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リトとジゼとテデとソゾ
しおりを挟むテデは毎朝、リトに治癒魔法をかけている。
ラヴァリアとしての力に覚醒したリトにはもう、必要ないのかもしれない。しょんぼりしたテデが治癒を止めたら、リトの足が痛みだしたという。
「すまないが治癒を継続してくれないか」
ジゼさまに頼まれなくても、よろこんで。
自分にできることがあるのは、とてもうれしい。
「テデ、いつも、ありあと、ござまし」
赤い頬でリトが笑ってくれたら、ふあふあのしっぽが、ぽふぽふうれしそうに揺れたら、テデの頬まで、ふわふわ熱くなる。
リトの治療が終わったら、今日は王宮に出仕するジゼをリトと一緒にお見送りだ。
「ジゼしゃま、ちょと、待て、くだしあ」
リトのしっぽがぽわぽわ揺れて、先をゆくジゼを引きずる足で追いかけた。
「ん?」
振りかえったジゼが止まる。
「んしょ、んしょ」
背伸びするリトに気づいたジゼがふわりと屈んだら、リトのちいさな手がジゼの襟元の飾り紐にふれた。
「これ、で、ばちり、でし!」
ちょっと斜めになっていたらしい。
リトのしっぽが、誇らしげにぱふぱふしてる。
「く──!」
胸を押さえるジゼと一緒に、テデも胸を押さえた。
なんだこの愛らしい生き物は──!
毎日思う。
ふわふわの耳も、ほわほわのしっぽも、真っ赤なほっぺで笑うリトも、かわいくて、かわいくて。
ジゼさまを渡すのは、ほんとうはたまらなく悔しいけれど。
でも、ふたりがあんまりしあわせそうだから
ゆるしてあげようと、思うんだ。
「ジゼさま、どうぞ」
馬車の扉を開けた御者ソゾは、ジゼの後ろでぽふぽふしているしっぽに首を傾げる。
「今日はおひとりで出仕じゃあ?」
「リトがあんまり可愛くて」
赤い頬で告げる若が、かわいい。
隣で赤い顔で恥ずかしそうにぽふぽふしてるリトも、かわいー。
最近相思相愛になったらしいふたりは、とりあえず、ずっと傍にいたいらしい。
かわいいか。
ジェディス邸の皆は、とても生温かい目でふたりを見守っている。
あのちっちゃくて愛らしかった若が、伴侶を持つようになったか、と思うと感慨もひとしおだ。
まだちっちゃくて、かわいいけど。
これからおっきくなって、かっこよくなるんだろうなあ。
しかし、ちっちゃいふたりが赤い頬で手を繋いでるのを見ると、なんか、ほわんてするな!
リトのしっぽも、ぽふぽふだしな!
「連れていきたいんっすね、わっかりましたァ──!」
「あ、あの、重く、なて、ごめなしあ」
「へーきへーき、うちの子は、強い子だから!」
胸を叩いて笑った。
リトが乗っても、可愛い馬たちは毛玉が乗ってるか否かくらいの差だろう。全く問題ない。
いつもと違うのは、凛々しいジゼの顔がとろけてるくらいだ。
「リト、だいじょぶか、乗れるか」
手を貸そうとしたら、しゃっと伸びたジゼの手に阻まれた。
「俺が」
はい、すみません、ごめんなさい。
うやうやしく頭をさげたソゾは、リトを抱えて乗りこんだジゼを確認し、丁寧に扉を閉める。
御者席に飛び乗ったソゾは馬の首をかるくたたいた。
「よし、帝宮まで頼む」
ヒヒン!
いなないた可愛い馬たちが、ぽくぽく歩きだす。
御者としては道中の安全が第一なので、よそ見をするとかとんでもないし、車室で何て話してるかとか、何をしてるかとかは、決して興味を持ってはいけない、というのが不文律だ。
だから若がリトを抱っこしてようと、膝枕してようと、ちゅっちゅしてようと、もちろん何にも聞こえないし見えないぜ!
……はー……若も大人になったなー……
なんだか、ちょっとさみしくて。
なんだか、ちょっと誇らしい。
「到着致しやした、若!」
扉を開けたら、ジゼのくちびるが、リトのおでこにふれていた。
「し、失礼致しやしたァア──!」
あわてて閉める。
馬車の扉が開くまで、しばらくかかった。
真っ赤なジゼが、しっぽがぼわぼわの真っ赤なリトを抱っこして降りてくる。
「……開ける前に、扉を叩いてくれると、うれしい……」
『馬が止まったら開けると思ってください』とか言ったらだめなのは解ってる。
「承知いたしやしたァ!」
うやうやしく頭をさげる。
「いってらっしゃいませ、若! お気をつけて!」
「いつもありがとう、ソゾ」
まだ赤い頬で、ジゼが笑ってくれる。
「ソゾ、ありあと、ござまし!」
笑顔のリトのしっぽが、ふあふあしてる。
「リトも気をつけてな。若を頼む」
「あい!」
胸を叩くリトのしっぽが、ぽふぽふで、ソゾの顔もジゼとおそろいで、とろけてると思う。
ソゾにできるのは、馬のお世話をすること、馬車を安全に走らせることだ。
それがジゼとリトの役にすこしでも立っているなら、とてもうれしく、誇らしいと思うんだ。
────────────
ずっと読んでくださって、ありがとうございます!
みみみみみ様のリクエストで、テデと御者ソゾから見たリトとジゼ様の様子でした!
ゲオのほうが皆が呼びやすいかなと、セバだけのゲォルグの呼び名をルグに、リトのゲォルグの呼び名をゲオに変更しました。
新しいお話、はじめました!
ゲォルグ×セバです。
リトとジゼが出逢う14年前のお話です。
若くて青いゲオセバ(笑)を、もしよかったらリトとジゼと一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
えろもある予定です……!(笑)
これでリクエストの受付を終了します。今までリクエストありがとうございました!
まだ読んでくださる方がいらっしゃること、お気に入りに入れてくださる方がいらっしゃったり、いいねやエールで応援してくださる方がいらっしゃることにびっくりして、とてもとてもうれしいです。
ほんとうに、ありがとうございます!
読んでくださる方がいらっしゃるなら、今受けているリクエストが終わり次第、感謝の気持ちをめいっぱいこめて、リトとジゼのお話の2部をはじめようと思います!
近隣諸国の王侯貴族をお迎えして開催される舞踏会の準備をリトとジゼが頑張ったり、リトとジゼがもてたり(笑)一緒に踊ってお披露目したりするお話になる、予定です!(笑)
のんびり更新ですが、楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
いつも心から、ありがとうございます!
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