102 / 252
だいしゅき
しおりを挟むあでやかな花々が咲き誇る庭園を案内してくれながら申し訳なさで涙目なルァルとおかあさんを、ちっちゃいレォンが慰めてる。
「もう気にするな。笑ってほしい」
ふうわり笑うレォンが、天使だ。
「はぅあ! レォンしゃま、てんし!」
声に出してしまったリトに、皆が真っ赤な頬でうむうむしてる。
花の蜜の香に混じって、甘い匂いがする。
ぽふぽふ、リトのしっぽが揺れて、レォンのしっぽも、不思議そうにぽしぽしした。
涙を拭った母帝とルァルが、笑顔で庭園の奥に案内してくれる。
ぱたぱたちっちゃな羽をはためかせたレォンが足を踏み入れた瞬間
ばらららっぱぱぱぱ、らーらーらー!
ラッパと竪琴が鳴り響く。
「レォンさま、ルディア帝国へ、ようこそいらっしゃいませ!」
侍従や侍従たち皆が、真っ白な雪を振りまいた。
きらきら落ちてくる雪の結晶と、奏でられる音楽に、レォンが目を瞠る。
花々に彩られた庭園の奥には、大きな大きな真っ白なケーキの塔が聳えたつ。
『レォンさま ようこそ ルディアへ』
きらびやかな精霊語の飴細工が、ふわふわのケーキを彩った。
「レォンさま、いらっしゃいませ!」
「ルディアを滅ぼさないでくださって、ありがとうございます!」
「レォンさまのご厚情を、心から感謝申しあげます!」
「ようこそ、レォンさま!」
「ルディアへ!」
皆の笑顔が、感謝の声が、歓迎の声が降ってくる。
闇の瞳をまるくしたレォンは、高いケーキの塔と、皆の笑顔と、舞い落ちる雪を見あげた。
ジゼが、さっと指を振る。
細かに撒かれた氷の粒が、もうすぐ夏の陽射しに溶けて、虹の弓を空に描いた。
「レォンさまに、感謝を」
笑顔の皆が、一斉にこうべを垂れた。
一生懸命準備してくれたのだろう、ひとりひとりの顔を見あげたレォンのちいさな顔が、くしゃりと歪む。
「ふぇ……!」
泣きじゃくるレォンを、リトのちいさな腕が抱きしめた。
「レォンしゃま、ありあと、ござまし。皆、レォンしゃま、だぃしゅきでし!」
「ふぇえ──!」
あふれる涙を抱きしめるリトのしっぽが、ぶんぶんだ。
「レォンさま、これも召しあがってください!」
「是非、こちらも!」
「皆で一生懸命作りました!」
「どちらがおこのみでしょうか?」
菓子職人の皆とたくさんのお菓子のお皿に囲まれたレォンの闇の瞳が、きらきらだ。
ほんのり赤い涙の痕のまなじりが、笑顔のやさしい目じりに変わってく。
ぽふぽふしっぽを揺らしたリトは、レォンがたくさんお菓子を食べられるように、口のなかの甘みを爽やかに洗い流し、消化をたすける緑花茶を淹れる。
「リト、お菓子、うまい! 喰え!」
両手にお菓子を持ったレォンの笑顔に、リトはとろけた顔で笑う。
「レォンしゃま、元気なた、よかたでし」
隣のジゼも一緒に微笑んでくれる。
「心無い言葉をお赦しくださる寛大な御心に感銘を覚えた」
この感想の違い!
しょんぼりしたリトに、目を見開いたジゼがわたわたしてる。
「ど、どうした、リト!」
「……僕、あんぽんたんでし……」
ジゼしゃまの従僕に、ふさわしくないかも──!
1,590
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる