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降臨
しおりを挟む「申し訳ございません、ジゼさま」
頭を下げるセバに、ジゼは首を振る。
「セバはよくやった。だがきみを傷つけてしまって、すまない」
頭をさげるジゼに
「いえ、そんな──! ……っ!」
跳びあがりかけた桜の髪の少年は、悲鳴とともによろめいた。
「危ない!」
ジゼが少年を支える。
少年とジゼがきらきら輝いて、桜の花が舞った気がした。
その姿を見つめたリトは、息を呑む。
…………え、これ、もしかして……BLゲームの邂逅イベント…………?
確か、このシーン、あのバババババって見えたスチルのなかにあった、気がする。
そうだ、悪漢に絡まれているところをジゼが助けるんだけど、怪我しているのを見て邸に連れ帰って仲良くなる。
確かBLゲームでは16歳とかだったと思うけど、12歳で起きた?
前倒しになってる?
ということは、この、ふわふわの桜の髪に桜の目の男の子が、主人公だ──!
「あ、あの、僕、大丈夫です、歩けます」
頑張って歩こうとする少年が膝から崩れるのをジゼが支える。
「無理をすると悪化する。セバ、馬車を。テデにすぐ診てもらおう」
主人公を抱きあげたジゼは、リトに告げる。
「すまない、リト。今日はこれで帰る」
「勿論、でし、ジゼしゃま」
頷いたリトは、ジゼの後ろに続いた。
ほっそりして見えるのに鍛えあげられた腕のなかで、うっとりしたように桜の瞳がジゼを見あげる。
頬を朱く染める少年の髪が、ジゼの胸をくすぐった。
リトはぼんやり、ジゼと、その腕のなかの桜の髪の少年を見つめる。
これから素晴らしい恋が始まるのだと予感させる最初のイベントだ。
フラッシュバックのように見えたスチルより、ずっと輝かしくて、ずっとお似合いで、ずっと可愛らしいふたりが、抱きあうように馬車に乗り込む。
ジゼと主人公を応援することが、リトの使命だ。
ジゼが、しあわせになってくれることが、リトのしあわせだ。
なのに、どうして鼻の奥がつんとするんだろう。
「リト?」
首を傾げたセバが呼んでくれる。
鼻を啜ったリトは、あわてて馬車に乗り込んだ。
抱き合うように密着したままのふたりに、胸の奥がぎゅうっとした。
ぺしょりと耳としっぽを垂れて帰ってきたリトと、ジゼに抱きかかえられた桜の髪の少年とを迎えたテデは、目を剥いた。
「お、おかえりなさいませ、ジゼさま。……そちらの方は、お怪我を?」
ジゼの腕のなかの少年を、テデの緑の目が刺した。
「すぐ診てくれ、テデ。こちらの手落ちで、怪我をさせてしまった」
ジゼの言葉に、少年はぶんぶん首を振る。
「そんな、たすけてくださったのに──! 治療まで、ありがとうございます」
丁寧に頭をさげる少年に、テデの目から剣呑な光が消える。
「見せてください」
「は、はい。足を捻ったみたいで……」
「かなり腫れていますね。これは歩けない。……虚言ではないようで、ほっとしました」
少年の足を診たテデが吐息する。
「失礼だぞ、テデ」
ジゼに叱責されたテデが、ぷくりと頬を膨らませた。
「解らないジゼさまが鈍いんです。リトの耳としっぽだって、ぺしゃんとしてるじゃないですか!」
ぴょこんとリトは跳びあがる。
「はぅ!」
飛び火した!
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