103 / 252
大人な息子
しおりを挟むぺしょんとしたリトの耳としっぽに、ジゼが叫ぶ。
「あんぽんたんは俺だから──!」
後ろに控えてくれていたセバの銀縁眼鏡の向こうの瞳が遠くなる。
「……否定できないところが……」
喉を鳴らしたゲォルグが、ジゼとリトの頭をなでなでしてくれた。
「少しずつ、頑張ってみればいい」
「ふぇ……! ゲ……ルグしゃま、やさし!」
言えなかった!
「ごめなしあ」
更に項垂れるリトの頭を、ジゼよりごつごつのおっきな手がなでなでしてくれる。
「ルグでよい。──セバにしか呼ばせぬ名だったが、よいか、セバ」
名指しされたセバが、耳まで真っ赤な顔を覆ってうずくまってる。
「セバ?」
真っ赤な耳だけを覗かせたセバが、ふるふる首を振った。
「……いやです」
ちっちゃな、ちっちゃな声がした。
「──っ!」
耳まで真っ赤になった顔を、ゲォルグが覆う。
燃える頬で跳びあがったリトはぶんぶん頷いた。
「セバだけ、名前、たいしぇつ! 僕、らめでし!」
あわあわして噛んだ!
真っ赤なセバとゲォルグに、ジゼの目が生暖かくなってる。
「父上、セバと一緒に馬車へどうぞ。リトが父上を呼ぶのは、ゲオさまでいかがでしょうか」
「う、うむ!」
「ゲオしゃま!」
ぽふぽふしっぽを揺らして見あげたら、真っ赤なままで笑ってくれた。
わしゃわしゃ頭を撫でてくれた指が、離れてく。
「……セバ、ちょっと」
セバの細い腰をガシッと掴んだゲォルグが、颯爽と馬車に戻ってく。
にやにやしてる御者さんが遠くで手を挙げた。
見えるんだよ、獣人だから! えへん!
「はは、ゲォルグのセバ愛は相変わらずだな。ゲォルグと雑談しようとすると、延々と、延々と、延々とセバ愛を語られるんだ。どうしていいか、解らん」
肩を揺らしてルファ陛下が笑う。
どう見てもルァルのお兄さんにしか見えないよ──!
わ、か──!
「……も、申し訳、ございません、父がいつも、ご迷惑を……」
恥ずかしそうにジゼが頭を下げてる。
父の惚気を謝る大人な息子なジゼ、尊い──!
思わず拝むリトの前で陽の髪が揺れた。
「きみがリトかな?」
ぴょこんと跳びあがったリトは、あわててセバに習った最敬礼だ。
胸に手をあて、足を引き、深く、深く腰を折る。
引き摺る足では難しくてよろけそうになるのを、さっと伸びたジゼの腕が支えてくれる。
「おめ、かかりゅ、えぃよ、きょ、えつ、しご、く、存、じ、まし、リトでし」
がんばった!
ぷるぷるするリトに、赤くなったジゼが胸を押さえてる。
「はぅあ──! な、ななななんと愛らしい──!」
跳びあがったルファがリトに向かって突進してくるのを、駆け込んだルァルが止めた。
「母上、ジゼに殺されます」
進言に、真っ青になったルファがカタカタしてる。
「そ、な、こと、な──」
あわあわジゼを庇おうとするリトを抱っこするジゼの氷の目が、ルファを刺してる。
えぇえ──!?
も、ものすごく不敬なのでは!?
た、大変!
あわてたリトが、ぼわぼわになったしっぽで、わたわたジゼの前でちっちゃな腕を広げた。
「ジゼしゃま、わる、なぃ、でし! 僕、だめでしあ!」
1,600
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる