悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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 転移門を起動させるために魔紋の部屋で頑張ってくれた多くの魔法士たちが、セゥスとノゥスに、うやうやしく、こうべを垂れた。

 僕とカイとは、おつきだよ。

「おかえりなさいませ、セゥスさま、ノゥスさま、ユィリさま」

 おお! 顔と名前を知っててくれたみたい!

 名前を呼ばれるなんて思いもしなかった僕が、ぴょこんと跳びあがる。
 もっちもっち揺れる頬に、セゥスとノゥスとカイが笑った。


「ユィリ、かわいー」

 なでなでしてくれるセゥスが、やさしくて、かわいくて、うれしいんだけど、でろでろに僕をあまやかしてくれるよ。

 僕、つよつよになりたいのに!

「セゥス、僕を、あんまり甘やかしたらだめなの。ね?」

 セゥスの若葉の瞳を見つめて真剣に言ってみました。

「無理」

 とってもいい笑顔で断られました。
 ノゥスとカイも、うむうむしてる。


「あ、あの、そちらはカイ殿で、そちらは……?」

 ロベナ王国の魔法士さんたちが戸惑ってるのに首をかしげた僕は、ぴょこんと再び跳びあがる。

「海くん──!?」

 もちもち揺れる頬に、海が笑った。

「ついてきた」

「え、いや、えぇ!?」

 仰け反る僕に、海が笑う。

「また何かあったら大変だろ。俺は水の魔力が使える。カイがつらくなったときの補給の人員は、いた方がいい。
 どんな大変な病気か、わからないんだから」

 心配してくれる海くんの言葉に、僕は顔を引き締めた。

「ありがとう、海くん。
 のーすちゃん、はやく、くーちゃんのところへ!」

「わかった! 馬車を用意してくれ、すぐ向かう!」

「は!」

 従僕さんたちが用意してくれた馬車に乗りこんで、王宮の最奥に鎮座する転移門の宮から、ノゥスとクゥスが暮らす王都郊外の邸まで向かう。

「くーちゃん、急に具合がわるくなったの? この間まで、元気そうだったよね?」

 心配で聞いた僕に、のーすちゃんは目を伏せた。

「……ああ。もっちもっちが帰ってこないから、心配して、しょげてたんだけど、だんだん寝台から起きあがれなくなって──」

 ノゥスの瞳が、揺れる。

「きっとユィリは頑張ってくれるけれど、ユィリにもできないことが、きっとある。過度な期待はしないように」

 しずかにセゥスが告げる。

 セゥスはクゥスのお兄ちゃんだから、のーすちゃんと同じくらい、くーちゃんに助かってほしいだろうに、僕ができなかったときのことを思って、防波堤をつくってくれる。

「……わかってる。来てくれて、ありがとう、ゆーり。兄貴も」

 ノゥスの言葉に、うなずいた僕は、いっしょにうなずくセゥスを見あげる。

「ありがとう、セゥス。僕、全力でがんばるよ」

 ……ああ、ちがう。

 100%で頑張ったら、僕はいつまでたっても、よわよわの僕のままだ。

 101%でがんばろうとしたら、1%分、成長できるかもしれない。

 自分の限界を、自分で決めてしまったら、そこでお終いだ。
 伸びしろだって、なくなってしまう。

 限界だと思っているところを越えてゆけたら、きっと僕は、つよつよに……!


「101%で、がんばる!」

 両手をにぎる僕に、セゥスとカイが、海とノゥスが手を重ねてくれた。


「ユィリの、力に」


 ぜったい、くーちゃんをたすけたい。

 僕、がんばる──!




 もちもちの頬で駆けこんだ僕と皆に、寝台で真っ赤な顔をしていた、くーちゃんが目を明けた。

「……もっちもっち……?」

「くーちゃん、くるしい? 僕、がんばるからね……!」

 あふれそうな涙をこらえて、叫んだ。






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