きみの騎士

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凱旋!

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 見あげた空に、白銀の星の旗がひるがえる。

 衝撃に痺れたままの腕が、ようやく痛んだ。


「見事であった、リイ」

 陽のきらめきが、たゆたうような黒髪が流れる。
 深い翠の瞳を細め、レイティアルト王太子殿下は微笑んだ。


 口元の血を拳でぬぐったリイは剣を鞘に納め、右腕を引き左手を胸にあて、膝をついて敬礼する。

 憧れだった、光騎士の礼だ。


「身にあまるお言葉を賜れましたこと、我が血族の光輝にございます」

「我が傍近くで仕えることを許す。
 よき光騎士となるよう」

 輝くようなかんばせに浮かぶやわらかな微笑みと、触れたら斬られそうな翡翠の瞳に息をのんだリイは、王太子の威厳にうやうやしく頭をさげる。

「は!」


 これで、きっと、きみのそばに








「勝ったよぉおおおおおお――――――!!!」

 シリウスと抱きあって喜んだ。
 いや正しくは、一方的に抱きついて喜んだ。


「よかったなあ、兄ちゃん。
 平民の光騎士なんて、百年ぶりだよ。
 ほい、賞金」

 いやいや、賞金の授与って気さくだな?

 渡してくれた袋はずっしり重くて、金貨がいっぱい詰まってた。


「おお!
 ばあちゃんとじいちゃんとシリウスと父ちゃんに返せる!」

「よかったなあ。
 光騎士戦に出ると、平民は借金まみれになるもんな」

 うむうむ頷く騎士に、リイはこくこく頷いた。


「こっちは光騎士になった証明の徽章な。
 持ってきたら光騎士団の寮に入れるから」

「はい!」

 手渡してくれた、白銀の星がきらめく徽章を大切に仕舞う。


「採寸するから、ちょっとそこに立って」

「は、はい!」

 女ってばれないかな、と心配したけど、全く全然微塵もばれなかったよ!

 なぜだ!!!


 騎士服ができあがるのが一か月後、初出勤も一か月後だ。
 ミナエに戻って、帰って来れる!

 貰った優勝賞金を大事に懐に仕舞ったリイは、飛ぶように駆けてくれるシリウスとミナエに戻った。


「父ちゃ――――ん!
 勝ったぁああああ――――――!!」

 畑を耕していた父ちゃんに抱きついて喜んだら、父ちゃんの目がまるくなる。


「…………は!?」

「これ、優勝賞金!
 ぜんぶあげたいけど、ばあちゃんとじいちゃんとシリウスにお世話になったから、ええと、父ちゃん:ばあちゃん:じいちゃん:シリウス=2:2:3:3でもいいかなあ?
 給料くれるらしいから、しばらく仕送りから半分じいちゃんに渡してね!」

 ずっしりした金貨の袋を父ちゃんの手に渡す。


「おぉおおお……!?」

「俺、優勝したよ。
 光騎士だよ!」

 茫然とした父ちゃんの顔が、くしゃりと歪む。


「……よくやったなあ、リイ――!」

 泣きだした父ちゃんを、抱きしめた。





「じいちゃ――――ん!!
 勝ったぁあああああ――――――!!」

 涙と一緒に抱きついたら、じいちゃんは骨と皺の手で抱きしめてくれた。


「ほんとうにほんとうにほんとうにほんとうに、ありがとうございました!!
 これ、少ないですけど、受け取ってください!
 仕送りから毎月半分、父ちゃんから貰ってください!」

 ぴしりと頭をさげて、木の実饅頭と金貨の袋を差し出した。
 白い眉をあげたじいちゃんが、木の実饅頭だけもらってくれる。


「もらってください。
 ほんとに、ほんとにありがとう。
 俺の気持ち!」

 じいちゃんの家の玄関に、そっと金貨の袋を置く。


「ミナエに帰って来た時は、また鍛錬お願いします!」

 笑って、頭をさげた。







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