【完結】もふもふ獣人転生

  *  ゆるゆ

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だいしゅき

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 あでやかな花々が咲き誇る庭園を案内してくれながら申し訳なさで涙目なルァルとおかあさんを、ちっちゃいレォンが慰めてる。

「もう気にするな。笑ってほしい」

 ふうわり笑うレォンが、天使だ。

「はぅあ! レォンしゃま、てんし!」

 声に出してしまったリトに、皆が真っ赤な頬でうむうむしてる。

 花の蜜の香に混じって、甘い匂いがする。
 ぽふぽふ、リトのしっぽが揺れて、レォンのしっぽも、不思議そうにぽしぽしした。

 涙を拭った母帝とルァルが、笑顔で庭園の奥に案内してくれる。

 ぱたぱたちっちゃな羽をはためかせたレォンが足を踏み入れた瞬間

 ばらららっぱぱぱぱ、らーらーらー!

 ラッパと竪琴が鳴り響く。

「レォンさま、ルディア帝国へ、ようこそいらっしゃいませ!」

 侍従や侍従たち皆が、真っ白な雪を振りまいた。
 きらきら落ちてくる雪の結晶と、奏でられる音楽に、レォンが目を瞠る。

 花々に彩られた庭園の奥には、大きな大きな真っ白なケーキの塔が聳えたつ。

『レォンさま ようこそ ルディアへ』

 きらびやかな精霊語の飴細工が、ふわふわのケーキを彩った。

「レォンさま、いらっしゃいませ!」
「ルディアを滅ぼさないでくださって、ありがとうございます!」
「レォンさまのご厚情を、心から感謝申しあげます!」
「ようこそ、レォンさま!」
「ルディアへ!」

 皆の笑顔が、感謝の声が、歓迎の声が降ってくる。

 闇の瞳をまるくしたレォンは、高いケーキの塔と、皆の笑顔と、舞い落ちる雪を見あげた。

 ジゼが、さっと指を振る。
 細かに撒かれた氷の粒が、もうすぐ夏の陽射しに溶けて、虹の弓を空に描いた。

「レォンさまに、感謝を」

 笑顔の皆が、一斉にこうべを垂れた。

 一生懸命準備してくれたのだろう、ひとりひとりの顔を見あげたレォンのちいさな顔が、くしゃりと歪む。

「ふぇ……!」

 泣きじゃくるレォンを、リトのちいさな腕が抱きしめた。

「レォンしゃま、ありあと、ござまし。皆、レォンしゃま、だぃしゅきでし!」

「ふぇえ──!」

 あふれる涙を抱きしめるリトのしっぽが、ぶんぶんだ。




「レォンさま、これも召しあがってください!」
「是非、こちらも!」
「皆で一生懸命作りました!」
「どちらがおこのみでしょうか?」

 菓子職人の皆とたくさんのお菓子のお皿に囲まれたレォンの闇の瞳が、きらきらだ。
 ほんのり赤い涙の痕のまなじりが、笑顔のやさしい目じりに変わってく。

 ぽふぽふしっぽを揺らしたリトは、レォンがたくさんお菓子を食べられるように、口のなかの甘みを爽やかに洗い流し、消化をたすける緑花茶を淹れる。

「リト、お菓子、うまい! 喰え!」

 両手にお菓子を持ったレォンの笑顔に、リトはとろけた顔で笑う。

「レォンしゃま、元気なた、よかたでし」

 隣のジゼも一緒に微笑んでくれる。


「心無い言葉をお赦しくださる寛大な御心に感銘を覚えた」

 この感想の違い!


 しょんぼりしたリトに、目を見開いたジゼがわたわたしてる。

「ど、どうした、リト!」

「……僕、あんぽんたんでし……」


 ジゼしゃまの従僕に、ふさわしくないかも──!





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