったのだろう……


 ユィリは、立派な、稀代の治癒士だ。


 ひとりで、立って

 ひとりで、帰ってこられる。


 さらわれても

 それでも

 きっと

 ひとりで、立派に、帰ってきてくれる。



 弱いから、たすけにいかないと。
 自分がユィリを守らないと。
 ユィリが、ひどいことをされてしまう。
 ユィリは、弱いから。

 ──それは、すさまじい、侮辱だ。


 ユィリを愛しているといいながら……自分は何を見てきたのだろう。

 ラディを治そうと懸命にがんばるユィリを、目の当たりにしていたのに。



「……ごめんなさい、ユィリ……」

 にじんでゆく視界に、ノゥスは首をふる。


「さらわれたら、追いかけるのは当たり前だろ! 心配するのも、当たり前だ!」

 おじいちゃんが、微笑む。


「追いかけてもらえぬのも、さみしいもの。
 あなたがたは、よくがんばりました。
 多大なるご心配をおかけしたことを、謝ることができぬことを、残念に思います」

 魔法の杖が、輝いた。


「はやく、お家に帰りなされ。
 ユィリ殿が、きっと、ぷりぷりしながらお待ちですぞ」








 面識のない王族に泣いて頼みこんで転移門を使わせてもらい、ラゼン王国へと帰ってきた。

 白い離宮で、ユィリが手をふる。


「セゥスさま!」

 きみが、笑ってくれる。

 それだけで涙があふれて、止まらない。


「おかえりなさい、ユィリ……!
 ……遅くなって、ごめんなさい……!」

 すがるように抱きしめたら、ほんのり潮の香りのする髪で、笑ってくれた。


「僕、つよつよになるの。
 だから今度からは、いい子で待っててね」

 やさしいささやきに、首をふる。


 ユィリが強くても。
 立派な、素晴らしい、ひとりで立てる治癒士でも。

 それでも


「いなくなったら、追いかけたいよ、ユィリ」

 ささやいたら、あふれる涙を、ちいさな手が抱きしめてくれた。



「うれしい、セゥスさま」

 ちゅ

 あまい唇が、額に降る。



「だいすき」


 きみが真っ赤な頬で笑ってくれたら

 ほかに、なにも、いらない。















────────────────


 ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!

 ようやくセゥスとユィリが逢えたところなのに、雰囲気ぶち壊してごめんなさい……!

 名前に読み方が、つきましたー!(笑)
 今まで『どう読むんだ』『読み方がないってどういうこと!』みたいに思ってくださっていた皆さま!


   *  ゆるゆ  になりましたー!


 ゆるゆです!
 短めひらがな、覚えやすくて検索しやすくて他の方があまりいらっしゃらないで一生懸命考えました(笑)
 3文字で回文です!(笑)意味はないです!(笑)ゆるい?(笑)

『ゆるゆ』だけだと、すてきな皆さまのお名前に800%埋もれそうなので(笑)  *  ゆるゆ  になっています。

 これからは、どうぞおきがるに、ゆるゆとお呼びくださいねー!
 出しやすくなりました!(笑) * どうやって出すんだってなりますよね!(笑)
 インスタのIDも変更して、 @yuruyu0 になりました!
 いっぱい色んなところに書いてしまったので、ぽちぽち直します……(笑)
 プロフのwebサイトからは飛べるようになっているので、もしよかったら!


 今までのお話のなかで、最速でお気に入りをいただけているのが、だいふくユィリなのです!
 もう残すのは『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィルのみとなりました(笑)

 お気に入りや、いいねや、エール、ご感想で応援してくださる皆さま、毎日読んでくださる皆さま、お忙しいなかお時間をつくって読んでくださる皆さま、ここまでずっと読んでくださった、あなたさまに、心から、ありがとうございます!


 ユィリ「もっちもっちな僕を、応援してくれて、ほんとに、ほんとに、ありがとうー!」

 セゥス「心からの感謝を、あなたに」






しおりを挟む
感想 463

あなたにおすすめの小説

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

【本編完結】攻略対象その3の騎士団団長令息はヒロインが思うほど脳筋じゃない!

哀川ナオ
BL
第二王子のご学友として学園での護衛を任されてしまった騎士団団長令息侯爵家次男アルバート・ミケルセンは苦労が多い。 突撃してくるピンク頭の女子生徒。 来るもの拒まずで全ての女性を博愛する軽薄王子。 二人の世界に入り込んで授業をサボりまくる双子。 何を考えているのか分からないけれど暗躍してるっぽい王弟。 俺を癒してくれるのはロベルタだけだ! ……えっと、癒してくれるんだよな?

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

処理中です...