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ずっと
しおりを挟む執務室を出るラトゥナを見送るリイとレミリア、レイティアルトのもとに、目を剥いたコルタが駆け込んだ。
「第二妃陛下が今──!」
レイティアルトが手をあげる。
「ラトゥナ第二妃を謹慎に処す。
光騎士は事態の収拾に当たってくれ」
「は!」
敬礼したコルタが、召集に応じ駆けつけた光騎士たちをまとめに駆けてゆく。
長い息をついたレイティアルトは、レミリアとリイに向き直った。
「……すまない、リイ。
言えなかった。
言えばレミリアの身に危険が及ぶ。
レミリアの命を思うと、切り裂かれても言えなかった」
リイは、首を振った。
めまいが、する。
…………ルフィスは…………レミリアさま…………?
レイティアルトは、レミリアの頬を撫でた。
「リイの心を占めるルフィスに散々苦しんでいたレミリアにも、すまないことをした」
兄の指に、星の瞳が歪む。
「…………兄さまは、掟に背いて……私を、生かしてくださった?
秘術が綻びることのないよう、私の記憶を消して?」
兄の腕が、レミリアを抱きしめる。
「弟を殺せるわけないだろう」
微笑むレイティアルトの指が、レミリアの頬をつつむ。
「ルフィスに戻るか。
戻れば男だ。リイと子ができるかもな」
噴火するリイのとなりで、見開かれた星の瞳が揺れた。
「…………私、は……? レミリアは……?
どう、なるの──?」
「記憶が統合される。
今のレミリアの記憶にルフィスの記憶が加わり、身体が男になる」
レミリアの睫が、ふるえてる。
「ルフィスの記憶を、取り戻したい。
でも私を生かしてくれた兄さまのお立場が──!」
レイティアルトは首を振る。
深翠の瞳が、光輝を湛えた。
「内々の光王就任宣下を受けている。
俺は、王になる。
なれば即座に、あの下らん掟を改正し、ルフィスとセリスを呼び戻す。
二人に危害が及ばぬよう、掟を改正するまで内密にしておこうと思ったが、早まっただけだ」
兄の瞳が、やわらかに細くなる。
「星のひめが見られなくなるのは寂しいが。
ルフィスに戻れ。
お前の本当の姿だ」
兄の言葉に唇を噛んだレミリアは、リイの腕のなかに飛びこんだ。
こわれてしまいそうに細い背を抱き締めたリイの目が、さまよう。
「…………ルフィスに、逢いたかったんです。
ずっと傍で守りたかった。
なのに俺は、気づけなくて……申し訳ありません、レミリアさま」
ずっと、ずっと、きみに逢いたかった。
逢いたくて、逢いたくて、焦がれて、泣いて。
ずっと、目の前にいてくれたのに。
ずっと、俺をたすけてくれたのは、きみだった。
俺を、騎士にと望んでくれたのは、きみだった。
ルフィスとレミリアさまを重ねて見てしまったのも、当然だ。
レミリアさまこそが、ルフィスだ。
ずっと、ずっと逢いたかった、きみだ。
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