悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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まちがうから




「ユィリは、最強の治癒士だよ」

 僕の手をつつむように、にぎったセゥスが、微笑んでくれる。

「とっても誇らしい。尊敬する。
 セゼァおばあさまを救ってくれて、ありがとう」

 抱きしめて、笑ってくれる。


 あなたが笑ってくれたら。

 あなたが抱きしめてくれたら。

 いちばん、うれしい。


 火照る頬を、セゥスの胸にうずめたら、抱きしめてくれる腕がつよくなる。


「……ゆりさま……?」

 カイの

「皆の前だぞ!」

 海くんの

「兄貴も、人目をはばかれ!」

 のーすちゃんの、かっこいーお顔が、びきびきです!



「セゼァさま、お食事に気をつけて参りましょう」

 コホの進言に、セゼァおばあちゃんは渋いお顔だ。

 つらい記憶を思いだすように、コホは目をふせた。

「……セゼァさまのおとうさまは、何が起こっているのか分からないうちに、足が動かなくなり、そのまま……ほんとうに、あっという間でした。
 医士には、原因不明だと。対処のしようがないと言われたのです」

 思いだしたのだろう、セゼァの顔がゆがむ。
 ネヤおじいちゃんも、セァナも、セゥスも、いたましそうに目をふせた。

「セゼァさまを、ユィリさまが、皆さまが、救ってくださったのです。
 ご指導は謹んで受けるべきです!
 セゼァさまのお命をのばすことができるかもしれないなら、なんだって……!」

 かすれるコホの声に、瞳ににじむ涙に、セゼァが息をのむ。

「……コホ……」

「そ、そうだよ、セゼァ! ぼ、僕も、いっしょの食事で、がんばるから……!」

 ネヤおじいちゃんが、涙目だ。

「いっしょに、がんばりましょう、おかあさま」

 微笑むセァナを、ネヤを、コホを見つめたセゼァは、うなずいた。

「……助言も、傷を治してくれたことも、ありがとう、もっちもっち」

 ささやいたセゼァが寝台から、のーすちゃんを見あげる。

「敵の俺に、倒れるほどの魔力を注いでくれたことを、感謝する」

 陽の瞳を見開いたノゥスは、微笑んで首をふった。

「カイと、海にも」

「心から、ありがとう」

 セゼァが胸に手をあてる。
 ネヤも、セァナも、コホも、胸に手をあてた。

「もっちもっちに、カイくんに、ウミくんに、アーシェくんに、ノゥスに、セゥスに、ありがとう」

 膝を折ろうとする皆を、僕のちいさな手が止める。

「お気もちを、ありがとうございます」

 ふわふわ熱い頬で、皆と笑った。


「……その、もっちもっち……ノゥスに逢わせてくれたことも……ありがとう」

 ぽそぽそ告げるネヤおじいちゃんの瞳が涙でにじんだ。

「……僕たちのせいで、伴侶(予定)契約を破棄させてしまったのに……おかあさまだけじゃない、フォクト家を救ってくれた」

 セァナの手が、僕の手をにぎってくれる。

「ごめんなさい、ユィリくん」

 セァナの涙が、僕の頬に降ってくる。

「……ありがとう」

 涙の瞳で、笑ってくれる。


「まちがわないほうが、いいのかもしれない。でも、まちがうから、気づくことができる。
 まちがうから、やさしい方へ進んでゆける」

 僕は、セァナの手をにぎる。

 差しだしてくれるネヤおじいちゃんの手を、セゼァおばあちゃんの手をにぎる。


「セゥスのたいせつな、フォクト家の皆さまのお力になれたことを、セゥスの伴侶(予定)として、心から、よろこばしく思います」






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