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まちがうから
「ユィリは、最強の治癒士だよ」
僕の手をつつむように、にぎったセゥスが、微笑んでくれる。
「とっても誇らしい。尊敬する。
セゼァおばあさまを救ってくれて、ありがとう」
抱きしめて、笑ってくれる。
あなたが笑ってくれたら。
あなたが抱きしめてくれたら。
いちばん、うれしい。
火照る頬を、セゥスの胸にうずめたら、抱きしめてくれる腕がつよくなる。
「……ゆりさま……?」
カイの
「皆の前だぞ!」
海くんの
「兄貴も、人目をはばかれ!」
のーすちゃんの、かっこいーお顔が、びきびきです!
「セゼァさま、お食事に気をつけて参りましょう」
コホの進言に、セゼァおばあちゃんは渋いお顔だ。
つらい記憶を思いだすように、コホは目をふせた。
「……セゼァさまのおとうさまは、何が起こっているのか分からないうちに、足が動かなくなり、そのまま……ほんとうに、あっという間でした。
医士には、原因不明だと。対処のしようがないと言われたのです」
思いだしたのだろう、セゼァの顔がゆがむ。
ネヤおじいちゃんも、セァナも、セゥスも、いたましそうに目をふせた。
「セゼァさまを、ユィリさまが、皆さまが、救ってくださったのです。
ご指導は謹んで受けるべきです!
セゼァさまのお命をのばすことができるかもしれないなら、なんだって……!」
かすれるコホの声に、瞳ににじむ涙に、セゼァが息をのむ。
「……コホ……」
「そ、そうだよ、セゼァ! ぼ、僕も、いっしょの食事で、がんばるから……!」
ネヤおじいちゃんが、涙目だ。
「いっしょに、がんばりましょう、おかあさま」
微笑むセァナを、ネヤを、コホを見つめたセゼァは、うなずいた。
「……助言も、傷を治してくれたことも、ありがとう、もっちもっち」
ささやいたセゼァが寝台から、のーすちゃんを見あげる。
「敵の俺に、倒れるほどの魔力を注いでくれたことを、感謝する」
陽の瞳を見開いたノゥスは、微笑んで首をふった。
「カイと、海にも」
「心から、ありがとう」
セゼァが胸に手をあてる。
ネヤも、セァナも、コホも、胸に手をあてた。
「もっちもっちに、カイくんに、ウミくんに、アーシェくんに、ノゥスに、セゥスに、ありがとう」
膝を折ろうとする皆を、僕のちいさな手が止める。
「お気もちを、ありがとうございます」
ふわふわ熱い頬で、皆と笑った。
「……その、もっちもっち……ノゥスに逢わせてくれたことも……ありがとう」
ぽそぽそ告げるネヤおじいちゃんの瞳が涙でにじんだ。
「……僕たちのせいで、伴侶(予定)契約を破棄させてしまったのに……おかあさまだけじゃない、フォクト家を救ってくれた」
セァナの手が、僕の手をにぎってくれる。
「ごめんなさい、ユィリくん」
セァナの涙が、僕の頬に降ってくる。
「……ありがとう」
涙の瞳で、笑ってくれる。
「まちがわないほうが、いいのかもしれない。でも、まちがうから、気づくことができる。
まちがうから、やさしい方へ進んでゆける」
僕は、セァナの手をにぎる。
差しだしてくれるネヤおじいちゃんの手を、セゼァおばあちゃんの手をにぎる。
「セゥスのたいせつな、フォクト家の皆さまのお力になれたことを、セゥスの伴侶(予定)として、心から、よろこばしく思います」
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