152 / 256
もぐもぐ
びくっとする僕に、セゥスが凛々しい眉をつりあげる。
「そんなことを初対面のあやしさ満開の輩の前で言っては、いけません!」
最愛に、しかられました!
「我らがお守りしたくとも、初対面のあやしすぎる輩の前で、ゆりさまが打ち明けられては、何の意味もないではないですか!」
カイにも、しかられました!
しょんぼりな僕。
「……ごめんなさい……」
ちょこっと反省しました。
ちょこっとなのは、ザイお兄ちゃんは、わるい人じゃないと思うからなんだよ。
だって、ひどい人は、見たらわかるよ。瞬間だよ。
どんなに表情や装いで、つくろっても、性根は見えるよね。
隠せてると思ってるのは、本人だけなのです。
「おお、もっちもっちは、俺を信じてくれるんだな。ありがとう」
『あやしさ満開』認定されたザイお兄ちゃんが、僕の頭をなでなでして笑ってくれました。
えへへ。うれしいのです。
「……ユィリ……?」
「……ゆりさま……?」
カイとセゥスの激おこゲージは、満タンを、振り切ったようです……?
きゃ──!
「まあまあ、もっちもっちの、することだから」
なでなでしてくれる大公が、あまやかしてくれるのに、うれしくなっちゃう僕は、やっぱり、よわよわかも……!
「この菓子、見た目はいまいちなんだけど、最高にうまいんだ。カェザ大公国特産だぞ」
「おお!」
すすめられるまま、茶色いお菓子を頬張りました。さくっさくのパイの奥から甘い蜜が、じゅわっと……!
「うま──!」
飛び跳ねる僕に、ザイお兄ちゃんが笑う。
「よかった」
「ユィリ!」
「ゆりさま!」
「おいしーよ! セゥスも、カイも、食べて!」
にこにこの僕に、セゥスもカイも、肩を落とした。
「もう、ユィリはすぐ人を信頼するんだから」
「心配で胃の腑に穴が空きそうです」
あわあわカイのお腹に手をかざそうとした僕を、カイの手が止める。
「……『えい!』とか、絶対に、だめですからね……?」
カイの目が、こわい……!
「ユィリ……? さっきの僕たちの注意を、ちゃんと聞いていたかな……?」
セゥスの目が、こわい……!
あのあの、この間までセゥスさまが僕のことをしかってくれるときは『だめだよ、ユィリ』厳しくも、やさしい感じだったのですが……!
カイは、僕のこと、あんまり? 全然? しからなかったのですが……!
ふたりの目も言葉も、激おこだよ……!
きゃ──!
も、もしかして、これは僕が、つよつよになるための試練なの……!?
つよつよへの道、きびしい……!
涙目になっちゃう僕の頭を、ザイお兄ちゃんが、ぽふぽふしてくれる。
「へぇえ。もっちもっちは、ただの、もっちもっちじゃないってわけか。
さすがカェツァのあるじ」
大公の瞳が切れあがる。
「……わがきみに手を出したら、しにますよ」
カイの瞳が凍えて、カェザイは笑った。
「簡単に負ける気はないが、いいだろう。
カェザ大公国の秘密を公開しよう」
長い足を組みかえるザイお兄ちゃんに、あわあわ僕はお菓子に伸ばしていた手をひっこめた。
「ああ、食べてていいよ、もっちもっち」
なでなでしてくれるザイお兄ちゃんが、やさしいです。
もぐもぐ。
「うまー♡」
「ユィリ、ほら、ついてる」
セゥスが口元をぬぐってくれる。
「ゆりさま、お茶をどうぞ」
カイがお茶を淹れてくれる。
僕にやさしくしてくれながらも警戒するセゥスとカイの瞳を流して、カェザイは微笑んだ。
「大公家に生まれた子息は全員、孤児として大陸中に捨てられる。大公家に連なる名と、外れぬ指輪を持たされて。
多少の知力があれば、自分がカェザ大公家の血を継いでいると理解する。孤児が独力で大陸を踏破し、カェザ大公国に戻ってくる。
この試練を成し遂げた者だけが、カェザ大公になる資格を与えられる」
カェザイの瞳が、青い水の魔力にひらめいた。
「カェツァ。きみにはカェザ大公国、大公になる資格がある」
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
あなたの愛したご令嬢は俺なんです
久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」
没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―
猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。
穏やかで包容力のある長男・千隼。
明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。
家事万能でツンデレ気味な三男・凪。
素直になれないクールな末っ子・琉生。
そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。
自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。
【本編完結】攻略対象その3の騎士団団長令息はヒロインが思うほど脳筋じゃない!
哀川ナオ
BL
第二王子のご学友として学園での護衛を任されてしまった騎士団団長令息侯爵家次男アルバート・ミケルセンは苦労が多い。
突撃してくるピンク頭の女子生徒。
来るもの拒まずで全ての女性を博愛する軽薄王子。
二人の世界に入り込んで授業をサボりまくる双子。
何を考えているのか分からないけれど暗躍してるっぽい王弟。
俺を癒してくれるのはロベルタだけだ!
……えっと、癒してくれるんだよな?
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。