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ほんとうに?
しおりを挟むたくましい腕に、抱きしめられる。
あたたかなぬくもりに、つつまれる。
──いや……!
思っているはずなのに、レーシァの吐息は熱を帯びた。
非道を告げるくせに、ゼドの腕も、指も、くちびるも、やさしかった。
「ん……や……っ」
押し退けようとする指を、つかまれる。
指と指をからめられると、はじめての感触に、ふるえた。
「……ぁ、や……こんな……」
光の瞳が、瞬いた。
「手をつないだだけだぞ?」
「こ、こんな、いやらしいつなぎ方、したことない……!」
光の瞳が、点になる。
「……いやらしい……?」
からまる指が、たまらなく卑猥で、見ていられなくてレーシァは熱い頬をそらした。
「……手さえ繋がなかったのか。……これも、はじめて?」
くつくつ笑うゼドに、耳まで燃える。
「僕のはじめて、ぜんぶ、奪うって言った!」
叫んでから、気づいた。
──……これでは、奪われたいみたいだ。
「ああ、言ったな」
ゼドが喉を鳴らす。
筋肉におおわれた喉がうごくたび奪われてしまう目を、あわててそらした。
「レーシァ」
あなたがつけてくれた名を、耳元でささやいてくれる。
それだけで身体の奥が燃えるように、あまくしびれた。
くちびるが、降る。
耳に、頬に、くちびるに。
「……ん……や……」
いや
思っているはずなのに
告げているはずなのに
やさしく、やさしくついばまれるくちびるが、離れてしまうのが、さみしいなんて
まるで『やめないで』すがっているようだなんて
「レーシァ、口をあけろ」
低い声で、濡れた唇で命じられたら、まるで反射のように、口をあけてしまう。
「いい子だ」
やさしく髪をなでてくれたら、とくりと鼓動が跳ねる。
くちびるが、かさなる。
吐息が、かさなる。
ぬるりと入ってきた舌に、舌をからめとられ、あまく吸われた。
「んぁ……っ……やぁ……」
ちゅ
濡れた音が、耳を揺らす。
くちゅ
からまる舌が、とろけるように、あまい。
至上のさいわいだと思っていたはちみつよりも、ずっと、頭の芯がしびれるほど、あまい。
指のあわいを、ゼドの指がたどる。
髪を、頬をなでてくれる指に、やさしく引きよせられる。
「んん……っ」
ふかく、ふかく、口づけて、夢中になってゼドの舌を吸っていることに気づいて、耳が燃えた。
「──っ ごめ……」
「謝るな。いい子だ、レーシァ」
ちゅ
くちびるが、降る。
額に、頬に、くちびるに。
「……ん……やぁ……」
いや……?
……ほんとうに……?
メィスは口づけてくれなかった。
こんなにやさしく、ふれてくれなかった。
ちゅ
やわらかなくちびるが、ふれるたび
くちゅり
あまい舌を、からめるたびに
ちゅう
あまい舌を、あまえるように吸ってしまうたびに
からだが、あたまが、とろけてく
「レーシァ、おしりあげて」
「……ん……」
いやだった、はずなのに
抵抗しようとしていた、はずなのに
どうして、素直に言うことを聞いて……?
「や、やぁ……」
衣を剥ぎとられて、恥ずかしいのに、いやなのに、抱きしめられたら、あまえるようにすがってしまう。
頬に、耳朶に、うなじに、口づけてくれるたび
「……やぁ……」
いやがるどころか、あまえるような声がこぼれるのは
くちびるに、くちづけてほしいから?
「レーシァ」
うなじを吸いあげていたくちびるが離れて、くちびるに戻ってきてくれたら、あまくくちびるを吸ってくれたら
「んぅ……ぁっ……んん」
とろけるような、よろこびの声がこぼれるなんて、ぜったい嘘だ。
「ひゃん……!」
胸をやさしくつままれて、ビクリと熱くからだがふるえた。
「や、やだ……!」
泣きだしそうな瞳で見あげたら、ゼドの喉が鳴る。
ごくりと上下する喉が艶っぽくて見あげたら、くちびるを、くちびるで、ふさがれた。
「んんっ……んぅ……やぁ……んぁ……んっ」
胸をつままれて、ひっぱられて、いじられたら、ゾクゾクする感覚が背から耳を走ってゆく。
「きもちいい?」
きゅっ
「ぁんっ……や、や……!」
首を振るのに
「噛んでやる」
耳朶にささやきを、注がれた。
それだけで、ビクンとからだがふるえる。
「……や……」
……ほんとうに、いや……?
噛んでくれる期待に、ふるえてる……?
そんなの、いやだ。
思うのに
カリリ
「あぁん……っ」
噛んでくれたら、吸ってくれたら、嘗めてくれたら、とろける声が、あふれてく。
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