悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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こくはくじゃないよ!

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「よし、じゃあ改めて、海には、悪意も害意もないってことでいいんだな」

 まとめてくれる透夜に、ありがとうの視線を送りつつ振りかえる僕に、海は胸に手をあてたまま宣誓するように、うなずいた。

「誓う。
 ゆりのためなら、なんでもするよ」

「そ、そんなのいいんだよ! 気にしないで!」

 あわあわする僕の言葉にかぶせるみたいに

「きゃー♡ 告白みたい!」

 アーシェが、きゃわきゃわして、透夜も拍手してる。

「おお、いいな! 『鉄板BL』の話、鉄板すぎて俺も覚えてないけど、BLゲームなロロァさまと俺も、ゲームの筋から外れて元気に生きてるし、皆すきに生きていいんだよ。
 転生者の子孫×悪役令息か。あんまりないかも? よかったな、ユィリ……くん!」

 透夜が話を、まとめにきてる!

「海くんは僕に恩義を感じてくれてるだけだし、僕がすきなのは、セゥスさまだから!」

 燃える頬で叫ぶ僕に、透夜の切れ長の瞳が、まるくなる。

「伴侶(予定)契約、破棄されたんじゃなかったのか?」

 しょぼんと僕は、肩を落とす。

「……されちゃったの……」


「二度と結べないよな?」

「……結べないの……」


「どうするんだ?」

「……のーぷらんなの……」


「なるほど?」

 首をかしげる透夜が、不思議そうだ。

「自分のことを捨てた男を、まだすきなの? 演歌?」

 透夜にも言われた!
 最初に言った海も、うむうむしてる。
 ぽんとアーシェが手を打った。

「あー、なんか歌があったよね。おじいちゃんが歌ってた!」

「おじいちゃんなの!?」

 呼び名に、泣いちゃう!

「なんで、すきなの?」

 首をかしげる透夜に、熱い頬で、ぽそぽそ告げる。

「……セゥスさま、おとうさまが王配なんだけど、陛下が愛してるのは、のーすちゃんの、おとうさまで……セゥスさまはずっと、おとうさまの恥辱をそそぐために頑張ってきて……貴族やおとうさまの圧力で、より治癒魔法の才能のあるアーシェくんと伴侶(予定)にってお話になって、それで僕との契約を破棄したの」

「僕、セゥスさまと伴侶(予定)契約、結んでないからね。丁重にお断りしたから」

 アーシェの言葉に、ぽかんと透夜は口を開けた。

「主人公なのに? 王太子を振った!?」

「ほんとに主人公なのか、あやしいよ。皆、ユィリくんのことが、めちゃくちゃすきなんだけど。セゥスさまも、ユィリくんしか見てないし。そんな人の伴侶になるとか、ぜったい無理!」

 ぶうぶうふくれるアーシェが、かわいい。

「アーシェくんは、主人公だと思うよ」

 僕の言葉に、透夜もうなずく。

「ぴんくで、かわいー。間違いないと思う」

 ほめられたアーシェが、赤くなってる。かわいい。
 にこにこした僕は、口をひらく。

「僕、伴侶(予定)契約を破棄された衝撃で、前世の記憶がよみがえったんだよ。それまで立派な、いやーな悪役令息だったの。心を入れ替えて、がんばってるの!
 そしたら皆が仲よくしてくれるようになった、みたい?」

「いや最初から、なかよしでしょ」

 アーシェくんに、つっこまれました。

「セゥスさまがね、もう、おとうさまの人形を辞めるって。王太子を辞退するって。……僕のこと……す、すきって言ってくれたの。
 僕も、セゥスさま、だいすきなの」

 もじもじしながら、言ってしまいました!
 恋バナ、はずかしい……!


「あー、なんか胸やけしてきた」

 透夜の目が遠い。

「聞いたのは透夜くんでしょ! ひどくない!?」

 もっちもっちの熱い頬で、涙目になってしまう僕に、透夜が笑う。


「しあわせ?」

 心の奥まで見通すような、透きとおる瞳に、微笑んだ。


「とっても」

 こっくりうなずく僕の頭を、ぽんぽんした透夜が海を振りかえる。


「だって」

 しずかに海が、目を閉じる。

「……わかった」


 僕の、アーシェの、海の目をのぞきこんだ透夜が、微笑んだ。


「皆の気もちは、わかった。カイと海がいれば、大抵のことは何とかなるだろ。何ともならなくなったら、呼べばいい。バギォ王国の『よい子の隠密団』はいつでもお仕事、募集中だから。転生者とその血縁同盟割引にしてあげる」

 片目をつぶってくれる透夜が、かっこいー!


 透夜の肩がきらめいて

 パキィイイン──!

 防音の結界が、解かれてく。



「ユィリ──! 何もされなかった!? だいじょうぶ!?」

 駆け寄って抱きしめてくれるセゥスが、涙目だ。


「のろけを聞かされただけだよ」

 透夜が笑った瞬間、音もさせずに常葉が透夜の後ろに立っていた。


「海は、だいじょうぶだ、カイ。心配ない。
 もし何かあったら呼べばいい」

 わしゃわしゃカイの頭をなでなでした透夜が、手をあげる。


「じゃあな。元気で」

 微笑みが残像のようにかすんで、消えた。常葉といっしょに。


「ありがとうございました、師匠! 常葉も!」

「感謝する!」

「ありがとう!」

「元気でね!」

「またねー!」

 カイとセゥス、ノゥス、僕とアーシェの声に、手をふる海に、透夜と常葉が手を振りかえしてくれる笑顔が、見えた気がした。




「それで、ゆりちゃん、どういうお話になって、ゆりちゃんをさらった男と仲よくしてるのか、教えてくれるかな……?」

 ロドお兄ちゃんと家族の皆と、のーすちゃんの背中から、闇が噴いてる!


 きゃ──!









────────────────


 ずっと読んでくださって、ありがとうございます!

 すぐ減っちゃうかもですが(笑)今は! だいふくユィリのお話が、私のお話のなかで、いちばん! お気に入りをいただいているお話になりました……!

 きがるに読んでいただけたらいいなと思って、とてもきがるにはじめたお話だったのですが、もう文字数も22万字に! 途中で骨も折れましたね(笑)
 10万字あったら『おお、いっぱい書いた!』と思う人なので、快挙なのです!(笑)

 ここまで続けてこられたのは、ぜんぶ、今までずっと読んでくださったあなたさま、お気に入りに入れてくださった方、いいねやエール、ご感想で応援してくださった皆さまのおかげです。

 ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございます!

 読んでくださる方がいらっしゃるなら、だいふくユィリのお話、これからもぽちぽち続けてゆけたらと思います。

 楽しんでくださったら、ユィリとセゥスと皆といっしょに、とてもとても、うれしいです!






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