悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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ちがうのです

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 皆で手をふって海くんをお見送りしました!

 背中も、かっこいー海くん。
 さすが多紀くんの、おにいちゃん!

 ぷにぷにの頬で、ぶんぶんしていた僕を、ひょいと抱きあげたのは、セゥスさまです。

「じゃあユィリ、さっそくだけれど、出発しよう。僕の腕のなかで眠っていたらいいからね」

 なでなでしてくれるセゥスさまが、僕を抱っこしたまま移動するつもりみたいです?


「……まあ、ほんとに兄貴は、ゆーりを一番、持ってるよな……」

 僕、持ちものみたいです?
 せめて、だいふく……ちがう、ぬいぐるみがよかった!


「もうロベナ王国に帰るのか!? なにか謝礼をと考えていたんだが……」

 きんにくひめが、あわあわしてる!


「はやくない!? 観光しようよ、おいしいお菓子のお店があるんだよ!」

 トトラが僕の腕を引っ張ろうとするのを、セゥスさまが、はたき落としてる。

「きゃ──♡」

 トトラが、よろこんでるみたいです……?


「すぐ帰ったほうがいい。はやく準備を」

 うながしてくれる、おかあさんを止めたのは、アーシェくんだった。


「俺のことは、いちおう噂になってて、セゥスさまが護衛の衛士もつけてくれてて『国で保護する伝説の治癒士』みたいになってるし、皆が顔を知ってくれてるし、あんまり他に見たことない、ぴんくの髪とぴんくの目で目立つし、さらっても、すぐバレちゃうから狙いにくいと思うんだけど、ユィリくんのこと、誰も知らないよね?」

 知らないね。
 ちょこっとした、すり傷しか治せないっていうのも、嘲笑うネタみたいになってたから、誰も本気で治癒魔法が使えると思ってないと思う。
 見た目は、どこにでもいる、もっちもっちだいふくだよ。

 埋没する僕!

 こっくりうなずく僕に、アーシェくんの、いつも可愛い瞳が鋭く光った。

「危険だよ。狙われる。ロドア家はお金持ちっていう噂だけど、貴族でも下位貴族でしょう。高位貴族街みたいに衛士がたくさんいて、出入りが厳しく監視されるわけじゃない、自前の衛士もいないでしょう?」

 僕の家族みんなの顔が、けわしくなった。

「いくらカイが強い、サザさんが強いって言ったって、ふたりでしょう。10人なら何とかなっても、20人、30人ってなったら?
 ちょっとした隙をついて、ユィリくんが、さらわれちゃったら?」


『そんなことはない』誰も、言い切れなかった。

 僕は、ほんのさっきまで、さらわれていた。
 透夜でさえ、毒の海は越えられない。

 その向こうに連れていかれたら、僕はもう、帰ってこられない。
 皆に、もう逢えない。


「ロベナ王国のロドア家に戻るのは、危険だと思う。できるなら別の場所を──」

「俺の家に来ればいい」

 のーすちゃんが胸を叩いてくれるのに、アーシェは眉をさげた。

「ユィリくんのことを調べたら、すぐにノゥス殿下やセゥスさまに行きあたるだろうね」

 ぐ、とふたりが唇をかんだ。

「……どうすれば……」

 顔をゆがめる、凛々しいおかあさんに僕はちっちゃな手をあげる。

「はい!」

「どうした、ゆりちゃん。
 今、おかあさんは大事な話をしてるんだ。
 すこしだけ、いい子で待てるかな?」

 心配そうに眉をさげてくれるおかあさんが、僕に激甘です。

 じゃなかった! 待って、おかあさん! 僕の発言が
『おなかへった!』とか
『おやつは?』とか
『セゥスさま、抱っこして!』とかだと思ってない!?


「ゆーり、ほら、お菓子」

 のーすちゃんが、お菓子を渡してくれる。


「お茶を淹れてあげるからね」

 アーシェくんが、お茶を淹れてくれる。


「ごはんは、もうちょっとだけ待ってね」

 従僕さんに「すぐにご飯を用意してくれる?」言ってくれたトトラが、申しわけなさそうに眉をさげる。


「はい、ユィリ、抱っこ」


 ぎゅう


 とろけるように微笑んだセゥスさまが、抱っこしてくれました!


 うれしいけれど、ちがうのですー!







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