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しゅごい!
ぼうぜんとムニャが、降りつもる大量の雪を見つめる。
「……ゆ、雪を……? しまう……?」
僕は、こっくり、うなずいた。
「むーちゃんが、ゆき、なぃなぃ、できたら、ゆきかき、しなくて、いーの!」
星のきらめく夜の瞳が、まるくなる。
「な、なるほど……! ぽて、天才だね!」
抱っこしてくれたら、笑顔がこぼれた。
「えへへ。やてみゆ?」
「やってみよー!」
元気に拳をかかげたムニャが、沈む夕日に落ちる雪の影にふれる。
シャ──!
「おぉおおおお──!」
「むーちゃん、しゅごい!」
跳びあがって拍手した。
お家の軒下の雪が、なくなったよ!
しゅごい!
「さしゅが、むーちゃん!」
ぱちぱち拍手しながら、くるくる踊る僕に、照れくさそうな朱い頬でムニャが笑う。
「……これ、出せるのかな……?」
ムニャの指が、影のなかで、ひらめく。
ドサドサドサァア──!
「おぉおおお!」
お家の前に、巨大な雪だるまができました!
「むーちゃん、しゅごい! かっこいー!」
まるくなった夜の瞳が、とろける。
「えへへへへ」
朱い頬で、うれしそうに笑ってくれるむーちゃんが、とびきり、かわいーです!
「むーちゃんの、おかげで、ぉてて、つめたぃ、なぃなぃ、なの。ありがとぅ、むーちゃん」
ちべたいお手々で抱きしめたら、ムニャが笑う。
「ぽての役に立てて、うれしい」
ぎゅう。
抱きしめてくれたら、鼓動が跳ねる。
「ぼく、ぼくも! むーちゃんの、やくに、たちたぃ、の!」
「何にもしてくれなくても、ぽては、ここにいてくれるだけで、僕はとっても、しあわせだよ」
やさしく頭をなでてくれるムニャを見あげて、笑う。
「僕と、むーちゃん、いっしょの、きもちね」
おでこを、くっつけて笑ったら、地平線が紅く染まる。
「あわわ! いしょが、にゃいと……!」
あったかいムニャの腕のなかから抜けだした僕は、雪のなくなった冷たい地面を探した。
枯れてしまった草も多いけれど、なかには緑のまま、がんばっている草がある。
家の近くに生えていて、雑草みたいに扱われて、あまり見向きもされないけれど、とても香りのよい草がある。
ぎざぎざの葉で、裏はほんのり白い。
ふわふわの毛が生えたような、子どもたちには、ふわふわ草と呼ばれる草だ。
水はすくなめ、ひかげがすきで、風は苦手。ひっそり、どこの家のお庭にも生えていて、とてもよい香りで辺りを清めてくれる。
「ふあふあ……ふぁふぁ……」
ちいさな手で、雪に濡れた地面を探す。
ちいさな指が、ふあふあにふれた。
「あ、あった! むーちゃん! こりぇ!」
お家の前にできた、大きな雪だるまを、雪だるまっぽくしているムニャに叫んだら、あわあわムニャが駆けつけてくれる。
「ぽて、すごい!」
つめたく、真っ赤になった手で、ムニャがほめてくれる。
熱い頬で、僕は地面に生えている草をなでた。
「いたく、して、ごめんな、しゃい。
ちょとだけ、くだしゃい」
ちいさな指で、そうっとつまむ。
きらきらちいさな緑の光が瞬いて、僕の手のなかに、とてもいい香りの草がひと房、きらめいた。
そうっとムニャへと差しだす。
「むーちゃん、いーにぉいなの」
僕の手に鼻を近づけたムニャが、目をみはる。
「すごい……! とても香り高いね! かいだことのない香りだ。
家の横に生えている草とは思えない……」
ぽかんとするムニャに、熱い頬で笑う。
「ぉにくと、いっしょに、にゆと、ぉいしーって! ……ぼく、たべたこと、なぃ、けど、ちゅくった、こと、あゆ!」
ちいさな胸をたたいて、笑ったら、ムニャの瞳が泣きだしそうに揺れる。
「これからは、ふたりで一緒に、食べようね」
ぎゅうぎゅう抱きしめてくれるから。
「あい!」
ぎゅうぎゅう抱きしめて、笑った。
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