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もぐもぐ
しおりを挟むびくっとする僕に、セゥスが凛々しい眉をつりあげる。
「そんなことを初対面のあやしさ満開の輩の前で言っては、いけません!」
最愛に、しかられました!
「我らがお守りしたくとも、初対面のあやしすぎる輩の前で、ゆりさまが打ち明けられては、何の意味もないではないですか!」
カイにも、しかられました!
しょんぼりな僕。
「……ごめんなさい……」
ちょこっと反省しました。
ちょこっとなのは、ザイお兄ちゃんは、わるい人じゃないと思うからなんだよ。
だって、ひどい人は、見たらわかるよ。瞬間だよ。
どんなに表情や装いで、つくろっても、性根は見えるよね。
隠せてると思ってるのは、本人だけなのです。
「おお、もっちもっちは、俺を信じてくれるんだな。ありがとう」
『あやしさ満開』認定されたザイお兄ちゃんが、僕の頭をなでなでして笑ってくれました。
えへへ。うれしいのです。
「……ユィリ……?」
「……ゆりさま……?」
カイとセゥスの激おこゲージは、満タンを、振り切ったようです……?
きゃ──!
「まあまあ、もっちもっちの、することだから」
なでなでしてくれる大公が、あまやかしてくれるのに、うれしくなっちゃう僕は、やっぱり、よわよわかも……!
「この菓子、見た目はいまいちなんだけど、最高にうまいんだ。カェザ大公国特産だぞ」
「おお!」
すすめられるまま、茶色いお菓子を頬張りました。さくっさくのパイの奥から甘い蜜が、じゅわっと……!
「うま──!」
飛び跳ねる僕に、ザイお兄ちゃんが笑う。
「よかった」
「ユィリ!」
「ゆりさま!」
「おいしーよ! セゥスも、カイも、食べて!」
にこにこの僕に、セゥスもカイも、肩を落とした。
「もう、ユィリはすぐ人を信頼するんだから」
「心配で胃の腑に穴が空きそうです」
あわあわカイのお腹に手をかざそうとした僕を、カイの手が止める。
「……『えい!』とか、絶対に、だめですからね……?」
カイの目が、こわい……!
「ユィリ……? さっきの僕たちの注意を、ちゃんと聞いていたかな……?」
セゥスの目が、こわい……!
あのあの、この間までセゥスさまが僕のことをしかってくれるときは『だめだよ、ユィリ』厳しくも、やさしい感じだったのですが……!
カイは、僕のこと、あんまり? 全然? しからなかったのですが……!
ふたりの目も言葉も、激おこだよ……!
きゃ──!
も、もしかして、これは僕が、つよつよになるための試練なの……!?
つよつよへの道、きびしい……!
涙目になっちゃう僕の頭を、ザイお兄ちゃんが、ぽふぽふしてくれる。
「へぇえ。もっちもっちは、ただの、もっちもっちじゃないってわけか。
さすがカェツァのあるじ」
大公の瞳が切れあがる。
「……わがきみに手を出したら、しにますよ」
カイの瞳が凍えて、カェザイは笑った。
「簡単に負ける気はないが、いいだろう。
カェザ大公国の秘密を公開しよう」
長い足を組みかえるザイお兄ちゃんに、あわあわ僕はお菓子に伸ばしていた手をひっこめた。
「ああ、食べてていいよ、もっちもっち」
なでなでしてくれるザイお兄ちゃんが、やさしいです。
もぐもぐ。
「うまー♡」
「ユィリ、ほら、ついてる」
セゥスが口元をぬぐってくれる。
「ゆりさま、お茶をどうぞ」
カイがお茶を淹れてくれる。
僕にやさしくしてくれながらも警戒するセゥスとカイの瞳を流して、カェザイは微笑んだ。
「大公家に生まれた子息は全員、孤児として大陸中に捨てられる。大公家に連なる名と、外れぬ指輪を持たされて。
多少の知力があれば、自分がカェザ大公家の血を継いでいると理解する。孤児が独力で大陸を踏破し、カェザ大公国に戻ってくる。
この試練を成し遂げた者だけが、カェザ大公になる資格を与えられる」
カェザイの瞳が、青い水の魔力にひらめいた。
「カェツァ。きみにはカェザ大公国、大公になる資格がある」
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